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幼馴染と体操服

作者: 水無月 汐璃

どうも、初めまして。ウェリアと申します。

今現在、小説シナリオを自己流に勉強しつつ、せっせと頑張っています。今回、とある場所でSSを募集し、『幼馴染』と『体操服』という単語を貰い、大体2時間程度で書き起こしました。

ですので、一部、かなり省略していたり、適当になっていますので、ご了承ください。

「………………」

とある夏の日、日が傾き赤く染まる一つの部屋の中。俺はただ一人黙々と部屋の電球を交換する作業をしていた。俺の名は夕那岐ゆうなぎ 神斗かみと、ごく普通の取り得も何も無い学生だ。で、そんな俺が何故夕焼けが差し込む部屋で一人で黙々とこんな作業をしているかと言うと……

『おぉ、神斗。良い所に来たな!これ、頼んだぞ』

『は……?』

『部屋の電球替え、代わりにやっといてくれ。先生には俺が言っとくから!!』

『ちょ、おいこら待て!!俺はやるとは――』

『じゃあな〜神斗』

とまぁ……どこぞの馬鹿友が無責任にも俺に押し付けたわけだ。あいつ明日あったら覚えてろよ。とそんな風に思いつつも、黙々と作業をする俺も大概お人好しだとは思う。

「…………これで変な噂立てられたらあの馬鹿に丸投げしてやる」

別に作業する事自体は問題は無い(実際は文句とか多々あるが……)。ただ問題なのはここが『女子更衣室』という事だ。幸い?部活等は休みで今日は使用されない事にはなってるらしいが、もしも事情を知らない奴がこの部屋に入って来たら……ややこしい事になるのは目に見えている。

(入ってきたのが男だったら……それはそれでヤバイな)

…………変な考えを起こすのは止めよう。というか、下手したら俺も同類に見らかねないしな。

「よし……終了っと。とっとと片付けして帰るとしますか」

先生に連絡――はあの馬鹿がしてるしな。変な問題が起こる前にとっとと退散するのが吉だ。そう思って、電球を替える為に立てていた脚立から降りようとした時――

「げ……やばっ!?」

気が付いた時には既に遅かった。降り方がまずかったのか、元々支えが無くバランスが悪かったのかは知らないが、脚立が片側に重心を移動させていった。

「ぐっ……つぅぅ……!!」

それを理解した時には、部屋全体を飛び越すような音を立て、脚立と共に床に倒れ伏せていた。

「くっそ……厄日だ」

半分だけ圧し掛かっている脚立を押し退けて毒付く。いきなり厄介な仕事押し付けられた上に怪我とか洒落になってない……幸い怪我にはならなかったけど、どちらにせよ自由な放課後の時間を取られる事を余儀なくされ、痛い目に合った時点で十分に厄日だ。

「…………あ」

身体を起こすと、ふとロッカーの扉が一つだけ開いていた。恐らく脚立が倒れた衝撃で自然に開いたんだろう。そこからはそのロッカーであろう持ち主の物が、同じく衝撃の影響で流れ出てきていた。そこには体操服も混じっていて…………

(こ、こんな状況見られたら……弁解できねぇ!!)

そう思った瞬間、すぐさま、何事も無かった様にする為、片付けようとしたが、ピタリと動きが止まる。ロッカーの扉の内側の『寿々苗 桜』という名前が目に入ったから――『寿々すずなえ さくら、性格は明るく、健気な子。ロングストレートの髪をしていて、俺とは違い容姿もスタイルも最高に可愛い(と男子間では評判)……俺の幼馴染だ。桜とは物心付いた時には一緒に居た。家が隣という事もあって、一緒じゃなかった日は無いくらいだ――ただ、それも数ヶ月前までの話。最近では何故か避けられる――というよりも、俺が話しかけても適当に流されて、相手にされてない感じなのだ……って避けられてるか。理由なんて俺にはさっぱりだ……いや、無い事は無い。


数ヶ月前――…………

「ちょ、ちょっと……離して……!」

「良いじゃん、ちょっとくらい?別に暇なんでしょ?」

ある日の放課後、俺は偶然桜が男に絡まれているのを目撃した。男は桜の手や肩を触りながら、にやにやとしながらナンパをしていた。その状況を見て、酷く苛立ちが湧き上がった。桜は俺の私情を交えても、交えなくても、一般的に美人の部類に入る。だからこういう事は少なくは無い。いつも通りの普段ならば、適当に待ち合わせやら学校での部活関係のフリをして助けていた。だけどその時ばかりは違った――

「おい、何してんだ」

「あ……神斗!?」

「あぁ?何だおめーはよ?」

「人の彼女に手出ししてんじゃねーよ」

いつもならばそのまま知り合いの流れで適当に相手をあしらっていた。だけどその日は桜を背にして、庇う様に相手の前に立ち塞がって――あろう事か『彼女』と言ってしまった。

「え、かかかか……彼女……!?」

「あぁ?いきなり彼女といわれても信じると思ってんの?」

「お前の意志なんて知るか。桜は――大切な奴だ。手出しするなら容赦しねーぞ」

「ふざけた口聞いてんじゃねーぞ!!」

ナンパ男はそのまま殴り掛かって来た――が、俺は難なく受け止めて、間接を捻り上げる。元々運動は出来る方で、一時期はヤンチャして、本格的な拳の喧嘩をし続けていた物だから、ナンパ男の気合が入っていない拳など受け止めるのは容易だった。

