ex3話 平和な世界
最終決戦から1週間後に鋼鉄の夜明け団は動きを再開、そこから3日ほどで脅威となりえるものを瞬く間に潰して行った。夜明け団の戦力が落ちたのも束の間、ルナに対抗できる戦力の芽は全て刈り取られてしまった。
未だ隠れ潜む『宝玉』はあれど、襲われた都市を救援に来たのはたったの2機。それも騎士クラスに刈り取られた。未だ残る数をルナは把握していないが、この事態でも結束できなかった以上、未来はない。
そして、ルナはと言うとやっと修復を開始したアームズフォートの中央に玉座を置き、アルカナとアリスを侍らせていた。
大人三人は座れそうな重厚な玉座の上、ルナはアルカナの膝に頭を乗せて機嫌よさそうに目を閉じている。
「くふふ。これで我らの天下という訳じゃな、ルナちゃん。逆らう奴は皆、首を斬ってしまえ」
ご満悦そうに、ルナの髪を撫でるアルカナ。美女がするには表情だけでもあんまりだが、それを向けているのは幼女である。
しかも、言っていることも酷い。
「「――」」
ルナの前で待機している者達も同意の雰囲気を返している。もっとも、ルナは適当に場所を選んで玉座を置いているだけだ。
……守れ等と言っていないのに、彼らは勝手に護衛の役を買って出ている。
「あっはっは。アルカナは言うことが物騒だね。人間、畳三畳で十分って言うじゃないか。何事も謙虚でいることが重要だぜ」
アルカナに甘えているルナは冗談ともつかぬことを言う。玉座の時点で畳三畳も何もあったものではないが。
けらけらと笑っているルナは上機嫌だ。自分が出ていく必要がないからと、ずっとここで遊んでいる。
「……ルナ様、『カイテス』の都市でマフィアグループが魔導人形を所持しているのが確認されました。出撃の許可を」
す、と扉を開いて入ってきた4人が跪いた。ある種の様式美だ、別にルナの採決が欲しいのなら戦術ネットワークに上げれば済む。
「やれやれ、君たちは本当に仕事が好きだねえ。魔物を生む魔力は生産時にこそ最も大く排出される。『黄金』以上でなければ、そんなに躍起になって整理する必要はないと言うのに」
ルナは未だアルカナに髪を撫でられ続けている。
「いいえ、ルナ様の御力によって作られたこの平和を私利私欲のために乱すことなど許されません。どうぞ、御裁可を」
ルナは顎に手をやる。ふぅ、とため息をついてアルカナの膝の上から身を起こした。
「ならば良し。平和を守ることを君たちが望むと言うのなら、そうしたまえ。ルナ・アーカイブスの名において出撃を許可する。例え同族であろうとも、人類の未来に仇なす者は叩き潰せ」
「「「「了解!」」」」
敬礼をして出ていった。
それを見届けた後、ルナはまたアルカナの膝の上という定位置に戻る。傍にいたアリスを抱きしめて、またも怠惰に沈む。
今は3日に1日は消えたままで、その残りの2日もこの場から動こうとしない。
「……あ、そうだ」
起き上がった。誰も来ていないのに起き上がることは珍しい。
「む? どうしたのじゃ、ルナちゃんや。欲しいものがあれば何でも妾が用意してやるぞ」
「してほしいことがあるなら、アリスがしてあげる」
アルカナとアリスは火花を散らす。ルナはくすくすと笑っている。
「む、ずるいぞアリス。妾だって、あんなことやこんなことはしたいぞ」
「首輪つけたり、ごっこ遊び? それならアリスだってして上げたもん」
アルカナがルナの尻を撫でる。対抗してアリスは胸を押し付けて主張する。
「ぬぬ……では、もっと凄いプレイを」
「アリスもする」
「うん、その話はそこまでね」
二人の頭をぺしりとはたく。この二人はルナにしか興味がないため、誰かにこういう話を聞かれても特にどうとは思わない。
ルナとしては今の話もかなりアウトなのだが。
「旅行に行こうか」
「りょこー?」
こくりと首をかしげるアリス。
「ふむ。旅行ね、うむ――いつもとはまた別の場所でいうのも燃えるの」
「なにが燃える?」
「それはな、アリス。こう……恋の炎がな」
「ルナ様、アリスと二人で旅行に行こう?」
「おい、抜け駆けはやめよ」
「アルカナはいつもアリスのこと抜け駆けする」
「まあ、そういうのは夜にね。アルトリアお姉ちゃんとファーファも誘おう。……うん、プレイアデスとコロナ、それとミラも呼ぼうか」
そういうことになった。
そして、着いたのは透き通った海。宝石のような、という表現がぴったりな――死んだ海である。鉱物に命などない。
「ふむ、これが海か」
アルトリアが腕を組んで眼下を睨みつける。他に観光客はいない。そもそもこの世界にはもう海水浴などという概念は消え失せた。
