第一章 戦いの終わり
「やったの?」
「私たちの戦いも、遂に終わりを迎えるのですね。」
隠れていた仲間たち、魔法使いと僧侶は嬉しそうに笑っていた。
勇者も笑い返す
「いいや、まだ残党が残っているんだ。僕たちの戦いはこれからだ!」
勇者はそう返しながら仲間たちに背を向け、エクスカリバーを抜くために魔王へ向かっていた。
いや、向かおうとしていた。
「いいやお前の戦いはこれで終わりだよ」
胸の中心から剣が突き出てくると同時に仲間の戦士の声が聞こえた。
「なん、で」
貫かれた気管を介して溢れる血を吐きながら、勇者は疑問を口にした。
苦しみと痛みを訴えるよりも、それよりも大きな驚愕が、問いとなって漏れだした。
「なんで?だと」
戦士はニタリと笑いながら勇者の背を蹴飛ばし、己の剣を引き抜いた。
「この状況が答えだ。『魔王と勇者の死』それこそが俺たち勇者パーティーの任務だ。不死の勇者1人でも魔王は倒せる。なのに足手まといにしかならない俺たちが着いてきたことを疑問に思わなかったか?お前は魔王を倒すことで不死の能力を失う、だとしてもだ。」
戦士は床に伏した勇者の頭を踏みつけた。
「お前は不死であることを除いても脅威にしかならないんだよ。そのふざけた戦闘能力に正面から立ち向かっても勝てる存在なんて最早いない!俺たちはお前に信頼され、安心して背中を預けられる存在になる、そして最も疲弊し安堵した瞬間にお前を殺す。それが最適解としたのだ!」
「帰りましょう。この辺りで脅威になりそうな魔物も魔族も、勇者様が倒してくれましたからね」
戦士に続いて冷たい僧侶の声が響く。
そして魔法使いは・・・
「・・・悪いわね勇者ちゃん、貴方との旅、決して悪いものではなかったわ。」
申し訳なさそうに呟き、傍らまで歩み寄った。
そして勇者の剣を掴み・・・
「けどね、私も貴方よりお金のほうが嬉しいのよねぇ!あーっはっは!」
魔法使いの高笑いを聞きながらも身体が冷え切っていくのを感じる。
痛い、痛い、痛い。
何度も感じていた死の予兆。
戦士の言葉ももう勇者の耳には届かない。
薄れゆく意識の中、自身の体が揺さぶられることはわかるが、勇者にそれに答えることはできなかった。
その後、戦士、魔法使い、僧侶の三人は人間の国へ帰り連合本部に報告を行った。
魔王は倒れ、勇者もいなくなった、と。
その事は全人類へと報道され、勇者は魔王と相討ちとなったとされた。
生き残った勇者パーティーは魔王討伐の報酬金と、故郷の重役としての職を与えられた。
三人が持ち帰った勇者の遺品である聖剣は連合本部の研究機関に渡されることになり、事後処理も、魔物の残党処理も着々と進み、平和が訪れる日も直と言われていた。
完