表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末少女の黒幕ロールプレイ  作者: Red_stone
第1部:箱舟編
22/362

第6話 みんなで相談


「ああ、あのときプレイアデスがな――」


 僕はコロナの膝の上ですっぽりと抱かれて談笑している。コロナの身長が高いというよりは僕が低いだけというのが少し悲しい。日本人にしては身長、高かったんだけど――今となってはちいちゃな幼女だ。

 コロナだって年を喰ってるわけじゃない。日本では確実に成年していないように見える外見で、それでも僕たちの中では最年長に見える。


 二人、寄り添って談笑していると。


「たいへん……です……!」


 アリスが血相を変えてやってきた。プレイアデスもいっしょに。


「どうしたの?」

「さっき、はんのうがあって、なにかがきたよ。ここ――『箱舟』のそばに」


「なにか。……?」


 空中ディスプレイを展開する。情報表示、いぶかしげな表情を作る。


「これは生命反応か。魔物ではないな――こんなレーダー、船に搭載されていたか?」


 どうやら、反応が小さすぎて近くに来るまでわからなかったらしい。とはいえ、見覚えなどないし記録にもない。”それ”を使った経験など。

 生命体を探すそのレーダーはただあるだけで、反応したことは一度もないのだから。


「あったはずだ。だが、反応を示したことは私の知る限りではない。我々が滅ぼしてきた世界で映る反応は我々自身のものだけだった」


 プレイアデスが重々しい口調で話している。外見幼女のその話し方はちぐはぐで、とても愛らしい。

 なら、アリスが大騒ぎしているのは今までなかったことだからかと思い直す。うん、そわそわしてるのもかわいい、とか思ってる場合ではなさそうだと自戒した。


「――ふむ。どうしたものか」


 魔物の反応を探すレーダーは別物である。

 わざわざ搭載されているということは、その必要があったということか。普通に考えれば、目的は保護か? 終わった世界を滅ぼすのが終末少女。であるならば、生命体は保護するべき……であろうか。

 まあ、元日本人な僕の倫理観にはありがたいと言える。むやみやたらに生き物を殲滅するのはどうかと思っていた。


「ルナ様。あの……わたしがたおしてこようか?」


 かわいく上目遣いでちょっとしたおねだりをするように――でも、内容は物騒だ。踏み潰してこようか、とそう言っている。

 その生命体を一人残らず消してしまおうか、と。


「それはいいよ。……どうしたの、アリス」


 でも、ま。近づいていたから殺しますというのはどうもね。それに、可憐なアリスにそんなことをしてほしくない。もちろん、他の子たちにも。視線を向けると視線を明後日のほうへやりだす。


「どう……? どうもしてないよ」


 少し震えている。小動物のようなかわいらしさがあるけれど、やはり笑顔のほうがかわいいと思う。だから。


「なら、こっちへおいで」

「……おこって、ない?」


「ないよ。……さっきはごめんね、もう僕は大丈夫だから」

「よかった」


 ととと、とちょこちょこと走ってきて、膝の上にのった。


「さて、反応を詳しく見てみようか」


 三人団子っぽくなった。コロナの膝の上に僕がいて、僕の膝の上にアリスがいる。そしてプレイアデスが寂しくなったのか、僕にしがみついた。

 ……腕が使いにくい。何というか、これは――おしくらまんじゅうかなにか?


「表示を生命反応の探査から外部カメラに変更。反応があった場所を拡大表示」


 声を使う。まあ、脳波でもできるけどやりにくいし。そして腕はアリスとプレイアデスに捕まっている。

 映像はというとやはり山に生える木々が見えるのみ。……いや。


「何かが動いている。これは――人か」

「みどりいろのふく、きてる」


「迷彩服かね。……軍隊か、それに近いものか」

「だが、魔力反応はない。無視していいんじゃないか。何かしらの力を持っているようには見えんぞ。ただのアリだな」


「さて、それはどうかな。魔力探査、感度を上げて生命反応があった場所を探査」


 モニターに約20ほどの表示が現れた。そいつらは反応が小さすぎて見えなかっただけだ。精査しなければ隠れてしまうほどに弱弱しい。

 終末少女にとってはなぜそれで生きていられるのかと思うほどに、それは脆い。


「そういうことか」


 この世界の住民はどうやらとても弱いらしい。

 一概には言えないが、しかしこの世界とてユグドラシルの世界の一枝のはず。ならば、基本的に魔力を利用しているに違いない。

 終末少女の知らない力を持っている、などということは考えられない。


「ルナ様。……きょうみがあるの? これに」

「人だよ。たぶん、ね」


「うん、わたしたちとはちがう……ね。これ、なに?」

「それは僕にもわからない。けれど――きっと、彼らは『可能性』を持っている。生きているということはそういうことだと思うから。だから、僕は会ってみたいと思う。滅ぼしていいような存在だとは思わない」


