救出、脱出
「もう一度だけ言うけど……」
「わかった。抵抗はしないから離してくれ」
本当に抵抗の意志は無いらしく、ラトーレは身体に込めていた力を抜いた。
固めていた腕を離したマリスは、ククリを構えたままでゆっくりと立ち上がる。
「部下を呼んで人質を連れて来させるが、いいな?」
「余計な事をしないなら」
「我が神に誓おう」
ラトーレにとって一番神聖な存在に誓ったので、マリスは腰のシースにククリを戻した。
「おい! 誰か!」
少し待つと、足音に続いてノックがあり、
「何か御用でしょうか?」
ラトーレの部下らしい男の声が外から掛けられた。
その声に、少しだけドアを開いたラトーレは、
「捕らえてある日本人を、ここに連れてこい。丁重にな」
簡潔にそれだけ伝えた。
「わかりました」
命令に従って部下が立ち去るのを確認したラトーレは、ドアを閉じてマリスに向き直った。
余計な事も言わず、何かの合言葉を使った様子も無いので、微かに放っていた攻撃の気配を解いたマリスは、背中のフレームパックを下ろすと逆さにして中身、ドル紙幣の札束を無造作に床に放り出した。
「こちらも約束を守りましょう。二百万ドルあるわ。それと、今後は堀内君とその彼女には手を出したりしないように。もし何かあるようなら、その時は真っ先にあなたを疑うから」
これは警告と、ラトーレのようなゲリラ組織独自のネットワークに情報を流せという意味である。もし破ったら最悪の場合、マリス個人ですら厄介なのに、屈強な傭兵集団を相手にしなければならない。
「わかった。お前の言う事に従おう」
二人が会話を終えたタイミングで、ドアをノックされた。
「連れてきました」
マリスが頷くと、ラトーレも頷き返し、
「入れ」
部下に命じた。
ドアを開けて、ラトーレの二人の部下に両側から挟まれる形で堀内悠希が入ってきた。
「なっ! ラトーレ、この女はっ!」
部下の二人が肩からスリングで吊っていたAKSアサルトライフルを構えようとするが、
「よせっ! 客人だ」
ラトーレがマリスとの間に割って入って止めた。
怪訝な表情と警戒する態度は崩さないが、銃を下ろした二人の部下に、
「お前たちは、この金を持って行き、保管しろ。そしてここで見た事は、後で説明するので今は口外するな」
ラトーレの命令に何か言いたそうなのを飲み込んで頷いた二人の部下は、床の札束を拾い上げて部屋の外に出て行った。
暫くの間、閉まったドアの方を見ていたマリスは、特に騒ぎとかが起きないのを確認してから、堀内の方に向き直った。
「堀内悠希君ね。私はマリス・ミリオン。神野摩耶さんのお願いで迎えに来たわ」
「麻耶さんに? あー、またお金使わせちゃったのかな……えっと、藤堂さんのとこのお姉さんですよね?」
「あら、どこかで会った事があるかしら?」
「会ったというか、保護者面談の時に、藤堂さんと一緒に綺麗な人がいるなと思ってたんですよ」
「ま、お上手ね。神野さんに怒られるわよ?」
「いや、そんなんじゃ……」
照れ笑いをする堀内悠希は少し汚れた感じはするが、見た目には怪我とかも無く、ひどい扱いは受けていなかったようである。
「大変だったわね」
「そうでも無いですよ。風呂に入れないのと、食事の殆どがカレー味だった以外は、人質の割には待遇は悪くなかったんじゃないでしょうか」
(……もしかしたら神野さんは、彼のこういうところを見抜いて好きになったのかしらね)
あっけらかんと話す、一見すると軟弱な現代っ子という印象の眼の前の少年から芯の強さを感じて、マリスは少し認識を改めた。
「さて、あんまりのんびりともしてられないから、堀内君、行きましょうか」
