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幻想譚   作者: 国分
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戦闘軍団3◇

あの戦いでまず、名を挙げられる英雄。


ジルクベルト・ハシュナー


魔物の王を倒した救済の英雄であり、我々の希望だ。


アイルティル・ラウード・ティリアリア


ティリアリアの現国王であり、今も世界の為に尽力を注いでいる。


しかし、忘れてはならない英雄が二人。


グラハム・ダイン


彼は戦闘軍団の筆頭に立ち、己の剣の腕のみで魔物を退治する。


リエラ・ニーベス


英雄の中で唯一の女性である彼女は、世界一の古代魔法の保有数を持つ。




そして、何と奇妙な事に。

この四人は十年前の『天魔復活』よりも前から、仲間として旅をしていたのだ。



~『天魔復活』 第三章~

「じゃぁ、シモーヌ嬢ちゃんはグラハムさんから何処まで聞いたか、教えて貰って良いすか?」


どうやら、この世界での晴香の名前はシモーヌで確定してしまったらしい。他の人達の好奇心溢れた視線を、グラハムが威圧と睨みで黙殺する中でサーウェイがへらりと笑った。



危険な集団です。



「っ…商人が国と一緒に立ち上げた魔物…と、戦う?」


咄嗟に口から滑り落ちそうになった言葉を慌てて飲み込み、晴香は何とか教えられた内容を口にする。それを聞いてグラハムが満足そうに深く頷いて、サーウェイににやりと笑った。


「ちゃんと教えてるだろ」

「設立だけじゃないすか。それに、全然足りないっす」


殺人も含む、と言えば良かったらしい。



サーウェイが大袈裟に大きく息を吐き出して肩を下げる姿に、グラハムが口をへの字に曲げて鼻を鳴らす。


「別に他の所を知らなくても、問題は無いだろう」

「まぁ…そうすけど」

「いえ、教えて下さい。すみません、どうか教えては頂けないでしょうか?」



グラハムの言葉に納得しそうになったサーウェイに、晴香は即座に右手を上げて阻止を結構。それに対してサーウェイも「そうっすね」と実に軽く頷きながら話を続けた。


「まぁ、設立当初はそれで大丈夫だったんすよ。魔物も物凄い勢いで襲ってくるから、入団しても直ぐに死んじまって」

「…それは…」

「まぁ、そこは簡単に済ませて。魔物も数年も戦い続けたら学んだのか、狩ったからかは知らねぇすが…それなりに、落ちついたら面倒が表に出てきちまいやがって」

「…はい」


忌々しいと顔を歪めたサーウェイに、晴香も真剣な表情で耳を傾ける。話に興味が無いだろうグラハムは、ペンを片手に何かを考えながら首を捻っている。


「人間同士が、騒ぎだしちまったんすよ」

「人間が?」

「そうっす。一番に滅ぼされたダラルの騎士や貴族。従属していた国の奴等に、その市民や…あげくにゃ、ティリアリアの奴等も」

「…えっと…」

「あれっすよ。何もかも違う考えの奴等を英雄王やグラハムさん達でも、一つには出来なかったんす」

「グラハムさんも?」


突然出てきた名前に晴香が瞳を瞬かせると、サーウェイが誇らし気に笑みを浮かべて。


「そうっす。グラハムさんも光の英雄や英雄王の仲間で、グラハムさんは『魔狩りの英雄』で有名なんすよ?」

「うるせぇ、俺はテメェ等よりも魔物と戦い慣れてるだけだ」


サーウェイに不快だと顔をしかめたグラハムだが、晴香の目を見て照れた様子で頬を指で掻く。

実際に晴香が彼に送った目線は、尊敬ではなく「あぁ、だから男達を迅速に半死に出来たのか」という納得の眼差しではあったのだが。


「魔物は数はまだまだ多いが、それよりも身内で殺し合ったら…それこそ、人間が魔物の餌になっちまう」

「…だから?」


嫌な予感がひしひしと感じるが、晴香が先を促す。


「やべぇのとかは、潰して軍団を分けたって訳で、少し落ち着きやした」

「わぁ、潰してなんて豪快ですねぇ」



深くは聞くものか。



「ずっと口で言っても聞かねぇ奴等だから、荒治療が丁度良いんすよ」


サーウェイのいう『荒治療』と晴香の知る『荒治療』は規模が違うだろう。肩を竦める彼に、晴香は口から言葉が飛び出さない様に噛み締める。


「それで、大まかに今は四つの『戦闘軍団』が存在してるんすよね…中にはそこでも細かいらしいんすが」

「あ、何かもう…その四つだけを簡単にお願いします」

「シモーヌ嬢ちゃんは、賢いすね」

変に首を突っ込んで、ギロチンにされたくないだけです。



感心しているサーウェイに晴香は苦笑しながらも、油断をした。そう、後は残されたのは軍団の簡単な説明だけだと。


「じゃぁ、まずは『魔を孕む杖(ニグ・ナツィ)』は、長居をしたら殺されるっす。『魔を払う盾(ニーチェ・ノイラ)』だと、まずは近づいたら斬り殺されちまうから、行かない方が良いんすよね。もう一つが『魔を奪う杯(ニオ・カンツェ)』があるんすが、奴等にゃ上の立場をし続けなきゃ内蔵から爪の欠片まで奪われちまいやすから…」





簡単し過ぎるのも、難易度が高かった。

どれも友好的な軍団ではない。

これでは闇組織では…。

そうか、闇組織だったのか。

顔を真っ青にした晴香にサーウェイが慌てて。


「大丈夫す!魔を穿つ剣はグラハムさんが支配してるんすから、魔物とうっかり仲間に殺されなかったら一番気楽な軍団なんすから!」



そんなに、大差を感じられない不思議。



自信満々に晴香に告げたサーウェイに、彼女も大きく頷いて返した。


「とりあえず、危険なのが解りました」


深くを聞かずに、晴香が「軍団、危険」と頭に刻む隣で、グラハムも同じく頷いた。



んー…?


なぁ、頼むから


別に構わないけど、どうして?


そりゃぁ、強くなりたいんだ


君は強い、だからこそ訊ねているんだ


強さを求めるのに…理由はいるのか?


あぁ、成る程。

確かに理由はいらないね。


頼めるか?


良いよ、だけど一つ条件だ。


…何だよ?


簡単な試験をしよう。




~力を求めた男の話~

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