「……そう、なの。ふぅん」


 アリスはじっと動く人影を見る。


「では、皆を集めようか。僕が”こう”なってから会っていない子もいるけれど――その子たちはどうしてるかな?」


 ちょっと前までは警戒していたけど、かわいい子ばかりだから心配する必要はないと思い直した。皆、僕の可愛い娘だ。リーダーなのだから、そう己惚れてもよいだろう。

 むしろ、ここで仲間はずれにする方が悪いことになるよねと思う。でも表情に出すことはしない。うん、始めから信頼しているよ、みたいな感じでいった方がいいよね。


「いつも通りだの。……ああ、そう言えば。ティターニアとディラックは船内を駆け回って遊んでおったのう」


 かわいいものだね。うん、あの二人はタイプが似ているし、きっと仲がいいんだろう。


「うむ。かの堕天使、悪魔、魔法使いも夜の饗宴をむさぼっていた。怠惰という大罪の宴をな」


 つまりは寝てたのか。あのリリム、フェルミ、ザインの三人は。まあ、無限の時間の過ごし方は好きにすればいい。

 僕は彼女たちに働けと強制しない。その必要があるなら、僕が代わりにやればいいだけだ。


「ミラは……いつも通りだよ」


 そのいつもどおりは知らないのだけど。まあ、部屋には居るか。キャラストーリーだとこっちを純粋に慕ってくれる幼女だったはず。

 アルカナみたいな変態ではないといいな、とも思う。


「で、ケテルは?」


 終末少女は僕を含めて12人。モデル:天使のあの子。まあ、天使と言っても性格はいわゆる委員長だけど。

 曲がったこと――というか、予定に合わないことが大嫌いな子だった。ふと、アリスに目を向ける。


「……」


 目をそらした。知らないらしい。


「コロナ? プレイアデス?」

「知らん」


「我が魔眼は見えざるモノを見るに能わず。千里を見通すと言われる魔眼を、我は持っていない」


 つまりは見てないから知らない、と。


「あの子、あまり他の子とあまり関わりがなかったり?」


 ぼっちか。リアルの僕と同じく。と得心する。

 親近感が湧いちゃったけど、別に以前の僕はあの子のように近づきがたいレベルで……どころかそこそこレベルのまじめさも持ち合わせていなかったんだよね。


「うん。いつも、うるさい」


 アリスが端的に彼女への感想を口にする。ひどい評価だ。


「そ。でも、みんな仲良くね?」

「うん」


 アリスは素直にうなづいて、他の二人は苦笑した。




「さて、集まってもらえたね」


 とりあえず図書館に皆を集めた。いつも、クエストなどではいつもそうしていたみたいだから。それに、ここなら装備の入れ替えが容易に行える。本体がここにあるだけあって、基本的にここで何でもできる。

 この『箱舟』に艦橋……センタールームなんてないけど、そう呼ぶに足るものがこれなのだろう。


「レーダーがこちらに向かってくる人らしきものを検知した。進路からして……この船に向かっている」


 来てくれた子たちを見渡すと――議題に興味を示す子がいないように見える。

 僕の言うことには従うけど、人間には興味がないといった感じだ。なんか、すごい熱い視線で僕を見ている子がいるんだけど。

 ……あれはミラか。アリスのロリ仲間。そのアリスは、僕の横で低くうなりながらミラをけん制している。よし、見なかったことにしよう。


「僕は彼らと接触してみようと思う」


 実を言うと興味本位だ。しかし、必要なことでもあるよね。 

 この世界を滅ぼすことはできるけど、そんな使命はない。終末少女の使命は腐った枝の後片付けであり、この世界が悪いものかどうか見極めるのはそれとは別のことだ。

 そして、そうだったとして。しかしこの”終わっていない世界”を滅ぼすのは僕らの仕事ではない。まあ、心の中では生命がいなくなったら世界ごと消し飛ばそうと自然に思える限り、僕は終末少女なのだろうが。……人間ではなく。