フレームパックからバッグ部分を外して骨組みだけにすると、中身をタクティカルウェアのポケットに移した。
手招きで呼び寄せるた堀内悠希をベルトでフレームパックに固定し、
「えっ。ま、マリスさん? これはちょっと……」
「悪いけど、君の足に合わせてる時間が無いの」
パックごと、おんぶする格好でマリスが背負った。
「出て行く邪魔をするつもりはないが……」
成り行きを見守っていたラトーレが言うが、
「行儀が悪いけどショートカットさせて貰うわ。あと、交渉がスムーズに済んだからおまけを付けてあげる」
重さを感じない足取りで近づき、耳打ちをする。
「……本当なのか?」
「活動資金を増やしたいなら信じなさい。じゃあ、失礼して」
マリスとラトーレの会話はウルドゥー語で交わされたので、堀内には内容はわからない。
開け放したままだった窓枠に足を掛けると、重力を感じさせない動きでワイヤーの上に跳び乗り、呆気にとられているラトーレを尻目に、谷の上に向けて走り出した。
この時、悲鳴を上げなかった堀内は賞賛に値するだろう。
ワイヤーを渡りきった場所に置かれたクロスボウに、マリスはちらっと視線を走らせる。
「惜しいけど、仕方ないわね……」
クロスボウに対する未練を振り払うように小さく呟くと、人を背負っているとは信じられない速度で、真姫の待つヴォイドを駐機させてある場所を目指して駆け出す。
翌日、ワイヤーを辿って、マリスが置いていった場所からクロスボウを回収したラトーレの部下が、戯れに弦を引いてみようとしたが、まるで一体成型されているかのように、二人がかりでもびくともしなかった。
夜の山岳地帯を疾走していたマリスが、急に岩陰に足を止めてしゃがみ込んだ。あと百メートルで到着というところで、真姫の待つヴォイドを挟んで更に二百メートルほど先に、動く小さな光点が眼に入ったからだ。
「……つ、着いたんですか?」
堀内が情けない声を上げる。確かに自分の脚で走るよりは早いが、アップダウンする山道を走る人間の背中に乗っているのは、決して楽では無かった。
「しっ。静かに……」
「……」
口を閉ざしてマリスが見ている方向を見て眼を凝らすと、堀内にも幾つかの光点が動くのがわかった。
マリスは胸の大型ポケットのファスナーを開けて単眼鏡を取り出し、目標に焦点を合わせると、米軍からパキスタン軍に供与されている装甲兵員輸送車が二両、ゆっくりと近づいてくるのが見える。
(エンジンの再点火音と着陸時の騒音を察知されたか……それとも、堀内君の捜索隊かな?)
真相は不明だが状況を打破するために、出来れば使いたく無かった奥の手をマリスは使う決意をする。
パックごと堀内を下ろし、身体を固定していたベルトを外すと、
「堀内君、ちょっと手伝ってもらえる?」
「……出来ることでしたら、なんなりと」
タクティカルウェアのトラウザーズの右のサイドポケットから、二本のペンライトのような物を取り出し、左のポケットからはプラスチックのゴーグルを取り出して、一組を堀内に手渡した。
「合図をしたらここのスイッチを押して、指示する場所に光点を当てて」
マリスはスコープを取り出したのとは反対側の胸ポケットから取り出した、タブレット端末を操作する。
マリスを待つ真姫と対局をしていた、ミカの子機端末が、
「失礼します。ミス・マリスからの通信を中継します」
次の一手を打つ前にそう告げると、機体に被せられた背景同調迷彩のシートと、真姫との対局以外は待機状態だった機内に、計器類の明かりが灯った。
「帰ってきたの?」
「すぐ近くまでは戻られているようですが、問題が発生したようです」
「ミス・マリスから入電。攻撃要請です。座標確認中」
通信を受け取ったアトラトルでは、待機していた鈴木にミカがマリスからの要請を伝えた。
