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15. ディアーナは戸惑いそして喜ぶ

翌朝、祖母と和やかに朝食を取っているところにシリルの訪問を告げる連絡があった。

昨日はいきなり現れたけど、今日はちゃんと玄関に現れたようだ。


ザワザワと人の声が近付くにつれて祖母の笑みが深くなる。


「ディアーナ。今からでもお断りしましょうか?」


なんだろう…。おばあ様の背後から黒いオーラが湧き上がってるように見える。

張り付いた微笑みが怖い…。

いや、マジでおばあ様…怖い。


ディアーナは何と答えるのが正解か分からず曖昧な顔をしながらパンを口に放り込んだ。

それとほぼ同じ位のタイミングで執事達の制止も虚しく扉を開けてシリルが入室してくる。


「ディアーナ!お迎えに来ましたよ!!」


何をしに来たのだろうか。シリルは腕いっぱいの薔薇の花束を持っていた。

ディアーナは口元がピクピク引きつるのを堪える。

ディアーナの視線が薔薇の花束に向いているのに気付いたシリルは「ああ、ゴメンね。これはディアーナへの贈り物ではないんです」と申し訳なさそうに謝った。


いや、私へのプレゼントとは思ってないし。

腕いっぱいの薔薇の花束なんて恋人かよ。恋人じゃないし。


引きつった笑いを浮かべながらディアーナは全力で否定した。「これはティアへ」シリルは祖母の元へ歩みよると薔薇の花束を祖母へ差し出した。

祖母は眼を見開くと、ドス黒いオーラを引っ込め、薔薇の花束を受け取る。そうして薔薇の花に顔を近付けながら薄っすら微笑んだ。

それを見ていたシリルは少しだけ哀しげな表情を浮かべたが、すぐまた柔和な笑みを浮かべ「気に入りましたか?」と祖母に尋ねる。


「はい、師匠(せんせい)。ありがとう…」


祖母は眼を閉じてシリルに礼を述べた。

こちらの世界でも薔薇の花束は恋人へ贈るのが常だ。

真紅の薔薇を贈るシリルと祖母の間に何かあったのか、ディアーナは少しだけ気になったが昨日と同様に聞くことは出来なかった。


薔薇効果か祖母の怒りはすっかり鎮まり、今は慈しむように薔薇の花を眺めている。シリルはその様子を見て満足気に微笑むと、今度はディアーナに向けて満面の笑みを浮かべた。


自分のスペックをちゃんと自覚してるのだろうか。

白銀色の髪を一纏めにしているせいで顔の輪郭や表情がより顕著に分かるようになっている。

その破壊力の高い微笑みに周りの侍女達は真っ赤になっているようだ。


「おはようございます。パパ」


何と言えばいいか分からず、ディアーナはひとまず朝の挨拶をした。

“パパ”の響きに顔をふんわり赤らめたシリルは、幸福を噛み締めるような笑顔を見せた後、


「おはよう!ディアーナ」


そう言ってディアーナの頭を抱え込むようにして抱きしめた。

シリルが遠慮なく頭に顔を撫でつけているので折角整えてもらった髪の毛がボサボサになったが、止める事も出来ずにいる。…撫でてもらったことが嬉しくて止められなかったのが理由だが、伝えなくても気付いてくれるだろう。不思議とそう確信したディアーナはそっと目を閉じた。

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