世界観設定 その①
こんにちは。ルナだよ。ここでは僕がメタ的な視点も織り交ぜつつ、主に世界観について解説していこうと思う。
その前に、僕の立ち位置だけど。これはタイトルにあるように”黒幕”だ。
本来主人公になるべき立ち位置になれる子を探して改造人間にしたり、強い敵と戦う舞台を作ったりしてるからとてもではないが〈正義〉となんて呼べやしない。
まあ、黒幕と言うからには本来よそから持ってくるだけじゃなくて、自分で舞台を作らなきゃいけないかもね? 【災厄】とか、恐れるべき敵はすでに凄いのが用意されていたけれど。
本音のところ――僕は、人類を救う気はない。
人類を救わんとする勇気のある子は好きだけど、お人よしとは程遠い人外だからね。襲われている人間がいても無視してしまうのさ。
言うなれば”人類の味方”の味方というわけだ。そういうわけで【夜明け団】に協力してやっている。
「まあ、味方と思われても困るけど助けはするというツンデレですね」
そうとも言うかもしれない。普通に見捨てるけどね。で、ルート――君がここに居るのは番外編のおまけだからで、本編では知っててはいけないことまで知っていたりここで話したりするけども。
そこはご愛敬と言うことだ。
「ものすごい説明口調……」
説明編だからね。僕のスタンスはこんな感じだ。では、【翡翠の夜明け団】のスタンスはどうだい? 幹部候補生なら知ってて当たり前のことだよ。
「こっちに振られた……えっと。手段を選ばず人類を守る、ですか――」
実際のところ、それはお題目だよ。
確かにそういう建前があって、そのように行動している。だが一方で、僕たちの活動範囲は王国に限られる。海を渡った先の大陸、連合と教国に対してアクションは起こしていない。
お題目ですら、この大陸の――しかも人間限定という狭さであるのさ。
ああ、西洋には別の大陸があり、東の不毛の大地には亜人の国家群がある。以前は戦争してたけど、辺境に押し込めたのと同時に魔物の被害が深刻化したことで戦争は途切れてる。
彼らと関わることはないだろう。この世界では場所が違えば、交流は途切れている。魔物によって断絶されている。
「でも、あまりそういう感じじゃないですけど。ほら、他の人たちも人類のため――とか、そりゃ言うこともありますが。基本は魔物と戦うだけですし」
そう。人類の繁栄のためには武力が必要だけど、武力だけでどうにかなるわけでもない。そこが【夜明け団】の歪みなのさ。
うちがやっているのは武力面だけだと思うだろ? 実際は食と住居も与えているのさ。
本音を言えば人類のためだとか言いながら、実は魔物を殺したいだけの奴ら――特に君は上位の戦闘専門に会うことが多いから、特にそれは感じるだろう。しかし、それは同類が集まっているだけで、むしろ全体を見れば少数派だ。
派閥違いだから本編には出てきていないというだけのことだよ。
「武力以外――魔導機械ですか? 銃や弾薬、果てには食糧までも魔導機械さえあればどうにでもなりますし」
魔導機械、それと魔石があれば必要なものは何でも手に入る。実を言うと、それは王国と、更には夜明け団の中でもそこそこ地位が高い人間の認識だよ。
ま、全部を全部そろえるわけにもいかないからね。――お金の話だけど。必需品でなければ我慢してもらうさ。
「そうなんですか。けれど人類存続のためには武力と魔導機械さえあれば、それでいいわけですよね。武力があれば魔物から人々を守れて、魔石も手に入れることができますから。……いや、でも、夜明け団が魔導機械を作っているって話は聞きませんが」
そりゃ、君は僕の幹部候補生だろう? 戦闘専門の兵士を育てる部門が、生産部門の魔導機械を知らなくても当り前さ。だって、組織の中でも両極端の最先端だからね。
とはいえ、魔導機械を生産する主な部分を担っているのは王都の貴族院だ。夜明け団では、ない。
「あ、なるほど。だから、王都は死と病の国なんて呼ばれているわけですか。魔石を使った工場は灰を出す。広い王都ですら完全に覆い尽くしてしまうほどの灰は、王国全土の魔導機械を賄っているから、というわけですね」
その通り。付け加えると、団も王都に間借りした場所で魔導機械は生産している。魔導機械を作れるような場所は王都だけなのさ。
……僕の知る限り、という注釈がつくけれど。食べ物も着る物も、武器も魔導機械で作られる。けどね、その魔導機械を作れるのは王都だけ。
「ああ、だから王都の警備には【夜明け団】も関わっているんですね」
そういうこと。
僕らの活動をまとめると、まずは”魔物を殺す”。そして、魔導機械の生産場所である”王都を守る”。実のところ、それ以外はすべて余計なことだったりする。
もちろん、その余計は人類のためにやるべきことだろうけどね。
さて、ここで質問だ。ルート、君は税というモノを知っている?
