米朝首脳会談および米朝合意について
先日、6月12日に米朝首脳会談が開催され、米朝両国が合意文書にサインをして共同声明が発表された。今回の米朝首脳会談は、今後の展開次第では「米国のレジーム・チェンジ」と「世界情勢のパラダイム・シフト」が同時に起こった世界史上でも稀有な会談として記録されることだろう。
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米朝首脳会談 まとめ読み
http://www.yomiuri.co.jp/matome/20180608-OYT8T50004.html
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1.米朝会談は米国のレジーム・チェンジ
レジーム・チェンジとは「武力を行使したり、非軍事的手段によって、他国の指導者や政権を交代させること」を指す言葉である。だから本来であれば「米国が北朝鮮をレジーム・チェンジさせた」とでも書くのが正しい用法だろう。
しかし、今回の合意において米国は北朝鮮の体制を保証している。北朝鮮のレジーム・チェンジは起こっていない。むしろ変わったのは米国の方である。アメリカが従来の方針を転換させて、新しいフェーズに入ったのだ。
さて、アメリカの方針を決めているのは、「影の政府」であると言われている。軍産複合体とかシオニストとか、超国家的な組織や集団が政府に介入して、その方針を決めているという。
もし大統領や政府がアメリカという国の最終的な方針を決めているわけではないとすれば、これまでのアメリカにおける対露政策や対中政策も「影の政府」が主導してきたものであると言えるだろう。これが事実なら、トランプ政権においてアメリカの対露・対中政策に転換が起これば、それは十分に「レジーム・チェンジ」と言えるのではないだろうか。
そうであるなら、トランプ大統領はアメリカにおける「影の政府」の体制を転換させた大統領と言えるだろう。たとえその実態が「影の政府」の内部における派閥争いが反映されたものだったとしても、米朝首脳会談を実現し、米朝合意を交わしたトランプ大統領は、北朝鮮のレジーム・チェンジではなく「米国のレジーム・チェンジ」を成し遂げた大統領であると言えるだろう。
そして、トランプ大統領が「米国のレジーム・チェンジ」を成し遂げた偉大なる大統領として歴史に名を刻む時には、その体制転換の具体的な方向性は、米ソの冷戦構造からの脱却――そして米中による新冷戦構造への移行として表面化するだろう。
2.米朝会談は東アジア情勢のパラダイム・シフト
ここにおいて、安倍首相とトランプ大統領の二者が、ロシアとの距離感を従来以上に縮めているという事実は捨て置けない。日露両国が現在、北方領土における経済協力交渉の最中であることは周知のことであろうが、トランプ大統領は最近、主要国サミット(G7)にロシアを加えるべきであるとして、ロシアに対する態度を軟化させている。
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トランプ米大統領 放言 G7にロシア加える
https://mainichi.jp/articles/20180609/ddm/002/030/111000c
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アメリカの対露・対中政策の転換を模索する中で、トランプ大統領は安倍首相の価値観外交の要である「セキュリティダイアモンド構想」に乗ったのかもしれない。「台湾旅行法」などはその一環で、対中国という姿勢を鮮明にし始めた米国およびトランプ政権にとって、先陣を切って東アジアの外交・安全保障政策の充実に奔走していた安倍首相の助言が大いに参考になったであろうことは想像に難くない。
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セキュリティダイアモンド構想
https://ja.wikipedia.org/?curid=3594508
台湾旅行法
https://ja.wikipedia.org/?curid=3753740
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そのことは、米朝首脳会談後の記者会見の場で見せた安倍首相に対する過大とも思える配慮にも現れている。米朝会談前の日米首脳会談において、トランプ大統領は安倍首相に対して「米朝会談では拉致問題を必ず提起する」と約束した。そして実際に提起した上で、記者会見にて「提起した」と報告したのである。
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米朝会談「拉致問題を提起した」…トランプ氏
http://www.yomiuri.co.jp/world/20180612-OYT1T50126.html
