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清洲会議3

 織田家の家督を継ぐことになった三法師君との正式な拝謁の儀が行われることになった。


 清洲城の大広間。

 柴田勝家、丹羽長秀をはじめとする居並ぶ織田家の将たち。

 皆々、真剣な面持ちで着座し、その時を待っている。


 障子の向こうの廊下から、何者かの足音が近づいてきた。

 視線を向けると、障子に映るのは女性の影。

 三法師は三歳だけに、自分一人ではなく、誰かが付き添っているらしい。


 ゆっくりと障子が開いていく。

 三法師の登場を感じ取った将たちが平伏していく。


 俺も頭をさげようとした時、視線の片隅に映っている三法師を抱く女性がねねである事に気付いた。


 一瞬、目がねねにロックオンする。

 しずしずと三法師を抱いたまま部屋の中に進んできて、一段高いところに上がった。


 ねねに見下ろされる俺たち。

 武将たちの多くはすでに平伏しているが、俺と勝家たちなど数人は平伏していなかった。

 丹羽と池田の表情にも、驚きが浮かんでいる。


 この状態。

 ある意味、天下は私のものよとねねが俺たちに言っているようじゃないか。


 その事を感じ取っているのか、後姿の柴田の背中が怒りを抑えきれずぷるぷると震えている。


 俺も丹羽も池田も遅れながらも、ねねに平伏した。

 していないのは柴田だけである。

 柴田としてはしたくないはずだ。


 どうする? ねね。


 頭を下げながら、そう思っている俺に、ねねの大きな声が届いた。

 本当に大きかったのか、それとも今のねねのオーラがそう感じさせたのかは分からないが。



「三法師君ぞ」


 少しだけ頭を上げ、上目遣いにして柴田に目をやると、ぷるぷる震えながらも平伏する姿がそこにあった。


 やるじゃないか。ねね。

 そう思わずにいられない。



「まるで、ねねが天下人のようじゃないか」


 サルが言うが、全くそのとおりだ。


「しかしじゃ。

 ねねに代わらなければ、あそこにいたのはお前だったんじゃないのか?」


 確かに大嫌いな柴田を俺の前で頭を下げさせられていたら、今よりも痛快だったかも知れない。

 が、柴田を平伏させるのがねねであっても、俺としては構わない。


 と言うか、柴田はこの時代の男である。

 ねねに平伏させられる事の方が、柴田にとっては屈辱かも知れない。

 そう思うと、この方が面白いと言えるだろう。



 三法師君のお披露目は俺的には無事に終了した訳だが、これからの織田家も安泰と安堵感を抱く武将たちに混じり、ねねに平伏させられ事を不満に思う者たちにとっては、大事件であった。


 その日、三法師君が家督を相続した祝宴が開かれることになっていたが、このままここにいると、柴田に殺されるからその祝宴に出ずに逃げると、ねねが言うので、今ひっそりと蜂須賀とねねの三人だけで城門に向かっている。



 近づく城門。

 それは固く閉じられていて、城の内側に二人の門番が立っていた。



「門を開けられよ」


 その蜂須賀の言葉に、門番は意外な言葉を返してきた。


「門を開ける事はできませぬ」

「開けなさい!

 羽柴筑前守秀吉ですよ」


 門番の返事にむかっと来たのか、一歩踏み出しながら強い口調で、ねねが門番に命じた。


「柴田様より、どなた様であろうとも、出入りを許してはならぬと命じられておりまする」


 門番は頑なだ。

 しかも、俺より柴田の命令に従うと言っている。



「うーむ」


 どうしたものかと、腕組みをしてみる。

 城壁を乗り越えると言う手もある。

 昔、ねねが幼かった頃、お尻を押し上げて、城壁を乗り越えさせてあげようかとした事もあったが、今のねねは大きいので無理である。


「いや、それ以上に、ねねがお尻を触らせてはくれんじゃろう」


と、サルが言う。

 そんな事、言われなくても分かっている。


「さて、ねね。

 この問題、どう解決するかじゃが」


 腕組して考えてみると、びびっと、答えが出た。

 しかも、その結論はねねの言葉と一致している。

 にんまりと顔がほころぶのを抑えながら、ねねに目を向け、自慢げな口調で話し始める。


「どうして、外に出られぬのかと言うと、城門を通れぬからじゃ。

 どうして、城門を通れぬかと言うと、城門が閉じられているからじゃ。

 どうして、城門が閉じられているかと言うと、門番が閉じておるからじゃ。

 どうして、門番が閉じているのかと言うと、命令を受けたからじゃ。

 どうして、命令を受けているのかと言うと、勝家が命じたからじゃ」


 そう。これが真の原因。

 この原因を排除すればいいのだ。



「ならば、勝家を斬ればいい!」


 どうだ、ねね。

 自慢げにねねに目を向けようとした瞬間、ねねに頭を引っ叩かれた。

予約更新しました。


ブックマーク入れて下さった方いたら、うれしいなあ。

と、思いながら、お礼言っておきます。

いると信じて。ありがとうございます。

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