「税、ですか。なんですか、聞いたことありませんけど」
と、いうわけだ。王国の住民には税なんてものを課されることはない。ま、街だったら街に住むための住民税を払えと言うのは実に一般的であるけども。
けれど、それはあくまで住む場所を整備するためのお金の話だ。
だからね、統治する人間に税を納める――そんな風習は王国には存在しない。
ああ、税を払わなくていいなんて羨ましい、などと思うかな? けれど、それは違う。税を収めさせるから統治しなくてはいけない。
最低限、統治する側は税を収める手段というモノを用意しなければならないんだ。鳥を始めとした移動手段、または道路などをね。
そんなもの、絶対に取れる税よりも金がかかるにきまっている。飛行船と言った安い空中移動手段はドラゴンがいる限り使えない。道路? 魔物が破壊するたびに直していたらいくらかかるやら。
そんなわけで、この国の人間は王国の民であるという認識くらいはあるけど、税も納めなければ法に従うわけでもない。
従うのは住んでいる街が決めた条例である。明文化された法など存在しないけどね。あ、【夜明け団】は明文化された規律があるよ。
「そうすると、王都は何もしないんですか?」
税はとらないけど、魔導機械は売ってるよ。
それがないと人間らしい生活は送れないからね。半分島流しの開拓民の生活は酷いものだよ。運良く魔物の襲撃がなくても、着るものはボロで食べるのは雑穀とかさ。
農耕技術というものは全く発達してないんだよね。だからくそまずいお米に似ていなくもないものを食べるのさ。
「売ってる? キャラバンは王都所属でしたか」
ああ、誤解させてしまったか。
街々に物を売るキャラバンはそれぞれ独立してるよ。まあ、王都自体――というか王国は領土拡大政策をとっているから、それに有益なものは優遇してるんだ。キャラバンはその一つ。
安い値段で魔導機械を売って、キャラバンに集落を回らせて売っている。王都は小売そのものに手を付けてないよ。
「じゃあ、テロリストとかは――」
僕たちの活動を忘れた? さすがに王族、貴族院それぞれに属する武装組織はあるけどね、王都の人間自体が引きこもる性格だから。大体そういったものは僕たち【夜明け団】が対応しているじゃないか。
「ああ、そう言えば。僕たちもそれで狩り出されることがありました。その時は周りにいた魔物を焼き払うだけでしたが」
彼らの目的は完全に不明だ。
突き詰めて言えば僕ら夜明け団の目的とは”魔物を殺す”こと。しかし、人類軍の目的は……うん、訳が分からない。
まあ、僕らと敵対することは多いけどね。火力は【夜明け団】が流したものを略奪して賄っている。そして食糧はあるところから盗む。はた迷惑な奴らだよ。そして、どこにでも現れるから厄介だ。
「ルナ様も知らないと?」
これは予想だけど、【夜明け団】の他の部署も――ああ、O5とか僕以外の幹部とかも予想もついていないと思うよ。
組織だけあって、けっこう似たり寄ったりの思考になっちゃうから柔軟な思考と言うものが難しいんだよね。
「ああ、そう言えば海外はどうなっているんですか? 教国とか連合とかがあると言ってましたね」
うん、そこらへんは全くもって本編に関わってないね。まあ、理由は簡単――僕たちはこの大陸、王国で歴史を紡いでいる。
彼らは彼らで西洋の大陸で歴史を紡いでいる。要するにつながりがないんだよ。文字通り海の向こうのお話さ。断絶してると先ほど言った。
「けれど、夜明け団の基となったものは西洋から伝えられたとか」
そうだよ。錬金術自体は西洋から入ってきたものさ。
それを僕らは魔改造してここまでの勢力を作り上げた。反対に王都では薬学として、いや化学かな? そのような発達をして『フェンリル』や『アインヘリアル』を作り上げた。
この二つは西洋から輸入してきたものを祖とする。
「伝えられた、ですか。こちらは向こうに何か渡してるんですか?」
……ああ、うん。
なぜか王都の奴らは戦力の委譲に積極的でね。人を狩ってきて改造人間にして献上してる。ルーツを神聖視でもしてるのかな?
そこらへんはわからないけど、等価交換でもないね。輸入の対価は黄金とか魔石やらだし。そういう意味では、彼らは人身”売買”をしていない。タダは売買とは言わない。
……十字軍かな。分からない人はわからなくていいと思うけどね。
「そう言えば、改造人間の技術を持っているのは【夜明け団】だけではないんですね」
そりゃあね、僕らは王都と裏で強固につながっている。ならば、その技術は王都にも流れるさ。僕らが一部だけとはいえ魔導機械を作れるように。
「改造人間――”野良”とか呼ばれるあれは」
ああ、主に人類軍に所属している彼らか。ものすごく乱暴に言えば、似たようなものだよ。そこら辺に生えてる野イチゴと、ショートケーキを比べるようなものだけどね。
「……ええと、それは」
比喩さ。つまりは適当に魔力をぶち込んで生き残ったのが彼ら。そして、調整を繰り返し多くの操作をくわえて究極ともいえる技術で作成されたのが君たちだ。
その中でもルート、君は最高級の品だぜ?
