プロローグ
今、一つのゲームが終了しようとしていた。
『終末少女online』
「あなたは終末少女を率い、遍く平行世界を内包する世界樹。その不要な枝葉――廃棄世界を滅ぼしてください」
無数の世界は世界樹によって内包されている。多くの世界には人間が住み、可能性を開拓している。一方で、無窮の時が過ぎ去るとあらゆる生命体が滅んだ廃棄世界が生まれた。そこはあらゆる生命が死滅した後日譚、超大型の魔物が跋扈する死の世界。それはやがて他の正常な世界をも侵し始める。ならば、腐った枝葉は切除しなければならない。
あなたに付き従う11人の終末少女を率いて世界を滅ぼす本格派RPG。新しいコスチュームを入手して、様々な技を覚えさせてアビリティアップ。SDキャラが迫力の超ド級大規模バトル。
――あなたも早く世界を滅ぼしましょう。
そのゲームはオーソドックスかつグラもそこそこ綺麗で。人気はお世辞にも大盛況とは言えなかったけれど、人もそこそこいたオンラインゲーム『終末少女online』だ。設定だけは壮大で、そこに惹かれたのだ。大陸並みに大きな敵を少女がなぎ倒す設定はけっこうウケていた。
キャラは11人。装備品扱いの魔物が百種類以上に、イベントごとに手に入る様々な服。主にそれを入れ替えてスキルを付け、レベルを上げてレイドボスを殴るという仕様だった。オーソドックスといえば聞こえはいいけど、それはありふれたゲームシステムでしかなかった。
それでも、僕は楽しんでいたものだが――それも今日で終わりを迎える。逃れ得ないサービス終了。今は名残惜しくも何もせずただモニターを眺めているというわけだ。
さて、今日が終わるまであと10秒。9、8……
「な? ……あ――」
急激な眠気が襲ってきた。これで、まず疑うのは病気だろう。というか、今まで眠気のかけらもないのにここまで眠くなるなんて、かなりの重病ではないかと疑ってしまう。
というか、一人暮らしだからこのまま死ぬんじゃなどとまで不安がよぎり――
「やべえ。死ぬ……」
文字通りの死ぬ気で眠気にあらがって……耐えきれない。根性で起きねば、などと思っても。そもそも僕は根性なんて柄じゃな――
がくん、と――頭が落ちた。