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これは非常に重要なプロセスで、もしトランプ大統領が記者会見にて「拉致問題を提起した」と明言しなかったら、北朝鮮は「トランプ大統領からは拉致問題について具体的な話は聞いていない」と、白を切ることすらできた可能性もあったのである。
しかし、今回はそのような姑息な手段は使えない。このプロセスにおいてトランプ大統領は、北朝鮮の「拉致問題は解決済み」という立場に反して、日米が「拉致問題は未解決」という立場にあることを明確に示したと言えるだろう。
3.米朝会談は拉致問題の解決と直結
ここで特に重要なのは、アメリカを通して日本の立場を伝えたという事実である。トランプ大統領は「北朝鮮への経済支援は日中韓が出す」と明言しているのであるが、同時に「拉致問題が解決しない限り日本は支援しない」という事を理解している。
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「トランプ大統領は拉致被害者の帰国について明確に発言」「金正恩氏もはっきり返事した」 ポンペオ米国務長官が説明
http://www.sankei.com/world/news/180614/wor1806140027-n1.html
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トランプ大統領が安倍首相の助言を受けて米朝会談において拉致問題を提起したということは、日米両首脳の拉致問題に関する見解が一致している事を意味している。そして、そのことを記者会見で報告し、その後の日米韓外相会談でも確認したことは、日米の両政府が緊密な連携にある事を示している。
つまり、アメリカは日本に対して「日本が先陣を切って経済支援をすべきだ」とは言えないし、言わないということになる。
また、仮に中韓が日本に先立って経済支援したとして、それを理由に「日本も支援すべきだ」と言ってきたとしても、「拉致問題が解決しない限り日本は支援しない」という立場をすでにアメリカに知らせている以上、日米の両者は「日本が支援する為には、拉致問題の解決が必要不可欠だ」と言えるのである。
北朝鮮に対する経済支援を考えるとき、米朝合意によってアメリカに取り込まれた北朝鮮に対して中国が経済支援をする動機は小さくなっているであろうし、支援に前のめりな韓国にはそもそも原資がない事を思えば、実質的に北朝鮮に対して十分な経済支援を出来る国は日本の他にはないということになる。少なくとも北朝鮮はそう理解しているはずである。
その事を承知の上で、アメリカは拉致問題を提起して、「日朝間において拉致問題が解決しなければ経済支援はしない」と、日本の立場を最大限に尊重してくれているのである。これはもはや、アメリカは北朝鮮に対する経済支援と制裁解除の時期について「日本に委ねた」と言っても過言ではない程の待遇ではないだろうか。
これは日本にとって非常にやりやすい展開である。
4.「拉致問題の解決」と「経済支援&制裁解除」
拉致問題に関する日本政府の姿勢は、「拉致問題は、我が国の国家主権及び国民の生命と安全に関わる重大な問題であり、この問題の解決なくして日朝の国交正常化はあり得ません。日本政府は、すべての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、政府の総力を挙げて最大限の努力を尽くします」というものであり、国内世論もこれに賛同しているため、そこから譲歩する可能性はゼロに等しい。
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北朝鮮による日本人拉致問題
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/abd/rachi.html
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一方、北朝鮮が日本と国交を正常化し、日本から経済支援を受ける為には、「拉致問題は解決済み」という姿勢を崩して「拉致問題は未解決」であると認めた上で、「すべての拉致被害者の帰国」を実現しなければならない。
つまり、拉致問題の解決を目的とした日朝首脳会談が開催されるとすれば、その内容は「国交を正常化し、経済支援を獲得する為に北朝鮮がどれだけ譲歩できるか」というものになるということである。今回の米朝会談において敢えて米国が非核化とは関係のない拉致問題を提起したのは、「北朝鮮に徹底した譲歩を迫るためだった」とすら言えるだろう。
拉致問題を解決しない限り、北朝鮮は経済支援を受けられない。それどころか制裁も解除されない。そして拉致問題のゴールは日本側にある。日本からの経済支援を獲得する為には、北朝鮮は日本側にあるゴールにボールを入れるしかない。
これは要するに、「拉致問題の解決」と「北朝鮮に対する経済支援と制裁解除」が事実上の交換条件になったということだろう。
今回の米朝会談というのは、北朝鮮の体制を保証することで彼等から譲歩を引き出しやすくなるよう環境を整えた上で、「北朝鮮に対する経済支援と制裁解除」を「拉致問題の解決」と実質的にバーターにしたのである。
