第66話 ベディヴィアの入団試験
戦争はおおよそ侵略側の予想通りに推移していた。しかし、突然に緊急事態が引き起こされる。
警戒されていたモンスター・トループが『ヴァンガード・オーバード・ブースト』を使用、警戒ラインを超高速で振り切ってSOFの胴体に突き刺さったのだ。
なんという戦法、これでは予想出来ていても予防するのは不可能に近い。が、ブーストのデータも持っている。すでに予想されていた戦術の一つでしかない。
「ヒャッハァ!」
「ぬるいぜ、ノーマルども! 鋼の一つも埋め込んでから出直してこい!」
4体の異形はSOFに侵入、そのまま好き勝手に破壊しながら中心部に突き進んでいく。内部にも護衛は居る……のだが、信用度を重視したために練度が低い。練度が高い連中は外で戦っている。予想できたのと、少ない兵力で対策できるかは別の話である。
このままであれば、SOFの陥落は必死。すさまじい火力を有するアームズフォートといえど、内部にもぐりこんでしまえば撃破は容易いのだから。
内部構造を知らないから動力炉の破壊は望めないものの、司令部を破壊すればそれで終わる。そして、必然。重要なものは中心にある。というか、中心でなければこの複雑で巨大なシステムの運用などできない。迷ってくれる、などと期待するのは愚かだ。
「――錬金術師の手により人を捨てた化け物め。ここは通さん」
ゆえに、4人はおびき寄せられたようにそこに到着した。広大な空間、侵入者撃退用の場所だが逆に言えば重要な場所に近い。末端ならともかく、中心部に無駄なスペースを用意する理由がないからだ。
それは、彼の後ろが異様に厳重な装甲に覆われていることからもわかる。後ろにだけは流れ弾を飛ばさせないという設計だ。工学的な知識があれば、機密の内部もある程度は推測できるのだ。
「なるほど、その威容は……『黄金』か」
「人類の至宝。ルナ様、そして護衛の方々ですら”肩を並べる”程度にとどまると言う」
「モンスター・トループでは未だ『宝玉』の域にすら至っていないとおっしゃられていたが」
「なれど、挑まずして何が夜明け団か」
4体がそれぞれ人間ではありえない動作で身をかがめた。怯えたわけではない。化け物なりのロケットスタートだ。
「「「「死ぬがいい、時代の遺物。そして、かのお方にただの材料の一つとして捧げてくれよう!」」」」
4体のモンスター・トループ。4種の化け物が襲い掛かる。
『ジェリーフィッシュ』……その軟体の体は8本の槍に分かれて敵を襲う。
『ブラッド』……軟体の体に毒を宿す彼はジェリーフィッシュの裏に潜み、急所を狙う。
『スティール』……中身すらも無敵の鋼鉄に代えた彼はその防御力を盾に殴りかかる。
『ギア』……歯車仕掛けの身体は一息でトップスピードに乗り、ジグザグの軌道で敵の背後を狙う。
「――愚かな。その程度で人類の救世主を気取るなど、身の程を知るがいい!」
敵は空中より4本の剣を抜き、投げた。ジェリーフィッシュに突き刺さり、地にその体を縫い付ける。
間髪入れず、後ろ回し蹴りで背後を突こうとしたギアを蹴り飛ばす。
そしてブラッドの槍をかわしつつスティールに新たに召喚した剣を突き刺し……倒れるまでの一瞬でさらに召喚した二つの剣で四肢を切り捨てた。
「おのれ!」
未だ無事なブラッドがさらなる攻撃をしようとも。
「貴様たちとは力の次元が違うのだ。無駄と分からぬなら、ここで死ね」
手に持った剣をそのまま頭に突き刺し――地に縫い留めた。頭蓋を割られればいかに化け物とて死ぬだろう……と、彼は思っている。
ご存じの通り、それは股間にあるのだが。
「ば、馬鹿な。我々が、ただの一瞬で……こうも容易く……」
