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後書き


 と、言うわけで117話と15話、計132話にも及ぶ物語は終わりを迎えました。付き合ってくださった読者の皆さん、本当にありがとうございました。


 書き手としては最初と最後はプロット通りに進みました。中盤は出たとこ勝負で書いていたのでプロット自体がないと言う。ただ、この物語は0に収束させるつもりだったのに生き残りが出てしまいましたね。なんでルナは最後にあの6人を監禁しなかったのでしょう? 最後の最期でキャラが勝手に動き出しました。

 それでも彼らの寿命は三日ですが。ルナはワールドブレイカーで彼らの死の要因を破壊しましたが、寿命を増設したわけではありません。あとは気力でどこまで崩壊を先延ばしにできるかですね。普通の人間だったら肉体限界を迎える前に死にますが、この世界の“生き残り”がそんなに素直な人間な訳がありませんし。

 ルナとともに行けば永遠の命を得られたのにもったいないことですね。その辺言ってなかったのは、単に口に出す機会がなかっただけだったり。実はルナは引っ込み思案です、アレで。


 あとはせっかく決めた終末少女の面子がアリスとアルカナ以外、空気になってしまったのが反省ですね。


 最初の関門となった“災厄”が最後まで最強の敵というのは、最初からあったコンセプトです。これはけっこううまくできていたかなと思います。実は中ボスのドラゴンは後付けだったりしました。けれど太陽は排煙に遮られ、空は龍に封鎖されるとスチームパンクらしい閉塞感の演出になりました。

 実は西欧大陸での連合と教国の対立という設定もあったのですが、これは最後の方で核(のような自爆兵器)を撃ち合って滅んだと言う結論しか出てきませんでしたね。しかも舞台となった王国の大陸、その左端に国を追われた亜人たちの村々があったのですが物語には絡んできませんでした。これ長くなりすぎるな、と思って本筋に関わらないストーリーを切った結果がこれです。

 さらに暗黒島、いきなり出てきたと思う人も多いでしょう。実は最初期に滅びの島として設定が作ってありました。魔物の名前は即興で決めましたが、魔物だったという設定自体はあったのです。けど伏線を張っておくべきだったな、と思いました。


 ――ルナが人類の無責任さにキレてラスボスをやるのは初めから決まっていました。だからこの物語の名前もラスボスロール(演技)でした。




 基本的に作中の人間は全員、自分勝手です。ルナは自分が見たい物語を作ろうとして「――力が欲しいか?」をやってただけで、貴族とかは自分の自尊心を満たしたいだけ、一般人は世界とかどうでもよくて誰かが自分の日常を守ってくれればそれでいいだけです。この世界では全員が「自分は(友達とか家族の)皆のために働いているのに、(関係ない他人の)皆はなぜ自分を助けてくれないのか。無責任だ」と常々思っています。

 ルナはちょっと別でも似たようなものでした。この主人公は「自分は誰かに助けられることはない、だから自分も誰かを助けない。自分以外を頼りにするほど馬鹿げたことはない」と思っています。ただ最終話近くだとアルカナの熱心なアプローチにほだされ、彼女に依存しかけていますが。

 皆が好き勝手やるだけ。けれど、その好き勝手やるだけがいい結果をもたらすこともある。皆が合理的であると言う条件付きですが、例えば市場は皆が好き勝手やると良くなることを“見えざる神の手”と呼びます。それは実際のところ、どうなんでしょうね。この物語では登場人物は皆好き勝手やって、それで世界は良くなりましたか? これが書いてきた中で答えを出したかったテーマでした。もっとも“さあ、どうだ”くらいしか言えなかったですが。




 ちなみにルナはギャルゲ的な意味での“落とす”ことは簡単だったりしました。ジェノサイドに痛い目に合わされた後からは男女どちらでも落とせます。その前だったら女性、それも女の子しか無理。ルナは依存するタイプだから、一度落とせば何でもしてくれます。浮気だって許しちゃう。強力な武器も防具もいくらだって貢いでくれるでしょう。

 ただし、ルナを落とすときにはアリスとアルカナの壮絶な嫌がらせが来ますがね。手加減が分からないから肉体的には何もしなくても、精神は容赦なく追い詰めてくるから、それをどうするのかがカギだったり。

 結局はルナを落とそうとした人は誰もいなかったわけですが。アルカナは本気で狙ってましたが、終末少女なので除外。そもそもアリスもアルカナもできるならこの世界なんて滅ぼしてしまいたかったり。だってあるとルナとの時間が盗られるから。でもやったら怒られなくても、ルナが本気で泣いちゃうからやらない。



 実は物語の最期でも、この二人はガッツポーズしてました。レーベも九竺一行も、箱舟に来るのなんて望んでなかったけどルナの言葉だから逆らわなかっただけ。自主的にどっか行ってくれてうれしくて仕方ない。

 けっこう象徴的なできごとだったりします。なんて言っても物語の最期なので。

 彼らは元の世界へ帰ったけど、ルナは何をしてでも元の世界になんて帰りたくなかった。この世界に比べれば、ルナが居た現代なんて楽園だったのにこの違い。結局ルナは人間関係と言う意味では、100話以上あってもなにも築けなかった。


 私は引きこもりのニートが異世界に行って人と助け合って誰かを救うような物語を見ると違和感を覚えます。素人でもレベル100がレベル10を叩き潰せるのはそういう世界観だからでも(というか、素人でレベル100が成立するのもですが)、人間関係を築くのはまた別だと思います。まあ、人間関係なんて顔と雰囲気が全てで転生したら変わるやつじゃんと言われれば、そうなのでしょうが。

 だからルナには何も残りませんでした。はじめから与えられた終末少女は彼女のそばにいますが、この世界で絆を紡ぐことはできませんでした。これがこの物語の結末。変化しても成長することはない悪役のストーリー。



 これから、この世界ではいくつもの物語が生まれるのでしょう。レーベも、光明も“生きて”はいます。普通に下級魔物に喰い殺されるようなステータスになっていますが、人間それだけではないでしょう。実績とかそう言うのが重要です、“今”できなくてもあるのとないのとでは大きな断絶があります。きっと、英雄“だった”彼ら、彼女たちは何かを成し遂げるでしょう。

 そして誰もが自分や家族、仲間のために生きあがくでしょう。何も考えず文句を言うばかりだったモブの登場人物たちも、それは変わりません。あるいはそれが未来につながるのかも。それとも個々の抵抗など虚しく、殺してもまたいつか復活する魔物に順当に食いつぶされてしまうのかは誰にもわかりません。というか、そこを決定する気は私にはありません。

 けれど、語られた物語の中で人間が生き残るだけの“可能性”は掴まれた。5分5分ほど状況は良くなくとも、9分9厘滅亡するだけの未来ではない。これから先は作者すら想定しない、ただの“可能性”。

 文明は完全に滅びました。作り手は全員戦争の犠牲者になりました。残った都市はありますが、食いつぶしていくしかない。今生きている人間全員に食料を与えようと思えば、夜明け団が遺した大量の保存食があっても三年が限界。

 十年後はどうなっているでしょうか。機関で育てる種はもう育たないから、アワとかヒエの雑草を主食に? それとも、他のナニカを見つけるか。家族を飢えさせないために残った食料を奪う人も出てくるでしょう。

 

 あなたは生存と滅亡、どちらだと思いますか?




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[良い点] 夜明け団かっこいかった
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