200万PV記念 ルナちゃんの人には言えない趣味(アルカナ編)
ルナはアルカナに連れられて現代の街並へ出かけていた。ビル群がそそり立ち、人通りも多い。人間たちが、二人を見ている。
ざわざわと、喧噪が響いている。都心の人間は他人に対して無関心なところがあるが、この光景は注目を集めざるをえなかった。ただし、声をかけるのははばかられるけれど。
「……ひ」
ぴったりと体をアルカナにくっつけて、ルナは呻いていた。着ているのは頼りない白のマイクロビキニのみ。
ふわりと揺れる薄紫色の髪の下では惜しげもなく裸身が晒され、薄いけれどその恰好で見ればかすかに膨らんでいる胸も、薄毛すら生えていない真っ白な足も隠すものもなく衆目の視線にさらされていた。それこそ胸の先と股しか隠れていないほどの布面積だ。
対してアルカナの方はパンク系の、これまた露出が激しいファッション。遠目から見れば裸に見えるような恰好に比べれば、それでも十分に隠せているが。というか、ルナは裸足でこちらは靴も履いている。
大人になりかけの少女がそんな恰好をして、さらにとんでもない恰好の幼女を連れているのであれば目を引くのも当然、というか幼女の方に関しては虐待でしかない恰好だった。
「くふふ」
心細そうにくっついてくるルナに、アルカナはうへへといやらしい笑みを浮かべているのが危険具合に拍車をかける。
ルナの薄い感触がダイレクトに伝わってくる。この服も邪魔だが、まあこれは着ていた方が恥ずかしそうにくっつくその身体を堪能できる。それにまあ、愛しのルナ様の方も大胆なアルカナを見るのは好きだし。
「わ……や。子供も見てる……」
きょろきょろと落ち着きなく周りを見るルナは、小さな子供が口を開けて自分を見ているのを発見してしまう。それは純粋な疑問の目だ。気を取られて、少し足を止める。
アルカナが構わず歩くから、少し体が離れた。横から抱きつくような恰好だから体の半分も隠せていないが、壁が無くなると全身が観られてしまう。
「ルナちゃん、離れては迷子になるぞ?」
「きゃ……あ、うん」
くい、とルナの首にはまった首輪を引く。くっついていたためにわかりづらかったが、確かにかわいらしいリボンで結ばれていた。
ルナはふわふらと引かれるままにアルカナに抱きついて少しでも自分の身体を隠そうとしている。自分に注がれる視線を気にしながら。
「くくーーもう少し歩こうか?」
「あうう……どこまで歩けばいいの?」
顔を真っ赤にしたルナは、そうさせたアルカナに従うしかない。従順に、恥ずかしがりながらもただ指示を聞いてーーそして、わずかな安心を求めて身体を少しでもくっつけようとする。
まあ、結局はこれもただのプレイでしかないが。
ここは方舟の1フロアで、ただの人間が生きていけるような環境ではない。そもそも道行く人間たちに知っている顔もない。生成AIで作っただけの人間で、それはカタチだけを取り繕った操り人形だった。
質量や気配が存在するだけのスクリーンと何も変わらない……そんなプライベートな場所での危なそうな遊びでストレス解消をしていた。バレることのない”遊び”だ。
「くふ……ぐふ。ふへへへへ……!」
「あう。んん。――むぅ。ねえ、まだ歩く?」
ためらったり、今にもよだれを垂らしかねない顔を見つめたりと。ルナは様々な方法で訴えかけるが暖簾に腕押し。
この状況を満喫するアルカナは、服を着ることもどこかに隠れることも許してくれない。
「うへ。にひひひひ」
「……うう。アルカナ。――あるかなぁ」
涙目になってしまっている。
まあ、もっともーー誰のストレス解消かと言えば、それは今にもやめたそうな顔を作っているルナのためなのだが。