装甲の頑健なスティールだが、しかしその分リカバリー力が弱い。足を切られては歩けない。手がなければ這いずることすらできなかった。
しかも、その頑健さでさえ『黄金』の前にあっては誤差でしかなかったと言う始末だ。
「ぐぐぐ……おのれ。おのれ、届かぬ!」
ジェリーフィッシュは縫い留められた先で蠢くが、その触手は敵に届かない。魔道人形という殻の軛から逃れられない。
レン=ザ・ジェリーフィッシュという、ルナが作った最初の化け物には到底届かない。凡夫を、寿命も奪らずに改造した――それだけでは劣化どころか模造品にすらなりえなかった。
「……だが、蹴りの一撃ごときで私は負けぬ!」
『ギア』がとびかかる。もはや完全に人間を外れた姿、四肢に加えて背から生えた4本のアームが、蜘蛛じみた変態軌道を実現する。
地に、四肢かアームが触れた瞬間にあらぬ方へ飛ぶ。如何な視力を持っていても対応できないはずの縦横無尽。武に造詣が深いほどに頭が混乱する理不尽だ。
「囀るな、俺はまだ異能すら使っちゃいねえんだからよ」
動きを見切り、その五指でギアの頭を掴んだ。武術がどうのではなく、基礎ステータスの差だった。ただ掴まれただけでギアは行動不能となった。
「舐めるな、人間!」
死んたと思われていたブラッドが動く。ギアを掴む敵手の腕に毒の触手を突き刺した。瞬く間に毒が周り、腕が落ちる。
「ッなに!? あれでまだ生きているのか!」
「気をそらしたな?」
拘束が緩んだ『ギア』が死力の一撃で敵を壁に叩きつけた。それはただの『鋼』であれば、中の人間は全身骨折して死に至るような代物であったが。
「くそが! やられた、あのガキィ。報告書を改ざんしたな!?」
正確には、噓を書いたといったところだが……提出した研究データには脳は頭にあると書かれていた。
それは”軍”の研究データだ。研究の世界では改ざんは出禁になる程度だが、軍であるなら銃殺ものだ。にも関わらず”やらかす”のがルナがルナたる由縁である。
「使ってやるぞ、我が異能を! この『ミズガルムオルム・ティルフィング』の力を! そして、貴様らは生きたままホルマリン漬けにして研究材料と中央に送ってくれるわ!」
そして、『黄金』が本気を出す。彼は以前のイヴァンのように力を持ちながら振り回される暴走特急ではない。
覚醒し、その力を十全と操る寿命を超越せし”人外”。階位としてはアルトリアと同じ場所に立っているのだ。その本領を出した以上、モンスター・トループには窮鼠の一撃すら許されない。
「――【ティルフィング・オブ・アローズ】」
その隻腕にて4本の剣を投げ放った。
「がッ!」「ぐあ……!」「がは!」「うぐッ!」
その剣がモンスター・トループの全員に突き刺さる。だが、相手が『黄金』であろうとも人間を捨てて異形に至った者たちだ。戦意を衰えず、立ち向かおうとするが……
「なに……? 身体が動かん……!」
そう、それは最も斬撃に耐性を持つはずの『ジェリーフィッシュ』ですら。糸が切れたかのように動けない。ただの剣が刺さっているだけならば、回復など容易だったはずなのに。
「――我が魔道人形は敵手の急所を見抜く目を持つ。ふん、そういうカラクリか。頭を股間に持ってるんだな貴様ら」
嘲るように言い放つ。敵の異能の前にすべてがバレていた。しかも、その急所を見抜く力で重要な場所を破壊されては蠢くことすらできない。
この生け捕りは、戦力において完全に相手を上回っている証左に他ならなかった。
「……ふん。ご解説どうも」
そして、だしぬけに響く声。遥か前方、この広場の角だ。誰も居なかったはず、この4人以外の侵入など許していなかったはずなのに。
