世界観説明 現実改変能力のお話
今回は現実改変能力だね。かなり分かりづらい能力だし、そもそも本人が自覚してはいけない類の能力だから、使いこなすも何もない能力だ。無意識で使ってしまう、以外に能力の使用法がないんだよ。だからチートのわりに負けるはめになる。
「だからこそ、本人にすら能力を使ったことがわからぬ。無意識が気づく可能性のある現実を本人の頭から消去するからの。ゆえに性格は子供のように”あほう”になる」
73話で彼は仲間を守れなかったことを悔いていた。現実改変ならそれくらい何とかできるし、しなかったのなら本当は仲間を救えなかったことを悔いてなどいないんじゃないか。それを矛盾だろうと思う人もいるかもしれない。
「だが、ここで疑問をていそうかの。本当にこの二つは両立しないと? 仲間を救わなかった後悔と、能力を使わなかった無関心が両立しないと」
そんなわけはない。彼は本当に仲間を救いたいと思っていたし、その一方で現実改変を使い仲間を救うことをしなかった。仲間を思う気持ちは本物だった。一方で現実改変能力なら仲間を救えていた。でも、しょうがないだろう? だって――”本人は知らないんだから”。
「知らない、ということは最高の免罪符である。知らなかったから、しょうがないと言えるのだから。まったく便利なものもあるものだ」
そして、それが僕の嫌う理由。”知らなかったからしょうがない”んだよ。それが情報収集を怠るという自発的な行為でも。それが嫌なら人間嫌いにでもなるほかない。ゆえにこそ、僕は人間が嫌いだ。しょうがない、なんて嫌いだ。
「ま、他人の本心など見てはならぬものと相場が決まっておる。自身の能力がばれることと仲間の生死、どちらが上とて本心が見えねばとがめられることではない。実際、彼は本当に悔いていた――姿を見せていたのだから。内心など、はたからは見えぬ」
ただ、怖い能力だよねえ。現実改変ってのは、さあ。なんでもできちゃうってのは、それはもう本当にすごい能力だよ。
「そもそもどれだけ強くても一人で”それ”を相手にしては、能力を同じくらいまで上げられて倒される。あの道化の様に。自分の攻撃力が自分の防御力を上回れば? なんてトンチは通じない。目に見えるものなら壊せるし、透明ならばというわけでもない。ここにあると確信できたなら壊せる」
万物流転。全ては壊れ、再生する。壊れる姿を想像できない、というのはそうそうない。ま、人類の天敵たる災厄はわからないけど――例外なんてそれこそそれくらいだろうね。
「それこそ本人次第、というわけじゃな。それも無意識の。強がって俺なら倒せるとか言っておっても口先だけでは意味がないのう」
俺なら倒せる、と思わないと。これはけっこうなハードルだよ? 僕らは人間の姿をしているけど彼らはわかりやすく異形だ。いや、僕の仲間も羽根が生えてたり獣耳が生えていたりで、それも僕らが勝てた理由かもね。人間には勝てる――魔物には勝てずとも。人類軍にはお似合いの能力と言えるね。
「ま、欠点を一つだけ上げるとしたらそれは想像力の不足以外にあり得んよ。他にも上げようとすればいろいろ出てくるがのう。しかし、あれが負けた理由を突き詰めればこれ以外にない」
ま、そこは置いておいて。現実改変の怖さについて語ろう。
「人数さえ上回ればどんな相手にでも勝てる、ということでなくてか? ……もっとも【災厄】に対してはわからぬのだったか」
人間相手だとしても、戦う数を改変するとは考えないのかな。僕は最初一人で向かった。それが敵の能力の影響だとは? まあ実を言うと、彼の能力はこの世界以外のもの――つまり僕たちに効きづらいし、外の世界に系譜を持つ災厄にも効力は発しづらいけど。
「ああ、最初にクーゲル・イェーガーを向かわせたのはルナちゃんでなく、奴がそうしたからか」
うん、そこまでは考えつくよね。勝てる相手と戦うように状況を改変する。敵司令官の頭を改変して負けるための策を実行させる。偶然、もしくは気まぐれで作戦が破たんする。こういう風に買いへを使うのは一般的だ。けれど、それだけではないとしたら。
「む? 能力の性質上、奴は敵に合わせて自身の能力を上書きするから傍目にはその強力さがわからない、ということでもなくてか」
それもよけいなプラスαだよ。戦い奴と戦う。四天王であれば最弱からだんだんとレベルアップしていく、もしくはそうなるように敵能力を弱めるのも本質じゃない。そもそも、あの消極的な答え自体が敵の能力によってそう”作られた人間の”思考だということは考えつかないかな。
「それでは、世のすべての人間が――」
そう、すべての人間は彼を引き立たせるためのモブ。踏み台だ。クーゲル本人があの場で作られたのかもしれない……彼に負けるために。そもそも、彼が地の文で話していた過去話で貴族がひどいことをしていたのですら彼の影響、もしくは創作という可能性を排除することは決してできない。
「悪い貴族を討つ勇者、自分がそうなるために悪い人間を用意したのかもしれぬと?」
現実改変の最悪さは確定できないことにある。偶然かもしれないし、彼の能力かもしれない。無意識だから、決してどっちかというのは決められないんだ。それは彼にすらわからない。悪い貴族だって、本当は虫も殺せない人物だったのかもしれないし、毒スライムみたいな虐殺者のようなもっと悪い”もの”だったかもしれない。
