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17. ディアーナは案内される

シリルはディアーナの手を取って、ゆっくりとルーが先程までいた扉に向かった。

ディアーナとシリルの身長差が大きいため、シリルがゆっくり歩いてもディアーナは小走りだ。

シリルはその事に気付くと「ごめんね」と困ったように眉を下げてディアーナを抱き抱えた。


前回はお姫様抱っこだったが、今回は片手で縦抱きだったのでディアーナは安堵する。細腕なのに平然と片手で子供ひとりを抱えているシリルに驚くが、シリルはニコリと微笑むと、気にする様子もなく扉に手をかけた。


「ディアーナの部屋はティアが使っていた部屋と同じ場所にしたよ。バルコニーがついていて、部屋から見る景色が一番綺麗らしいんだ」


自分の家なのに又聞きのように説明するシリル。

そして巨大樹にバルコニーって普通ないでしょと、ディアーナはここはやっぱりファンタジーの世界だと納得した。


「部屋の色合いは…ティアに反対されたからピンクはやめたよ。パパはディアーナに好かれたいからね。楽しみにしていて」


そう言って部屋まで辿り着くまでの間、リビングやキッチン。水回りなどの説明をしてくれた。

リビングは天井が高く、大きな窓から優しい光が降り注いでいる。

天井から吊るされている照明は大きな葉のようだ。


「この家は魔法石を使っている場所が多いからディアーナは親しみやすいかもね」


シリルの言葉にディアーナは頷く。


魔法石はその名の通り魔法の力が込められた石。

セウェルスの生活に魔法石は欠かせない大切なものだ。

生活にも役立つが戦闘用の魔法石もあり、魔力消費を抑える為にゲームでも活用していた。


「この家には今はルーと執事精霊が住んでいます。執事精霊…ノアと言うのだけど、今は外出中だから帰ってきたら紹介しますね」

「執事精霊⁈」


執事精霊と呼ばれる精霊はその名の通り執事役を務める万能精霊だと言われている。執事精霊は召喚魔法で呼び出す。

ゲームでは仲間達は召喚魔法が使えない設定で、執事精霊は召喚魔法の敵国クルドヴルムで対峙した敵。

HPが高い訳じゃないけど、次から次に色々な技を使うので面倒だった記憶がある。瑠衣果はエンカウントすると一先ず”逃げる”を選択した。

ディアーナになってから執事精霊は最高位精霊だと学んだ。最高位と言われるだけあって対価となる魔力がそれなりに無いと呼び出せない。


それよりもシリルが召喚したと言った言葉が気になる。

ゲームでもこの世界でも、魔法使いはセウェルスで産まれ、召喚使いはクルドヴルムで産まれる、そう学んだ。


「召喚はクルドヴルムで産まれる事が条件と聞いていましたが、パパは召喚が出来るのですか?」


ディアーナは疑問を口にする。賢者シリルは”魔法剣士”な筈だ。実際ゲームで召喚する姿は見てないし、仲間になった後も召喚魔法のステータスは確認出来なかった。


「召喚よりは魔法が得意なんだけどね。私は家事が全く出来なくて、たまに遊びに来ていたルーのお祖母さんが無理矢理ね…」


召喚出来るか明確には答えず、何を思い出しているのかシリルは遠い目をしている。

“召喚よりは魔法”と言ったのでこの世界でのシリルは召喚が使えるのだろうか。ゲーム設定と世界の理を覆したのか。疑問が増すばかりで頭が痛くなる。

そしてシリルは”ルーのお祖母さんが無理矢理“と言った。ルーはクルドヴルムの生まれなのだろうか。

両手でこめかみを押さえてウンウン唸っているディアーナを見たシリルは


「ルーは両親共にクルドヴルムの子です」


ディアーナの疑問に気付いたのかルーに対する事だけ答えると、ひとつの部屋の前で立ち止まった。


目の前にフォレストグリーンの扉。

シリルはディアーナを下ろすと微笑んだ。



「さあ、ここがディアーナの部屋ですよ」




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