5.米朝会談で引き出した北朝鮮の譲歩
米朝合意におけるアメリカの体制保証とは、金正恩にとってはアメリカによる斬首作戦を恐れずに済むということである。加えて、傀儡政権の樹立を目論んでいた中国(習近平)を警戒せざるを得なかった北朝鮮にとっては、これ以上ない大きなメリットのあるものだった。米国と中国という大国を相手に二正面外交を強いられていた金正恩独裁体制にとって、渡りに船の申し出だったと言える。
だからこそ、金正恩は「拉致問題は解決済み」という態度を継承することなく、「安倍首相と会ってもよい」とアメリカに伝えているのである。北朝鮮はアメリカと合意するために一つ譲歩した。逆にいえば、米朝会談でアメリカは北朝鮮を譲歩させた訳だ。
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金正恩氏「安倍首相と会ってもよい」 トランプ大統領に伝える
http://www.sankei.com/politics/news/180614/plt1806140003-n1.html
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しかし、これで終わりではない。アメリカとは力の差がありすぎて交渉の余地がない北朝鮮にとって、「経済支援と制裁解除」を賭けた日朝首脳会談は外交手腕の見せ所となるだろう。もちろん日本にとっても拉致問題において北朝鮮の譲歩を引き出せるかどうか、外交手腕の見せ所となるに違いない。
ちなみに、現時点(6/16)では北朝鮮側の関係者から「日本と対話する予定はない」などのコメントが出ているようであるが、ここで金正恩がアメリカに伝えた内容と食い違っているのは、北朝鮮の首脳陣の方針が末端にまでは徹底されていないか、あるいは北朝鮮が既に日朝首脳会談に向けての情報戦を開始しているからであろう。
既に日朝首脳会談に向けた具体的なスケジュール調整が行われていることが報道されており、加えて北朝鮮が「拉致問題の解決なくして経済支援なし」という状況に置かれていることを鑑みれば、日朝首脳会談が開催されないということは考えにくい。
結局のところ問題は、北朝鮮が「拉致問題の解決」に向けて具体的な行動を取れるかであり、「すべての拉致被害者の帰国」が実現しない限り日朝首脳会談において経済支援の約束を与えないという態度を日本側が堅持できるかであろう。
日本側は、企画書の作り方をゼロから指導しつつ、満足の行く企画が上がるまでボツにし続ける上司のように、優しく且つ厳しく振る舞えば良い。こちらから譲歩する必要は一切ない。北朝鮮が西側陣営の一員として相応しい礼儀作法を身に着けるまで徹底して躾けてやればよいのである。
6.日本はビッグプレーヤー
さて、米朝会談前においては、しきりに「日本は蚊帳の外」と煽っていた者達が居たが(未だに煽っている野党の国対委員長もいるが)、ここまでの展開を見ればとんでもない暴論であることが分かるだろう。先月、北朝鮮に拘束されていた米国人3人が解放された際にもトランプ大統領は「日本はビッグプレーヤーだ」と明言していたが、今回の米朝会談を経ることで、日本は名実ともに北朝鮮問題における重要な役割を担う存在となっている。特に北朝鮮の今後の処遇――すなわち経済支援と制裁解除については、日本が主導権を握ってしまったのである。
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安倍首相「米3人解放は成果」=拉致、トランプ氏と電話協議
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018051000502&g=use
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米朝会談後の朝鮮半島の非核化に纏わる日米の役割分担としては、「非核化のプロセス」をアメリカが、「経済支援と制裁解除のタイミング」を日本が担当することになったと言うことが出来るだろう。制裁解除については当然アメリカも判断するだろうが、そのアメリカの意思決定者に助言を与えているのが日本の首相であることを鑑みれば、制裁解除のタイミングについても日本が大きな発言力を持っていることは間違いない。
この点だけを見ても、安倍首相の外交手腕が如何に卓越したものであるか思い知らされる。憲法によって武力行使を著しく制限され、自衛隊が日本人を助けるための軍事的作戦行動も録に取れない中にあっては、これ以上ない成果と言えよう。
真摯に粘り強くアメリカに拉致問題を諭し、共に信頼できるパートナーとしてトランプ大統領と良好な関係を築いてきた安倍首相の存在がなければ、これ程の舞台を用意することはできなかったはずである。おそらく拉致被害者家族もトランプ大統領も、安倍首相のことを「賭けるに値する存在」と見ているであろう。少なくとも、民主三傑(鳩山・管・野田)に賭けるよりは、よほど勝ち目のあるBETに違いない。
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安倍首相 拉致被害者家族に決意