「なんだと……!? 貴様、その『宝玉』は……! ベディヴィア・ルージアだと? 参戦の理由はある。あるが……何故そこに居る!? 貴様の能力は腕力強化! 転移など……!」
このホラーじみた急出現には、この敵もさすがに焦る。いや、異能についての造詣が深いゆえにか。ビビって剣を取り落とすほどではないにせよ、ここで必要とされたのは武人としての気構えよりもホラー耐性だった。
「気にするな。その力がこの決闘に使われることもないのだから。ただルナ・アーカイブスの所業とだけ覚えておけ」
つまらなさそうに吐き捨てた。
「さて、知っているようだが、改めて名乗ろう。『スカーレット・ブレイズ』のべディヴィア・ルージアだ。【キャメロット】の一員となるため、貴様を殺し力を奪うためにここに来た」
その盾と見間違う槍を構える。それも、奇械との戦いで使ったそれですらレールガンの5発や6発で壊れるような代物ではなかった。
更なる強化が施されている。それ一つで『宝玉』に匹敵するほどの強化がルナの手により為されている。……とはいえ。
「愚かな。『宝玉』の位階で私に勝つと? それも、聖印すら身体に馴染まぬその練度で? それですら一夕一朝で至れる境地ではないはずだが、それも錬金術師に頼ったか? ……しかし、足りんよ。この『ミズガルムオルム・ティルフィング』のベドヴィル・サーシェス様に挑むのならな」
『黄金』こそ真の至宝。劣る『宝玉』でも二つ分あれば互角、などと甘くはない。比較したいならばせめて10は持ってこいという話だった。
しかも、ベディヴィアは『宝玉』使いとしても下の部類に入るのだから。
「それはどうかな? モンスター・トループの連中とは、別に親しくしていたわけではないがな。しかし、奴らの執念を舐めるなよ。現にその腕、回復していない」
「――こいつも錬金術師の手腕か? 腕一本、回復するのに手間はかからんはずだがな。あの黒い触手、毒でも入れていたか」
「その通り。こちらの仕掛けは見抜いたようだが、お前のタネも見抜いたぞ。急所を見抜く力、だがその本質は『絶対必中』だな。ありえん軌道に曲がった剣、見せてもらった」
「ふん。手の内を見られるのは趣味じゃねえが……あの錬金術師のトンデモを考えりゃ仕方ねえ、必要経費さ。ああ、仕方ねえさ。ここでお前を殺して帳尻を合わせてやるよ」
「いいや、勝つのは私だ。姫様に付き従う〈騎士〉の資格を得んがため」
「――馬鹿め、テメエは負ける。策を弄そうが『宝玉』が『黄金』に勝つことなど、あるかよ!」
まずはベディヴィアが踏み込んだ。腕力強化は脚力強化でもある。10mは離れた位置、だが到達には0.2秒もあれば十分。
その隙間に敵は剣を投げ込んだ。
「この槍、そう間単に壊せると思うなよ!」
だが、その盾は硬いのだ。剣が突き立ったものの、突進は止まらない。暴走特急じみた圧力が襲い来る。
「愚かな、力比べか?」
『黄金』は敵の土台で勝負することを選んだ。……拮抗する。パワー系の異能に対して片腕、かつ素のステータスで挑むなど馬鹿げているがそれをひっくり返すのが『黄金』の力である。
「ぐぐぐ……! まさか、これほどとは」
「へ、押し返せねえとはな。さすがに錬金術師の手下か」
「違う。私はアルトリア様の騎士だ!」
「どっちでも変わらねえさ。教国に巣食った化け物ども、お前の後に二匹まとめて始末してやるさ。……痛ぅ」
『黄金』の力が緩む。毒は片腕の再生を阻害しているだけではない、全身に回って病毒をまき散らしている。その激痛が全身を焼いていた。
ベディヴィアは力を籠め、敵を壁に叩きつけようとして――空ぶった。
「……なに!?」
「若いねえ。足元がお留守だぜ」
