僕はキャンディー
我が家の猫をモデルに書きました。
僕の名前はキャンディー。
まだ冬が来る前の秋空。茶色いダンボールの中に、2人の兄弟達と一緒に捨てられていた、白い子猫だ。
僕がまだ今より小さい赤ちゃんの頃、兄弟達とは離れ離れになった。
「可愛いい!」
と言った1人の人間に、僕等を拾った人間が、僕だけを引き渡したんだ。
それから僕は、山本家の一員となったんだけど・・・。
僕は兄弟達以外、自分と同じ『猫』を見た事がなかった。
当然だ。僕がまだ本当に産まれたばかりの頃にもう、秋空の下、ダンボールの中に捨てられてしまっていたからね。
だけど山本家には、バニラって言うおばあちゃん猫が居たんだ。
初めて見る兄弟達以外の猫に、僕は驚いた!!
僕とは毛の色が違って、茶色と黒と白のまだら模様だった。何より初めて見る大人の猫だ。
僕のお母さんも大人の猫だったけど、余りに小さすぎたせいか、もう遠い昔の事の様で、よく覚えてはいない。
僕はバニラおばあちゃんに遊んで欲しくて、よくじゃれようとしていた。
「遊んで、遊んで!!」
と近づくと、バニラおばあちゃんは何故かいつも逃げていった。そして山本家の女ボスの人間、『お母さん』にいつも怒られていたんだ。
どうして怒られるのか、不思議で不思議で仕方なかった。
僕はいつも怒られてばかりだ。
爪を壁で研いだら怒られて、ジャンブを高くして物を落としたら怒られて、僕を「可愛い!!」と言って譲り受けた人間、つまりは女ボスお母さんの子供の部屋に入ったら怒られて・・・。
どうしていつもいつも怒られるんだろう?
山本家の人間が誰も居ない事を見計らって、バニラおばあちゃんに、又「遊んで!!」って飛びついたんだけど、そうしたら、今度はバニラおばあちゃんに怒られてしまったよ。
「あっちへ行け!!来るな!!」
ってね。
山本家の人間にも、バニラおばあちゃんにも怒られてばかりの僕。
ある日、家の窓が開いていたんだ。だからこっそり、窓から外へと出てみた。
初めての外の世界!!
初めて見る景色に、初めて見る物に、驚いてばかりだった!!
と、目の前を鉄の塊が、物凄いスピードで走って行くのを見かけたんだ。僕は気になって、鉄の塊に近づこうとした。
猛スピードで走って来る鉄の塊。僕が近づこうとした瞬間。
「こらっ!!」
って、物凄い怒鳴り声が聞こえた。
僕は驚いて、思わず足が止まってしまったよ!!
声のした方を見てみると、そこにはバニラおばあちゃんの姿が!!
それからバニラおばあちゃんの方から、初めて僕に近づいて来てくれたんだけど、バニラおばあちゃんは、物凄く怖い顔をしながら、怒って来たんだ。
「何バカな事やってるんだ!!」
てね。
僕は、又怒られた・・・。何をやっても怒られるんだ・・・。って思って、ちょっとしょんぼりしていた。そうしたら、バニラおばあちゃんは少し穏やかな表情を浮かべて言ったんだ。
「あの鉄の塊は、『車』と言って、当たると死んでしまうとても危険な物なんだよ。だから安易に近づくな。」
ってね。
その時僕は初めて、『車』って物が危険な物だと知ったんだ。
バニラおばあちゃんは、僕が車に当たらない様に、怒ったんだ。
車の当たってしまったら、僕は死んでしまうから。
又怒られてしまった一日だったけど、僕は同じ『怒られる』でも、悪さをして怒られる事と、心配してくれて怒られる事の、二種類があるんだと、知った日だった。