「ただ、貴族というのは作為的なものを感じるがの。本物の貴族は王都より外に出ん。騙ったのアホウだろう。悪いことをしても、もしかしたら短期的な利益を得ることができるかもしれぬが、必ず総合的には損をする。悪いことをしなければ利益を得られぬようなレベルの低い人間だ」
だから、誰からも恨まれるような悪いことというのはするべきではない。何も知らないまま上前をはねるだけなら、それは国家としての常とう手段ではあるけど。善良のケースでも自分が倒されて全てを奪われた。
「悪いこと、というのは――それをして楽しい、ということしかうまみがない。まあ、秘密組織の人間が言うことではないかもしれぬが」
何も知らずに気楽に一般人として生きることが一番の幸せだよ。無責任が一番楽しいのさ。僕は、そいつらのことなんかむごたらしく死んでも知ったことじゃないけど。
「それでも、わしとしてはルナちゃんが人間にそこまでの愛着を持つ理由がわからぬがな」
ふふ。でも、みんなのことは本当に大切に思ってるんだよ? 傷ついてしまったら取り乱すくらいに。
「ああ、わかっておるとも。だからわざと喰らったのであるからな。ああ、本編のルナちゃんには内緒でな」
こんな会話も番外編だからこそだね。そもそもあの程度の攻撃であれば、君は僕を突き飛ばした後にかわせていたというのも、僕は気づいていないのだから。
「ああ、話を戻そうかの。全ては太陽善良の作為”かも”しれぬということだ」
僕は本編ではそいつについている女の子のことを現実改変で0からあの姿のまま生み出した、または顔と性格を作り替えたみたいに思ってるけど――
「その可能性もあれば、本当に偶然……もしくはあやつががんばって好かれた可能性も当然ある。本当にただの幼馴染5人組という可能性もやはりあるのじゃよ」
本当、考えだしたら怖くなる能力だ。どこまでが偶然か、能力による作為かはっきりしない。
「そう、神のようにすべてを操るが、操っていたかは本人こそ完璧に知れぬ。わからぬ。自覚しない」
むしろ僕としては彼は完全に神であると思っているよ。この世界の神、世界を管理する支配者。強化人間だったら血が腐ってるから、あんなきれいな赤色じゃないしね。
「わしらと同類、と?」
人間よりはこちら側だね。彼が倒されるかどうかが”この世界”のターニングポイントだ。
「あ奴が生きておれば、世界は奴のための世界となる」
彼は信仰なんて面倒は背負いたくない様子だったからね。きっと、面倒な恨みとかは夜明け団が担当して、複雑怪奇な政治は貴族に任せるんじゃないかな。なにか事件が起こして解決しながらちやほやされるんだよ。彼が必要とされるだけの魔物が生まれて、けれど対応できなくなるほどに生まれるのはあり得ない。
「責任もなく、憎しみを向けられることなく――ただ自分が好き勝手するだけで尊敬を集め、好意を積み上げていく。奴にとっての最も住みやすく自尊心の満たされる世界」
けれど、今の状況に比べたらましだろうね。だって、彼に支配されることで人類同士のいがみ合いは間違いなく減少する。いや、魔物に襲われてるのにヒャッハーしてよそ襲うやつが多すぎるだけだけど。でも、善良が対処できる程度まで減るはずだよ。
「くそまずいクッキーもどきのレンガと、くそまずいアルコールもどきの濁り水ならば夜明け団が全人類賄えるくらいに量産できる姿勢を整えておるからの。いや、ホントになぜヒャッハーするのか理解に苦しむのじゃが。あいつらにインフラを破壊されなかったら配れてたはずじゃぞ」
ストレスじゃない? 彼の能力はいまだ全世界を覆いつくしてはいなかったみたいだ。まあ、僕たちと戦うことでそこまでできるほど能力を開放しているから、今後はわからなかったけど。
「彼の世界になれば、悪人とか変な役割をひっかぶせられない限り幸せに生きてられそうじゃな」
僕たちが作り上げる世界より一般人は生きやすいと思うよ。というか、僕は世界を救おうとしている人間に力を貸しているだけだ。洗脳による人類統一がなければ、天敵が潰えたところで人間同士の戦争が起きるだけ。なんて、僕は知ったこっちゃない。
「洗脳されなければ戦争を起こすとは、人間とは生きる価値がないのう」
あは。僕が人間嫌いだからそう言ってるだけ。もしかしたら、億に一つ以下のとても低い可能性で、人類が一つになって復興に精を出す可能性もないと断言することはできないんだよ。
「というか、あの男は全人類洗脳など本当にできるのかの? そりゃ、そういう性質を兼ね合わせるのなら、わしらと互角にやりあえる力を持っておる時点で力量的には可能ではあると思うのじゃが」
”やる”さ。意識的にそんな大ごとはできないだろうね。けれど、彼の能力は無意識だ。それをやっていることを彼は知らない。だから、責任感なんてものを感じるわけがない。無責任に、どこまでも無自覚に世界を支配する。
「まさに支配者――神の力というわけか」
ぶっこわすだけの僕とは大違いだよね。
現実改変はホントにチートだよね、というお話でした。