敵がやったのは単純だ。苦しんだ振りで騙した。そしてしゃがみ、足を取っただけだった。そのままベディヴィアを振り回して壁にたたきつける。
弱ったふりにまんまと引っかかった。激痛だけは真実だが、しかしそれでどうにかなるほど軟な生き方をしていない。
「チィッ!」
「コイツで終いだよ。お前の急所は見えている」
4本の剣を投げ放った。『ミズガルムオルム・ティルフィング』の力を考えれば、剣を投げさせれば敗北が決まる。
絶対命中、そして急所を見抜く力があればただの一撃が絶死だ。脳が砕ければ死ぬ人間に、絶命を免れる手段はない。それこそアルトリアとか、遊星主のようにエネルギーさえあればどうとでも再生できる存在でなければ。
「だが、防御手段はある。これで時間は稼げ……」
バリアが展開される。要するにオプションパーツ。使い捨ての小規模イージスだ、相手のそれに空間を飛び越えるほどの力はない。
相手の”弱点を見抜く”力は現状の盤面に限られる。使ってもいない武器や防具を見抜けたらそれは未来予知だ。
「甘く見るなァ!」
しかし、それも”使っていない”からこそだ。光学系のバリアはたかが剣では破れないはずだが、次の一撃で的確に急所を狙われては機能停止するほかない。
使ったとき、そして破壊されるとき……合計二発しか防げないが。しかし、そこは二発”も”防げると言うべきだろう。
「お前こそ、俺を舐めるなァ!」
そして、それは”一つ切り”ではない。
ベディヴィアに付いているのは錬金術師。ならば、有力なパーツの一つや二つは与えられている。量産こそ人類の叡智だ。そも、力の一つも与えずに『黄金』に挑めと無茶を振るルナではない。
戦いの中で殻を破る成長なくして突破できない難易度の試練を課した。しかし、成長などせずとも敵の油断一つで実力差が簡単にひっくり返るのが戦場の常である。
「なんだとォ!? そんなものが人の力か!」
防御手段は重要だろう。そして、光学を搭載したのは単純に手元に参考元があったからだ。だが、かさばらず、すぐに取り出せる展開防壁。それは敵の最も苦手とするものの一つだ。
4つ、5つ破壊してもまだ予備がある。元々異能からして遠距離戦が得意で、しかも今は片腕な上に全身を痛みに苛まされている。そんな状態では彼が全力を出すことなど難しく――
「死ね! 我が栄達の糧となれ!」
「ふざけるなよ! そんな、錬金術師の妖術で!」
合計10機のオプションパーツを犠牲にしてインファイトに持ち込んだ。ルナに与えられた数は13機、距離を離されたら残り3機では詰められない。
ここで倒しきる以外にベディヴィアに勝機はない。
「「――おおおおおお!」」
そして、戦いは泥臭い殴り合いへともつれ込む。ぶん殴り、ぶん殴られる。距離を離されたくないがゆえにベディヴィアはタックルして抱きつきつつ、片腕の敵を殴る。
だが、敵も負けてはいない。そもそもスペック上では勝っている。彼は戦場を駆けた戦鬼だった。ならば、足を使った泥臭いやりかたも履修済だ。ダメージを稼げばコイツは沈む。
なぜなら、ベディヴィアの身体は人間と同じものだから。すでに死んでいるはずの猛毒を、ただの回復力で拮抗しているこの『黄金』とは違って殴れば死ぬ。
「いい加減、倒れやがれ!」
「こっちのセリフだ、若造が!」
中身まで痣だらけになりつつも、まだ戦う。殴り合う。……譲れないものがあるのだ。がす、ごすと10分は拳の応酬を交わし、だが外では『アダムス』の戦力が順当に削られた頃。
「この! この! このォ!」
「はん。まだ青いねえ。言っただろうが、足元が留守だって、よ!」
戦場を駆けた経験ならば敵が上。一切足を狙わず胴体を痛めつけるというフェイントを挟んでの足技を撃った。戦場で頼るのは根性ではなく、単純な策だ。賢さを誇る馬鹿は早死にするが、いつでも頭を使う方が生き残る。