あるとすればプールだ。ここは人類の生存域の外側、いつ何が襲い掛かってくるか分からない危険地帯。……とはいえ、遊星主を倒した以上はめぼしい脅威など残っていないのだが。
「ううん、解釈次第で湖ということになるけどね」
海から塩分など消え去って久しい。瘴気渦巻く紫毒の海か、生命どころか何もない水の塊か。少なくとも、資源としては利用できない形になっている。
とはいえ、目玉なのは海ではなかろう。生き物が居なくても、釣りができなくともどうということはない。女の子の水着と映える水面があればそれで十分だろうから。
「わー。おみずがたくさーん」
喜んで水内際まで走って行ったのはファーファだ。一番に子供らしい反応だ。そしてスク水を着ている。
水着まではなくなっていないが、誰も持っていなかったのでルナがチョイスした。
「ファーファ、危ないから走らないで」
アリスがお姉さんぶってついていく。アリスはフリルのついた水色のワンピースタイプだ。幼い容姿にジャストフィットしているが、突き出た白い生足がなまめかしい。
見れば水をかけあって遊んでいる。とても微笑ましい光景だった。
「……アルカナ」
「うむ」
ルナが一声かけたとたんにビーチベッドとシートが作られた。これもアルカナの能力の応用である。
じゃ、お願いするねと声をかけてルナがシートの上に横たわる。ちなみにルナはビキニで、アルカナが選んだ。
そういうアルカナはV字の水着だ。
「うむ」
手をワキワキさせてルナに襲い掛かろうとするアルカナを、手刀で意識を刈り取ろうとするアルトリア。
アルトリアはビキニだ。ただこちらはエロさよりも健康さが前面に出ている。しかも実力者の雰囲気を隠していない。ここには他者の目などどこにもないが、居たとしたら目を逸らしているだろう。
「お姉ちゃんはファーファに塗ってあげた方がいいんじゃない? 加護があるとはいえ、さすがにこの日差しだとあの子は日焼けしちゃうから」
言外に自分たちはただの気分だと言っているようなものだった。
「む、それもそうだな。……ファーファ!」
アルトリアがファーファを呼びに行く。
「邪魔者はいなくなったな。では、ルナちゃんの珠のお肌に染みがつかぬよう丹念に塗らぬといかんな」
「うん、任せたよ」
シートの上で目を閉じるルナ。慣れた様子でビキニの紐を解き、背中にオイルを塗りこんでいく。
「んひゃ。……あ!」
丁寧に探っていく手つきに思わずルナは嬌声を上げる。
「にゃ……あはっ! え? ちょ……そこ……!」
隅々までルナの身体の感触を確かめるアルカナ。お尻のところまで到達し、ルナの幼くハリのある尻肉を堪能する。
「んひ……にゃあっ! アルカナ……ぅんっ!」
いつまでも触っていて。
「アルカナ、何してるの」
声とともにドロップキックが降って来た。
「ぐはっ。アリスか、妾の至福の時間を邪魔しおって」
「ルナ様、あのアホは放っておいて。アリスが塗ってあげるね、アリスは変なことしないから」
「んー。そうだね、アルカナは変なことして来たし」
「そんなぁ。ルナちゃんや、今度は変なことしないから」
「それはない」
アリスが容器を手に取り、手にたっぷりと取って塗り広げる。ちょっと背徳的でエロいな、とルナは思った。
「……ひゃ!」
「アリス、ぬしやお尻を触ったな!?」
「ぜんぶ塗らないと意味がないだけ」
「あんっ!」
「ぐぐぐ……ぬし、ルナちゃんの先っぽを弄るな!」
「万が一水着がずれたときのため」
「んくっ!」
「ああ、そんなところまで……」
「ひつよう、だから」
一通り、触られてないところなんてないほどに触られて。
「んしょ……と。じゃあ、次は僕の番ね。アリス、寝転がって」
「ん」
「妾は?」
「アルカナはアルトリアお姉ちゃんにでも頼めば?」
「そんな殺生な!」
「あはは、うそうそ。ちゃんとアルカナにもシテあげるから」
そう言えば、とプレイアデスの姿を探してみるとコロナと二人でミラを砂に埋めていた。あっという間に垂直に突き立てられ、顔だけ出している状態になった。
二人はすぐに海の方へ泳ぎに行った。どうやら遠泳で勝負をするらしい。3人とも、楽しそうで何よりだ。
「で、この後はどうする?」
隣でアルトリアがファーファに日焼け止めクリームを塗っている。こちらはデリケートなゾーンには一切触れていない。
それでも丹念に一部の隙もない。
ファーファに交代したらまだら模様になっていたけれど。まあ、お姉ちゃんならいくら日差しに曝されようと日焼けなどしない。
「……ビーチバレーでもしようか」
のどかに時間が過ぎていく。