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木上藤吉郎秀吉

今週もちょっと短めですけど、よろしくお願いします。

 叡山は一夜にして、灰塵に帰した。

 そして、信長は朝倉を滅ぼすと、ついに浅井を滅ぼし、俺は浅井の旧領の一部を任され、姓を変えろと信長に言われた。


 姓なんて俺の世界では結婚して相手の姓に変える事があるくらいであって、何もないのに変えるなんて事はないだけに、戸惑わずにいられない。


 横山城の板敷の広い部屋に座り込み、腕組みしながら、唸ってみる。



「うーん」

 この部屋にいるのは俺以外にはねね。


 ねねが何かアイデアを言ってくれるはず。

 そう思っているので、ついつい俺の頭の中の思考回路は本気を出さない。

 頭も左右に傾けてみるが、考えているふりだけ。

 それでも、何も言ってくれないねねに、催促してみる。



「どんな姓がよいかのう?」


 これで何かを言ってくれるはずと思っているのに、ねねまでもが首を傾げている。


「姓は色々あるからのう。

 女子おなごとしては迷っておるんじゃろう」

 頭の中でサルが言う。

 迷ってないで、ズバッと言ってくれ。


「ねね。どうしたものかのぅ?

 どんな姓がよいと」

「それは自分で考えた方がいいんじゃない」


 はい?

 ちょっと冷たくない?


「いや、体も許さぬ間じゃから、そんなものじゃろう」

 サルが言うが、無視、無視、無視。


「ねねぇぇぇ。

 全く、わしには分からんのじゃ」

 もう一度、ねねにすがってみる。


「そんな事、私にも分からないですよっ」

 そう言うと、ねねは立ち上がり、俺に背を向けた。


「ねねぇぇぇ」

 俺の呼びかけにも答えず、迷うことなく、部屋を出て行った。


 一人っきりの空間。

 どうやら、これは俺自身で決めるべきミッションと言う事かも知れない。

 仕方ないので、考え始めた。


 俺の元の姓と言うのも。

 しかし、それに下の名前が藤吉郎ではダサすぎ。

 元の世界で好きだった天使のようなあの子の姓。でも知らないし。


「どうする?」

 サルにたずねてみる。


「そうじゃのう。

 何か理由が欲しいのぅ。その姓にした」

「尊敬しているので、織田にしますっとかか?」

「信長様に殺されるぞ」


 それから、俺は自問自答とサルとの会話を続けた。

 夜もめっきり更けた頃、サルが言った。


「よいのが浮かんだぞ。

 理由もあるぞ。柴田や丹羽にあやかったと言う理由付きでな」

「柴田ぁぁ。

 却下」

 そう言って、サルの意見は即却下した。


 柴田は好きじゃない。

 ともかく、俺を見下している。


「いや、見下されても仕方ないと思うのじゃが」

 サルが言う。

 一理も二理ある気がするが、無視、無視、無視。


 知っている姓をア行から並べてみる。

 相田、青田、赤井、赤城……。

 木田、木下。木下は今の姓だし。木上。

 下から上。


 俺は頭の中で、左の手のひらの上を、右の拳で”ポン!”と叩いた。

 これだ。


 理由も出世したから、下から上に。

 思わず、自分のセンスににんまりしてしまう。


「くだらんのぅ。

 せっかく、姓を変えられると言うに、そんな姓かよ」

 サルが言うが無視、無視、無視。


 姓が決まった安堵感と脳を酷使した疲れから、俺はそのまま床に大の字になって寝ころぶと、いつの間に眠りについてしまった。




「藤吉郎殿。朝でございますよ」

 浅い眠りの中、俺の耳にねねの言葉が届いた。


「うーん」

 目をこすりながら、体を起こし、辺りを見渡す。

 横山城の広間にねねと二人。


 辺りは明るく、小鳥たちのさえずりも聞こえて来る。

 俺は昨日、この部屋でそのまま眠ってしまったのだった。


「ねねか」

「おはよう」

「おはよう」

「で、決まったの?」

「おうよ。

 もうこれしかあるまい」

「で?」


 俺のアイデアに、ねねは驚くに違いない。

 そんな思いに顔をほころばせながら言う。


「これまでが木下じゃったから、そこから格が上がって木上じゃ」

 どうよ。ちょっと胸をそらしてしまう。


「マジで?」

「ああ、マジじゃ。

 木上藤吉郎秀吉。

 どうじゃ、いい名じゃろ?」

 自信ありげな俺に、ねねはがっかり感を浮かべ大きなため息をついた。


「ふぅぅぅぅぅ。

 木下を変えろと言われて、木上じゃねぇ」

 全くもって、全面否定された気分だ。

ちょっと不在で、連続予約更新です。

元の世界の姓の話がちらちらと出てきましたけど、それは不明のままです。

それはこの作品の第3部と関係するので、明かせないんです。


ブックマーク入れて下さった方いたら、うれしいなあ。

と、思いながら、お礼言っておきます。

いると信じて。ありがとうございます。

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