「ルナ様、いくならわたしが」


 はい、とアリスがちょこんと手を挙げる。小学生みたいでかわいい、なんて思うけど――僕は冒険したいお年頃なのです。

 僕のこの外観なら我儘を言ってもかわいいから許されると思う。


「お前に手間を取らせるのもな、アリス。私が行くぞ。万全を期すならば身体能力の高いものがいいだろう。あれらが脅威とは露ほども思わんが」


 コロナが自信満々に言い放った。ふんす、と気合を入れるさまは実に愛らしい。


「……いや、僕が」


 行きたいんだけど、と言いかけて躊躇する。この子たちを連れていくにしても部下を引き連れた魔王ロールはさすがに難しいものがある。役者レベル1だし。

 いや、そんなものシステム的に存在しないけど。


「ルナ様、だめ」


 アリスにじっと見つめられると何も言えなくなる。


「……むぅ」


 じゃあ、どうしようかな。ただ見に行くだけのつもりだったんだけど。と少し考える。

 この人間共ははたかが山なんかを歩いて進んでいる。その意味するところはこの程度の起伏を飛び越えるだけの脚力がないということ。

 ……終末少女ならば、文字通りに”跳び”越えられる。ただの雑魚だ。


「もし彼らが変なものを持っていたとして、僕らがどうにかされるようなことにはならないと思うけど――それでも、船に上げるのはねぇ」


 一応迎賓館もある。そこは客をもてなすことをテーマにして作った階層だ。

 いや、ホテルとかその他を配置しただけだから内装なんて知らんけど。そこを使えば客人へのもてなしはなんとでもなる。

 けれど、引きこもりとしてはあまり見知らぬ他人を家に上げたくない信条があるのもまた事実。


「ならば、潰すか?」

「物騒だね、コロナ。そういうのはいいよ。どうせ、放っとけばここまで上がってこれないでしょ」


 なんせ、この船浮いてるし。


「運命――果たして、彼らにそれが残っているのか。風は吹いた。彼らはここに来た。交錯は今。もはや動き出した運命は止まらない。しかして、喰われて消える儚き可能性ならば、それもまたよしとせねばなるまい」


 中二病幼女が絶好調。しかし、運命って言葉好きだね。


「可能性、ね。彼らがそれを持っている確信があるのかな? プレイアデス」

「否。しかし彼らは”認識”を得た。我らが終末を運ぶ船を見た、見てしまった。そして、僕たちはこの世界には彼らがいたと認識した。ただそれだけだ。それだけだが――運命が動き出すのに必要な要因(ファクター)はそれのみだ」


 知った以上は無視できない、か。難儀だね。確かに放置ではい知りません、なんて気には全くなれない。これも”知ったがゆえ”であるならば。

 確かに知恵の実を喰らった知恵ある生命は原罪を持つのだろう。


「確かに気になるね。ここで隠れてやり過ごすのはなしとしようか」

「ルナ様がいくの、だめ」


「やれやれ、なら連れてきてもらうしかないかな」


 よく考えたら、何かがあっても掃除するのは僕じゃなかった。やるのはどうせ自動で動く魔導人形だ。なら、少しばかり汚れても構わない。

 どうせ、何があっても数時間後には箱舟に備え付けられた機能が跡形もなくきれいにしてくれる。汚れも、破壊も、外より持ち込まれたものでさえ。


「それなら、行ってもらうのはアルカナとプレイアデスかな」

「なぜか聞いても?」


「殺して終わりなら君に行ってもらってもよかったんだけどね、コロナ。でも、あまり敵対行動はとってほしくないから――何か魔術的な攻撃を仕掛けられたら攻撃してもいいけど、それ以外なら友好的にしていてね? これは僕からのお願い」


 それならこの子たちが適任でしょ、と笑う。

 両方とも魔術のエキスパートだ。それも理論立てて大魔術を組み上げるタイプである。代わりに身体能力が低いけど、そこはどうとでもなるだろう。

 大体レベル100の魔法使いがレベル1の戦士と魔法なしで殴り合ったとして、勝つのは魔法使いと相場が決まっているのだ。


「ふむふむ。つまり、攻撃されても手を出すなと? 確かに魔力の流れを見落とすほど耄碌してはいまいが、なぁ」


 アルカナがやれやれ、と首を振る。さも恩着せがましそうに言って、ちらりとプレイアデスをうかがう。


「その指令、承った。我が身体――塵と化すまであなたの命令を遂行しよう」


 一方で、彼女は嬉しそうに頷いた。任務そのものが褒美とまで言い出しそうな気配だ。


「いや、命令は自分の身を傷つかせないことだからね。何か危険を感じたら戻ってくること」


 僕はこの子たちに怪我なんてしてほしくないんだ。たとえ、それが何の意味もないものだとしても。回復も、蘇生ですら自在であっても許せないことだから。


「……逃げ帰れ、と? このわしに」

「嫌かな?」


「そうでもない。ご主人の頼みならな」


 アルカナがやれやれ、とため息をついた。少しうれしそうに見えるのは気のせいかな。


「じゃ、お願い☆」


 星を付ける勢いでウインクしてあげた。


「……ふおっ」


 鼻血を噴出して沈んだ。なぜだ。


「では、終焉つかさどりし姫君よ。この――“汗吸い蝙蝠”を伴って貴殿の望みを果たすとしよう。報酬は一輪の花で構わんよ」


 アルカナの首根っこをつかんで、優雅に一礼すると消えた。……ところで、一輪の花ってなんだろう。この場合は比喩だと思うのだけど。

 というか、あの子もわかってなさそうな気がしたけど、首根っこつかまれながらもニヤリと笑っていた限りアルカナはわかってたんだろうな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