いつもの生活ではずっと玉座でアルカナに甘えたままで、時折思いついたようにイベントを開く。そんな自由を満喫する独裁的な王様に見えて……実は本人に自由がないのだった。
組織である以上、結局は外向きか内向きかを選ばなくてはならない。夜明け団は完全に内向きの組織で、団員向けに態度が決定される。これが外向きなら御用聞きだの下請けだの言われるわけだが。
ルナだってずっと団員のために行動している。
何かしてやらねばならないのだ。ルナだって自分についてきた者達を容赦なく捨てたりなどできない以上は。居るのだから、与えてやらなければ。それを飼い主の責任と呼ぶのかもしれないけど。
自縄自縛で自分でもどうにもならない状況だ。この空虚な城を維持するのは、気疲れする。夜明け団にもう意味はない、災厄も遊星主も倒したのだから存在意義はもう果たし終わったのに。もう要らないのに残っていて、けれど捨てることもできやしない。
「お、そこに男の子がおるぞ。お母さんの胸とルナちゃんの胸の違いでも見比べてもらおうかの?」
「や……やあ。胸を見せないで」
アルカナは抱きつくルナを一度引き離し、後ろからわきに手を入れ上に掲げてルナをみせびらかす。
薄い胸も、すべらかなふとももも、小さなマイクロビキニではほとんど隠れない。ルナは片手で自分の胸を隠しながら、アルカナの腕を引っ張ってやめろと催促している。
まあ、本当に嫌がっているとしたら、アルカナはやらないけれど。
「ねえねえ、お姉ちゃんはなんで裸なの?」
「ひっ!? ひゃあっ」
横から幼女に声をかけられた。
まあアルカナが音声を作ってしゃべらせているだけなのだが、そこはそれ。ルナだって、本物でなくフィクションを楽しんでいる。真っ赤な顔が、あわあわと言葉を探して消え入りたくなっている顔になってしまったけれど。
「くふふ。かわいらしいじゃろう? 細くて柔らかい手足にーー」
「ひ……ひゃわっ。くふっ。んふふふふふ。。撫でないでぇ、くすぐったい。声が出ちゃう」
ルナの小さな体は腕一本で抱え上げられたまま、アルカナは膝を曲げて目線を合わせる。そのままさわさわと撫でさするものだから、ルナは変な声を上げてしまう。
「ふーん。ううん?」
「きゃっ!」
幼女がルナの足を触った。撫でまわしているが、不思議そうな顔をしている。
「うむ? まあおぬしにはわからぬか。特にお腹などはぷにぷにしていて、触るとそれはもう天に上る心地なのじゃがなーー」
「あうっ。ふぅう……うう」
お腹もすきにされてしまう。ルナはアルカナの腕の中でジタバタとあばれるが、一向に開放されることはない。
「――へえ」
「おっと。おぬしはダメじゃ。ここは特別なところじゃから触らせてはならぬところじゃ」
幼女がルナのお腹に手を伸ばしたが、アルカナは立ち上がって触らせないようにしてしまった。幼女が頬を膨らませた。
「むー。お前は触ってる」
「くふふ。妾はルナちゃんの〈大切な人〉だから良いのじゃ」
アルカナは得意げな顔で返した。
実のところは一人芝居でしかないのがアレだけど、ルナは真っ赤になった顔で少し嬉しそうにしている。
無力な身で、大好きな人に自由を奪われて好きなようにされてしまう。けれどその人は守ってくれるというーーマッチポンプにやられてしまう女の子の立場を。
「ねえ。ねえーーあるかなぁ」
「うむ? ルナちゃんはもう限界のようじゃな……ではな、幼女よ」
「ん。じゃあね、お姉ちゃん。変態のお姉ちゃんも」
「あうっ!? 僕は、好きでこんな格好をしているわけじゃ……」
「くふふ。これを選んだのはルナちゃんだものな? ほら、行くぞ」
「ああう……」
ルナはアルカナにどこかの暗がりに連れていかれてしまった。
こんなことをしているからドMに目覚めた子が居る訳です。