「ありゃ、使う事になっちゃったか。では総員配置。海面に浮上」
艦内に通達を出した鈴木が浮上の操作を行おうとすると、
「お待ち下さい。海面は波が高いようですので、影響を受けにくい海面下からの攻撃の方が安定します」
偽装アレイで現在潜航している場所の海上周辺を警戒していたミカが、鈴木に進言した。
「では深度五で『ジャベリン』による攻撃用意。ミカ、角度の微調整と海面までの影響の修正をお願いします」
「了解。乗員の着席を確認。深度五で姿勢制御に入ります」
深度五で艦首の上げ角二十二度の状態で静止したアトラトルは、槍投げ器という艦名が示すように、投げ槍のように推進器の無い砲弾を飛ばす、艦軸中央にあるジャベリンと呼称されるレールキャノンの発射体勢に入った。
実はヴォイドにV/STOL能力があるのは、このレールキャノンの弾着観測の為である。
「アブレータ装着良し」
艦後部に居る松本から、発射時に使う弾体表面と加速レールの間で溶融、気化し、摩擦を軽減するユニットが装着されたのを確認する連絡が入る。
「了解。では艦長の指示通りに初弾の弾種S発射後に、一分間隔で弾種N、Cを発射」
「角度微調整完了。発射出力ピーク。トリガーをそちらに回します」
「よし。では……発射!」
鈴木の発声と同時に絞られたトリガーにより、リニアレール上で加速して海面下五メートルから発射された砲弾が、開放された艦首の砲口正面の水膜を突き破って夜空に飛翔した。
「艦体、加速レール共に異常なし」
「次弾装填。発射準備」
「……来た。じゃあ、さっき言った通りに」
マリスが囁く直前、空の上で何かが軽く弾けるような音を聞いた気がした堀内は、指示通りにゴーグルを掛けた事によって視認できるようになった細いレーザー光を、装甲兵員輸送車のエンジン上部辺りに当てた。
低い放物線を描き、約七百キロ先の海面下から飛来した有翼の滑空砲弾は、後端のパラシュートが開いて目標直前でブレーキを掛けられ、上空で分解した。
分解した砲弾内から放出された十個の中身がパラシュートを開いて対空し、センサーが装甲兵員輸送車のエンジンが発する熱と、マリスと堀内が投射する不可視光のレーザーを感知した。
ゲリラの隠れ家を捜索中に察知した、不審な音の原因を調査しに、部下を率いて来たパキスタン陸軍の将校は、
「……なんだ?」
突如、上空に花のように広がったパラシュートを見上げていた。
次の瞬間、パラシュートにぶら下がった物体から鈍い音が聞こえたと思ったら、乗っていた装甲兵員輸送車に複数の何かが殺到して突き刺さり、爆発炎上した。
弾種S、SADARMと呼ばれる砲弾は、上空で子弾がセンサーで目標を捉えると、自己鍛造弾を打ち出す。
これは薄い金属ライナーの後部にセットされた炸薬に点火される事により、名前の通り瞬間的に銛状に鍛造されて強力な貫通力を発揮する。
砲弾の性質上、精密な照準をつけずに運用でき、目標を捉えられずに地面に落ちた子弾はセンサー地雷になるという利点があるので、長距離砲撃には使い勝手が良い。
「堀内君、走って!」
装甲兵員輸送車が炎上し、パニックに陥っている間に走り出すマリスに堀内も続くが、全面的に信用していはいるのだが、行く手には何も見えないので少し不安になる。
そんな堀内の不安を他所に、虚空に向かって手を出したマリスが何かを掴む動作をすると、次いで力いっぱい引っ張った。すると突然何も無かった空間に、漆黒の飛行機らしい物が出現した。
「堀内君は前に!」
驚く間もなく、機体の下に入り込んだマリスの指示に従い、搭乗用のハシゴを登ると、
「藤堂さんも、来てくれてたんだ」
「あ、こんばんは……」