……ベディヴィアは転がされ、敵が距離を取った。あのバリアが何機あろうと、逃げながら撃ちまくれば勝てる。なにせ、相手は。
「いいや、青いのはお前だよ若作り。”遠距離攻撃がない”と誤解したお前のな」
「それは、『ツインブラスターカノン』だと? だが、発射には時間がかかるはず……!」
立てないはずのベディヴィアが、寝ころんだまま自身に巨大な砲塔を向けているのを目にした。すさまじいパワーと引き換えに扱い辛いその切り札。出力は十分だとしても、この距離でまともに使えはしないと疑問に思う。
「こいつも錬金術師の改造品だ。エネルギー充填は完了済なんだよ、発射ァ!」
「……っのォ!」
回避できない、さすがにそんな無法な改造は考慮の外だ。迎撃しようにも、エネルギーの束に急所などあるはずがない。投げ放った剣は二条のエネルギー波に粉砕され、彼を飲み込んだ。
ボロ雑巾のように吹き飛ばされ、鮮血をまき散らしながら地に堕ちた。さすがは『黄金』の防御力だが、毒に侵されたその身体はもはや立ち上がることさえできやしない。拮抗が崩れた後は脆いものだった。
「最期の言葉くらいは聞いてやる」
ベディヴィアが片足を突き、彼の顔を覗き込む。ふてくされたような顔をしていた。
「は、勘違いすんじゃねえよ。俺が負けたのはテメエじゃねえ。あの悪辣な錬金術師、ルナ・アーカイブスの手駒にやられたってことだ。俺も、中々に悪賢い人間だと思ってたんだが……負けたか」
「アイツには裏も表もない。すべて、テクノロジーの発展とそれによる人類文明の強化を通した”敵の殲滅”を目指していた。真の意味で手段を選ばん奴に、裏”だけ”では勝てん」
「へ。じゃあ、あのいけ好かねえガキに伝えておいてくれや。人間ってのはアンタが思うより愚かで自分勝手だ。きっと、救おうとしたのが間違っていると思う日が来るぜ、て……よ」
「なるほど。まあ、心配するな。アイツが聞いていないはずがない。お前の言葉は奴に届いている。――ああ、”ならば、僕は情ではなくシステムによって人を治めよう”との伝言だ」
「け。最期まで気に食わねえガキだぜ。なあ、おいベディヴィア! 地獄で待ってる。その時は魔道人形も錬金術師も関係ねえ! 今度こそ己の力だけで心行くまでヤろうぜえ! ……がふっ!? う――」
血を吐き、動かなくなった。
「貴様の力をもらう。だから、全てが終わったら代金代わりに付き合ってやるさ。アルトリア様の騎士である以上、どうせ私も地獄行きだ。清廉潔白では、奇械打倒などできやしないのだから」
装甲を破壊し、司令部へ侵入する。基本、防御力などよりも攻撃力が高いのは発展した文明では世の常だ。如何に世界最高峰の装甲とは言え、流れ弾以外を受け止めるには荷が勝ちすぎた。
「総員、降伏しろ。この戦争は【鋼の夜明け団】が勝利した」
外の戦況はSOFが有利に進んでいた。だが、司令部を掌握されて一転直下、敗北という結果になった。
この内戦では勝ち方を考える必要がある。
すなわち、SOFは相手が降伏するほど敵戦力を叩く。最高司令官を拿捕するにしても、ルナはここにいないから戦力を削るほかない。
対して、ルナ側ではこのSOFの沈黙こそが勝利条件となる。しかし、司令部を落とせばいい訳ではなく666人委員会は他にも来ている。トップが殺されても指揮権を他に移譲すればいいのだが――頼みの綱の『黄金』を堕とされては戦力が足りない。
乱暴に言えば雰囲気となるが、しかしこれでSOFは降伏し決戦に決着がついた。いつでも暴力を持っているほうが”偉い”。ゆえに、この瞬間――教国で一番偉いのはルナになった。