「品、とか言われると。しかも、あいつらと僕らが兄弟みたいなものとか、おぞけが走りますね」
なに、しょせんは試練を生き残ったとはいえ、強大な魔力に侵されることに耐えきれず狂ったやつらだ。まあ、これも夜明け団の見解に過ぎないがね。
ああ、そうだ。自分の商品価値は知っておいた方がいい。
ちなみに僕の商品価値は当初、情報の閲覧権、それと金貨――何枚だっけ? 城は買えなかったね。そこから実績を作って、この地位についた。君はルナ・チルドレンで幹部としての教育も受けているということで、価値ははっきり言ってかなり高い。
「うわあ。なんでしょう、先生にそういわれるととんでもないところに放り込まれそうで怖いです」
能力のある人間を遊ばせておく余裕は夜明け団にはないんだ。残念ながらね。頑張れよ、少年。
「あはは。でも、はい。そうですね――やるときはやる、ただそれだけ。いつもと変わらない。……ですよね?」
ま、僕らが失敗したその時には王国ごと滅ぶだけさ。
「そう言えば、なんで夜明け団は秘密結社なんかやってるんですか? 普通に大手ふって歩けそうですけど」
実際、襲撃はあるけれど街に入れないということはないよ。敵対する街を除いて、だけど。そして、襲撃があるのはある程度大きく、そして王都の外を動き回っている組織であれば当然のことだったりする。野盗は掃いて捨てるほどいるんだ、残念ながら。
「ますます秘密結社のままにしておく意味が分からないんですけど」
そうだね。ま、多くの街の条例――感情論で権力者が好き勝手にやることが多いそれでは人体実験を罪にすることが多いね。
もっとも、実験と改造は多少意味が異なる。被検体を苦しめるなんてのはサディストの性欲を満たすこと以上の意味はないよ。
確率的に失敗することもわかっているわけだから、改造であって実験じゃない。これを実験と呼ぶなら、厳密な意味では魔力を用いた治療も”そう”呼べてしまうだろうね。
「ええ――」
”それっぽい”ただそれだけの話だろうさ。
まともな情報ネットワークもないこの大陸じゃあイメージ先行になっても不思議はない。それに大した意味もない。
敵を勘違いした老人がいたように、この国では情報というモノが回らないんだ。だって、王都も情報を発信することに興味がない。【夜明け団】が狂人の集まりだなんて非難されることが多いのはそのためさ。
「そういえば、貴族院とか初めて聞きましたし、王様の名前も知りません」
そうか、なら君への講義をルビィあたりに頼んでおこう。
だが、そのあたりを知らないのは一般人ならごく普通の感性だと思うよ。別に街の名士でも知らん奴は五万といるさ。
けれど、僕らは王都とかかわりが深いから君には知っておいてもらうよ。
「……名前とか、覚えるの苦手なんですよね。コツとか――あ、やっぱりいいです」
馬鹿にしてるの? 固有名詞を覚えるなら紙に書きながら声に出せ。そして、定期的に復習する。脳の構造から一度で全てを覚えるのは無理がある。”忘れる”機能がついているんだよ、人間の脳にはね。僕がその程度のことを知らないわけがないだろう。
「あ、はい。そうですよね。で、話を元に戻しますけど情報って、一般人は手に入らないんですか?」
入らない。情報屋なら、どこかの街の名産やら商売人向けの何を必要としているかは知っているだろうけどね。基本、人は街で生まれて街で死ぬ。
外のことなんか知らずに生きていくんだ。古い情報とかなら入ってくるけど、新しい情報が入ってくることはほぼない。
「そういう意味では、どこそこに【災厄】が出たってすぐわかる団は異色と言うことですか」
僕たちの保有する特殊技術と言っていい。実際、金もすごくかかってるしね。情報ネットワークと呼べるものを抱えているのは【夜明け団】だけ――この大陸では、ね。西洋の大陸は知らない。
「他の人は、何も知らない。僕たちだけが――」
あ、こういう情報ネットワークを私用に使えるのは【夜明け団】の中でも上の人間だけだよ。もちろん、これは君も入っている広い範囲の上ではあるけど。
「……手配犯とかは?」
他の街に行けばよほど距離が近くない限り、人生をやり直せるよ。派手にやって街を崩壊させると【夜明け団】の人間――言ってもいいか、クロイツかレーベが殺す。
ま、大体一つの街を崩壊させたところで野垂れ死にが落ちの話だけど。
「こうしてみると、王国の真の支配者って【夜明け団】なんじゃ……」
それを人前で言うと王都と戦争が起きるからお口にちゃっくなんだよ、ルート。
ここの世界はこんな感じです。
なにか疑問があったら感想版に書いてください。しっかり設定してある部分と適当な部分がありますが。
振り返ってみると、完全に陰謀論的な世界観ですね。しかも主人公が陰謀側と言う。
ラスボス系主人公なので当然かもしれませんが。