http://www.sankei.com/politics/news/180615/plt1806150004-n1.html
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アメリカからは「体制保証」の代わりに「非核化」を求められ、日本からは「経済支援」の代わりに「拉致問題の解決」を求められている北朝鮮が、果たしてどこまで譲歩できるのか。それとも譲歩できずに約束を反故にするのか。今後の展開が注目される所だろう。
7.中国と韓国は「蚊帳の外」
さて、北朝鮮の非核化の費用について菅長官は「非核化が進み、IAEA(国際原子力機関)が検証活動を再開する際は初期コストを支援する用意がある」と述べている。
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平成30年6月13日(水)午前-内閣官房長官記者会見
https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg17215.html
菅氏「非核化コスト支援、IAEA活動時に」検証が前提
https://www.asahi.com/articles/ASL6F3TR2L6FUTFK004.html
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これはつまり、「非核化の費用はIAEAからの要求があれば拠出する」ということであり、「日本が独自に非核化の費用を負担する」という話ではない。あくまでもIAEAによる検証活動の有無が大前提であり、その点については、安倍首相も同様に言及している。
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北非核化で首相「日本が費用負担するのは当然」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20180616-OYT1T50046.html
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非核化の費用と経済支援を別に考えるというのは、朝鮮半島の非核化のプロセスにおける日米の共通見解と見て間違いないだろう。この発言は、北朝鮮への経済支援について米国が日本に一任しているという事を傍証するもので、「拉致問題の解決」と「経済支援」がバーターとなっていることを意味している。その点について日米の立場は一貫していると見ていいだろう。
また、非核化のスケジュールについては、米朝合意において北朝鮮との調整役を任されたポンペオ国務長官が、具体的な期限に言及したようである。
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米・ポンペオ国務長官「非核化は2021年1月までに」
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3395914.html
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北朝鮮が米朝合意を守るつもりがあるなら、これから随時、非核化に向けた具体的な工程が報道されるようになるだろう。
さて、ここまでの話を踏まえた上で米朝会談前におけるトランプ大統領の「経済支援は日中韓が出すだろう」という発言について考えてみれば、これは事実上「中国(と韓国)に拠出させる」と言っているに等しいものではないだろうか。
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トランプ氏「北朝鮮経済支援、日中韓で」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31302380S8A600C1NNE000/
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ここで敢えて日本と韓国を挙げているのは、朝鮮半島の非核化における利害関係者であるという点もあるだろうが、恐らく中国を釣るための撒き餌だろう。より丁寧な表現に直せば「日米のスケジュールに中国を巻き込むための方便」だ。この発言によってアメリカは、非核化について歓迎し、協力をすると明言している中国の逃げ道を塞ぎ、且つ経済支援と制裁解除のタイミングをコントロールする術を失わせたのではないだろうか。
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適切な時期に制裁解除で合意と米長官
https://news.goo.ne.jp/topstories/world/164/549848ddcd1a16a38c25821ac6917b93.html
米長官、非核化完了まで制裁継続=対北朝鮮で中国けん制=
