その3
ちくわパーティーが終わり、帰路に就いている。このパーティーは一言で言えば最低だった。どこを見てもちくわだらけで、あの真面目な交田くんも指にちくわをはめて「我はちくわの使者なり…」とか言い出す始末だ。ちくわコーラ山手線ゲームは…思い出したくもない。
すっかり気が滅入り、ため息を吐きながらアパートへ入る。そして、電気のスイッチを押そうとした瞬間…
!?
またあの音だ。うるさいギター音。動かない身体。そして…
「へぇ〜。彩くんのお部屋ってこんななんだ」
いつ来たのだろうか、部屋の中にリペラがいる。部屋が暗いので白黒なのかはわからないが、リペラだけはハッキリと白黒に見える。
「えっと…なんで!?ただ電気のスイッチを押そうとしただけで、死の危機に陥ってる感がないんですけど!?」
「ん?そのスイッチに毒の針でも仕込んであるんじゃないの?」
毒の針がスイッチに?あぁ、なんかそんなトリックを推理小説で読んだことがある気がする。
「じゃあ早く助けてよ。助けるのが定めとか言ってなかった?」
「うん、そうだけど…タダでやるなんて言ってないからね?」
ニタニタしながらリペラが近づいてくる。前回タダだったじゃん…。うっ!顔が近い!
「うふふ…じゃあ、これ奪っちゃおうかなぁ」
リペラが手を下半身に向けて伸ばしてくる。
「止めろ!僕はまだ清らかな身体でいたいよー!!」
動けないまま、目も閉じられずにされるがままリペラが手を入れてくる。ゴソゴソとされるとくすぐったい。そして、遂にそれが外に出されてしまった。
「へぇー、意外とこんな感じなんだ。小さくてやらかくて可愛い!」
そう言うと、リペラは俺が先程交田くんに貰ったちくわ一本を頬ずりしながら無邪気に喜んだ。
「これ貰っていい?くれるなら助けてあげる!」
「あーあー良いよ、いくらでもくれてやるわそんなもん」
俺はハゲとちくわにものすごく運がないとつくづく思う。そんな中リペラはちくわに楊枝をさして精霊馬のようにして遊んでいる。
「あの〜そろそろ助けてください。聞いてます?お〜い、聞いてますか〜」
リペラは床に寝転がりながら精霊馬を眺めている。ニコニコしながら眺めているその様は我が子を見守る母親のようで、そこにだけ微笑ましい空間が広がっている。電気のスイッチが押せない大学生に精霊馬を眺める女子高生。何とも不思議な空間だ。さて、いつになったら助けてくれるのか…。
〜(体感)三十分後〜
「おらぁ!リペラ!さっさとお助けしろや!」
そろそろ限界だ。と言うよりなんでリペラはちくわの精霊馬を長々と見ていられるのか疑問である。
「もぉーしょうがないなぁ」
頬を膨らませながらこちらに向かってくる。そして、ヤスリのようなものを取り出した。これでスイッチの棘を取り除くようだ。
「よし!じゃあまた死にそうな時に!」
万遍の笑みを浮かべたながらガリッと削ると、身体の硬直が溶けその勢いでスイッチを押してしまう。特に変化なく部屋が照らされた。そこにはもうリペラの姿はない。どっと疲れが出てきたので寝巻きに着替えることも無くベットに飛び込む。そして、仰向けになって目を瞑る。今日だけで二度、ちくわパーティーを加えれば三度命の危機に晒されたのか…。強烈な眠気に襲われてきた。もう寝てしまおう。どうせ明日も休みだし。