クラスメイト同士の、場の雰囲気に合わない、何とも間抜けなやり取りが交わされた。
「前にって、どうすれば?」
前席には既に真姫が座っているので考えていると、
「あの、ここ……」
コックピット脇に両手をかけて少し身体を浮かせた真姫は、シートの下、自分の脚の間の場所を示す。
通常ならフットペダル等の操縦装置の一部がある場所は、触られても危ないのでサイドスティック操縦桿やスロットル等と共に撤去して、両足を置くフットレストしかない。そして本来なら機銃のユニットが入る部分に何もセットされていないので、そこにクッションを敷き詰めて申し訳程度の乗り心地を確保し、無理矢理三人目を載せるスペースを確保したのだった。
脚の間(しかも両腿の間に頭というポジション)に座られるという事に真姫がかなりの難色を示したが、まさかウェポンベイに詰め込んで運ぶ訳にも行かないので(そもそも構造的に無理)、渋々ながらも承諾した。
堀内が入り込んだのを確認し、ケーブルを引き抜いた背景同調迷彩のシートを出来るだけ遠くへ放り投げたマリスは、自分もコックピットに乗り込んだ。
炎上した装甲兵員輸送車から下車したパキスタン軍の何人かがヴォイドに気づいたようで、将校が許可を出したのか携行していたアサルトライフルを発砲してくる。
インテークでも撃ち抜かれない限りはアサルトライフル程度は問題にならないが、長居は無用なのでエンジン始動、発進準備を急ぐ。しかしその前に……。
初弾発射からぎりぎり間に合ったタイミングで、アトラトルからの次弾が上空に到達した。マリスがコックピットから投射したレーザーマーカーに、砲弾のケーシングから分離した十個の子弾が殺到して炎上した。
弾種Nはナパームの頭文字であり、当分は公開する予定の無い背景同調迷彩システムの生体膜を焼却するために使用したのだ。生体膜以外の部品は民生品なので、跡を辿られる心配は無い。
ヘルメットを被りながらキャノピーを閉じてノズルを操作し、下方噴射最大で離陸する。三弾目のC、滑空しながらレーダーと通信を妨害するアルミ片を散布する、チャフの頭文字の砲弾との衝突をしないようにコースを調整しながら上空を目指す。
堀内がちゃんとしたシートに座っていないので、無理な加速や旋回はしないように気をつけるが、レールキャノンの発砲で探知されているかもしれないアトラトルの事を考え、出来る限りの速度でマリスは飛行する。
合流予定地点が近づいたのでマリスが短く電波を発信すると、進路上の約五キロ先の海中からアトラトルが姿を表した。しかし、レールキャノン発射の際に発生した水柱を察知されたのか、途中で出港する警備艇を追い越してきたので、状況は予断を許さない。
マリスがスイッチを操作すると、左右のウェポンベイに装備されていた、機体の全長よりも長いフロートが展開し、着水して海面を滑走する。
そんなヴォイドとアトラトルに向けて、巡視艇が搭載されている機銃を掃射してくる。
「ミカ、一メートル下げてハッチ開放」
「それでは艦内に海水が流入してしまいますが」
「いいからやって!」
ヴォイドの収容時間を短縮するために、無線で艦の位置を下げさせたマリスは、機首がアトラトルの後端に差し掛かった時点で、ウェポンベイからフロートをパージすると同時に着陸脚を下ろす。
海面が波打つ度に海水が流入するカーゴハッチに、半ば体当りするような勢いのまま機体を突っ込ませたマリスは、この時だけは堀内の事は無視して、ヴォイドの機首がハッチ内の壁に衝突する前に逆噴射で急制動を掛けた。
「ミカ、ハッチ閉鎖。急速潜航!」
機銃弾の数発が開け放たれたハッチ内に着弾したが、壁の塗装に少し傷がついた程度でヴォイド機内に居たのでマリス達には被害は無い。