http://www.afpbb.com/articles/-/3178570
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これで中国は、一言で言えば、ATMと化すしかなくなった。経済支援については「出せ」と言われるまでは出せず、非核化の費用については「出せ」と言われたら出すしかない。そして制裁解除も日米(国連)から「(適切な時期が来たので)解除しても良い」と御達しがあるまで解除できない。
もはや朝鮮半島の非核化について中国が出来ることは殆どないだろう。あるとすれば、裏から北朝鮮に手を回して非核化を反故にさせるか、マスメディアに日本が譲歩するようプロパガンダを流させるくらいなものだろう。
しかし、そのシナリオは茨の道である。恐らく功を奏しない。北朝鮮が非核化を反故にするシナリオなど、アメリカは百も承知で今回の合意に至っているからだ。さらに言えば、アメリカによって体制保証が約束された今、北朝鮮が中国に阿る理由はない。米朝合意によって明記されたアメリカによる体制保証とは、朝鮮半島の非核化が完了するまでの期間における北朝鮮の安全保障が含まれていると考えるべきだからだ。
アメリカがビジネスの国であり、契約の国であることは北朝鮮もよく知っている。そのアメリカとの合意において体制保証が明記された今、北朝鮮にとってはアメリカとの約束を守るほうが中国と共謀するよりも遥かにメリットがあるだろう。米朝合意によって北朝鮮は中国(北京政府)の影響下から切り離されたと見るのが正しい情勢分析であろう。
そして先に述べた通り、米朝会談を経た現在においては、北朝鮮への経済支援と制裁解除の手綱は、実質的に日本が握っている。「拉致問題の解決」と「経済支援および制裁解除」が事実上のバーターとなっている為、拉致問題が解決されなければ北朝鮮への経済支援も制裁解除も行われない。
米朝首脳会談を経て、アメリカが「非核化のプロセス」を担当し、日本が「経済支援&制裁解除のタイミング」を担当するという方針が明確になったことで、今後の展開はすべて北朝鮮の出方次第となっている。中国や韓国は一切これに関与できない。いや、それどころか「関与を完全に禁じられた」と云うべきかもしれない。下手に関与すればアメリカが黙っていないからだ。つまり、ここに来て「蚊帳の外」に置かれてしまったのは、中国と韓国なのである。
そのため、日本国内においては「蚊帳の外」に置かれた者達によるプロパガンダに警戒が必要であろう。日本のマスメディアにおいて、あるいは無知蒙昧な政治家達によって「日朝首脳会談を開催するためには、日本が譲歩すべきだ」とか「いつまでも日朝首脳会談が開催されないのは日本が悪い」とか「日朝首脳会談が開催された際には、日本が譲歩すべきだ」なんていう内容のプロパガンダが溢れかえってもおかしくはない。
しかし、既に述べてきた通り、日本が譲歩する理由はどこにもない。拉致問題における被害国は日本であり、この件で謝罪や賠償をしなければならないのは加害国の北朝鮮である。にもかかわらず、事ここに至ってもなお日本に譲歩させようとする言説があるとすれば、それらはすべて「中国・韓国・北朝鮮に阿ったプロパガンダ」と言って差し支えないだろう。米朝会談のおかげで実にわかりやすくなった。
米朝首脳会談において東アジア情勢に関する一大方針が示された以上、もはや「蚊帳の外」に置かれた者達が関与できる余地は殆ど無い。残された手段は限られている。情報戦で日本の国内世論を撹乱してくるのは「蚊帳の外」に置かれた者達のいつもの手口であるが、ここからは本格的にテロに対する備えが必要になってくるだろう。
先日、テロ等準備罪は成立から一年が経過したが未だに立件がゼロであると報道されていた。テロ等準備罪の制定前には「現代の治安維持法」であるというような無知蒙昧な言説があったが、この報道によってその様な濫用はされていないことが証明されたわけだ(ちなみに、治安維持法は、大正14年4月22日に制定され、同年12月以降に京都学連事件において日本内地で初めて適用されている。適用までの期間は約8ヶ月である)。
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「テロ等準備罪」成立1年、立件ゼロ
http://www.sankei.com/affairs/news/180615/afr1806150004-n1.html
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しかし、世界の情勢は大きく動いている。これから事態が具体的に動いていくに連れて、「蚊帳の外」に置かれた者達は事の重大さを理解し始めることだろう。米国務長官が言及した非核化の期限である2021年1月までには、「蚊帳の外」に置かれた者達も事態の深刻さを理解して実力行使に出るかもしれない。スリーパーセルが暴発するという事態も想定しなければならないだろう。2020年に開催される東京五輪などはタイミング的にも彼等の格好の標的となりうる。これまでは用をなさなかったテロ等準備罪にも、いよいよ本格的な出番が回ってくるかもしれない。