ハッチが完全に閉鎖されたのを確認し、キャノピーを開けてヴォイドから降りたマリスは、
「真姫と堀内君は艦長室に!」
二人に声をかけると、艦内通路を走り抜けてブリッジのキャプテンシートに座った。
「キャプテン・オン・ザ・ブリッジ」
「状況は?」
被ったままだったヘルメットを取りながら、マリスはミカに問い掛けた。
「現在深度八十、速度五十から加速中です。」
ミカからの返答と同時に、アクティブソナーの音が伝わってきた。
「ミカ?」
「海上に巡視艇以外の艦艇です。ライブラリに照合。パキスタン海軍所属、アラムジル級ネームシップ、アラムジル。アメリカから供与された、ギアリング級駆逐艦の同型艦です」
ミカから説明と同時に、シートの前のモニターに写真とデータが表示される。
「操舵をこちらに。取舵、下げ五度で緊急加速用意」
「了解。ミス・マキとミスター・ホリウチの着席を確認。砲口前後開放」
マリスの指示で電磁、ポンプジェット併用に加え、レールキャノンの加速レールまでも利用しての電磁推進の準備のために、艦前後の砲口を開放する。
「聴音をごまかすためにアクティブソナーを最大出力で発信後、緊急加速開始。総員、耳を塞いで!」
「了解、ソナー打ちます。緊急加速、開始します」
マリスの艦内放送後に最大出力で発信されたアクティブソナーの威力は凄まじく、巡視艇と駆逐艦の聴音手は悲鳴を上げて火花が散るレシーバーを放り出したが間に合わず、失神して医務室に運ばれた。聴音手だけではなく、聴音のシステムも掛かった負荷で深刻なダメージを受けていた。
同時に開始した推進器を総動員しての加速に、艦長室でちゃんとしたシートではなく普通の椅子に座っていた真姫と堀内が、
「きゃっ!」
「うわっ!」
半ば放り出されるように転げ落ちたが、特に怪我等は無かった。
翌朝、このアクティブソナーの影響で、かなりの数の気を失ったイルカやクジラと魚が、近くの浜辺に打ち上げらた。
ソナーの効果と、駆逐艦の全速でも追いつけない、百五十ノットの緊急加速で海底付近を航行するアトラトルのキャプテンシートで、
「面舵、推進器停止……ミカ、現状報告?」
マリスは艦内外の状況をミカに尋ねた。
「現在深度は百五十。着底寸前です。パッシブソナーで把握出来る範囲で海上、海中共に艦影ありません。緊急加速による、加速レールや艦体の破損も認められていません」
「そう……砲口前後閉鎖の後、排水。あ、カーゴハッチ内の排水もね。それはそうと、設計よりも最高速に達するまでが鈍かった気がするんだけど?」
ホッとしたマリスだが、一秒を争う事態に性能を発揮できなかった事に対して、ミカに問い質した。
「その点に関しましては、現在の海域の海底が火山の影響で海水温が高く、推進器と加速レールの超電導効果が落ちたためだと考えられます」
「ああ、そうなんだ。やっぱりもう少し高温でも使えるように、改良が必要ね……」
アトラトルの超電導素材は摂氏三十度まで効果が発揮されるので、海中なら大丈夫と考えていたマリスには、火山の影響で高くなった海水温というのは思わぬ盲点だった。
緊急加速の方も速度自体は設計通りだが、百五十ノットでは現在の艦表面のポリマー加工では造波抵抗を完全に相殺できず、かなりの水切り音が発生してしまう。
「その辺は後で考えるとして……総員配置解除。ミカ、警戒しつつ深度百、速度五十でムンバイ沖十キロに。私は着替えと食事をしてくる」
現在地点からムンバイ沖までは、五十ノットなら約五時間の行程である。
「了解。ごゆっくりどうぞ」
ミカの返事を確認したマリスは、シートから振り返って、
『お疲れ様です』
労いの言葉をかけてくる鈴木と山田に微笑むと軽く手を挙げ、ブリッジから退出した。