「あでででででで!!」

「気が変わらない内に居なくなった方が身の為だぞ?」

「く……!!」

捻り上げた間接を緩めると、ナンパ男は腕を押さえながら一目散に消えて行く。その姿を見たら燃え上がるようにあった苛立ちも気付けば消えてしまっていた。

「あ、あの……あ、ありがと……神斗」

「別に。いつもの事だろ?というか桜も飽きないな……これだけこんな目に合ってたら一人で出掛けたり、帰ったりしないと思わないのかよ」

「むー……だって一人の方が楽だもん。それに神斗が居るし」

「お前な……俺はお前の子守役じゃねーんだぞ。そんなんだから未だに――」

「未だに?」

『彼氏出来ないんだぞ?』と喉元まで良いかけたが、グッと抑える。言ってしまえば、機嫌を損なって、元に戻るまで面倒な目に合うのは見えていた。

「別に何でもねーよ。ともかく帰るぞ。またナンパされたら面倒だし」

「あ、うん…………うん」

――………………


「…………あれが原因って訳じゃねーよな」

そもそも嫌われる発言をした覚えは無い。というかそんな要素が見当たらない――もしかしたら俺に迷惑掛けないようにと避けられてるのかもしれないが…………あぁいうのはいつもの事だし、考え辛いな。まさか『彼女』とか言った事気にしてるとか?

「いや、ないない、ねーよ」

桜に限って今更、俺に対してそんな事気にする奴じゃないだろ。はぁ、ともかく近い内に理由問いださないとな。とは思うが……取り合ってくれない現状を考えると難しいな。

「桜…………」

とは言うものの、ここ数ヶ月は俺もすっかり変だ。こう、日常だった一部がぽっかりと抜け落ちた感じがして――ずっと一緒だった奴が居なくなるのはやはり違和感しかない。あぁ、ダメだダメだ!考えてばかりいるとどうも変に思考が回ってしまう。早く片付けて――…………

(これ…………桜の、体操服……だよな)

片付けようと手に持った白い体操服に触れて、ふとそんな風に思ってしまった。手の中には布のサラサラとした感覚にプラスして、使い込まれた感じの質感が存在していた。

(な、何を考えてるんだ俺!?)

さっき転んだ時、頭でも打ったのか!?幼馴染の体操服握り締めて何考えてるんだ!!いや、幼馴染じゃなくても異性の服を握り締めて変な事を考えるとか変態だろ!!

(………………)

でも、これ……桜が着ているんだよな?桜が…………そう思うと気になってしかたなかった。そう、だからつい俺は幼馴染の体操服を顔に近づけて嗅いだ。女の子らしい甘い匂いと、汗の甘酸っぱい匂いもした。桜の匂いが五感を埋め尽くす。

「っ……な、何してんだ……俺」

頭の中で必死に自分を抑えようとする――だけど、身体は自らの意志とはかけ離れた場所に居るように動かず、抑制どころか、体操服に顔を埋めていた。そうすると、桜が傍に居るような感覚になる。体操服の上があるなら、下も大体セットなのは世の常識(なのかどうかは怪しいが)、ふと目を横にずらすと体操服の下の部分、所謂ブルマがロッカーから半分だけ出ていた。

「………………」

気付けば俺は幼馴染のブルマに手を伸ばしていた。幼馴染の大事な部分を包んでいると思うと、もう止まらなかった。そこは濃い女の子特有の匂いがして、夢中になっていた。

(ば、バカ…………お、俺は……!!)

ダメだダメだ!と思いつつも止められなかった。自分がここまで変態という嫌悪感よりも、欲求、征服感が勝っていた。何だか幼馴染である桜を汚してしまった気分で……それがより一層、俺の興奮を高ぶらせた。いつの間にか俺はあいつの体操服セットを腕に抱きながら、顔を埋める変態になっていた。だけど、自覚しながらも止めるという行動は出来なかった。まるで金縛りにあった様に身体は動かず、意識だけが止めろと警告を発していた。

(っ……これ以上はっ!!)

理性が完全に崩れ落ちる前に無理矢理意識を正常へと移行させにいく。これ以上進んでしまえば俺は……あいつにどんな顔をすれば良いのか分からなくなる。いや……もう既に分かっていないか。必死に意志で抵抗しながらも、隅では『後少し、もうちょっとだけ』と思ってしまっていた。

「っ!!!」

「え…………?」

部屋に響き渡った扉の音。それで一瞬に夢見心地の身体が正常になり、俺の意志と一つになる。だけどそれはあまりにも遅すぎた。

「…………な、何……してる……の?」

「っ、あ……こ、これは……その」

扉の向こうに立っていたのは、ここに来る筈も無い、既に帰った筈の桜だった。

「そのロッカー……私の、だよね?」

「………………ど、どうしてここに」

口から出たのはまともではない返答だった。

「体操服忘れたから……取りに帰って来たんだけど……どういう、こと?神斗…………」

「お、俺は……その、電球替え頼まれて……、終わった時に脚立がバランス崩して転げ落ちて……その、ロッカーが開いて――」

「それで、私の体操服に……顔、埋めて嗅いでたの?」

「……………………」

何も言い返せなかった。弁明する余地も無く、ハッキリと桜には見られてしまっている。

「神斗が……そんな事するなんて、思わなかった」

「っ………………」

桜の声は明らかに落胆と軽蔑が含まれていて、俺の心大きく抉り出された。俺がしてしまった事の最低さに今更ながらも後悔する。いや、後悔する事自体も最低だ。俺は……通報されてもおかしくない事をしてしまったんだ。それも望まずとは言え、自らの意志で――「ごめん!!」

考えるよりも早く、頭を床に擦り、土下座して謝った。謝って済む問題では無い……だけど、これも悲しき人間としての性だった。

「…………謝って済むと思ってるの?」

「…………思ってない」

「……………………神斗、最低」

「………………っ!!」

泣きそうだった。でもここで泣くのは筋違いにも程がある。本当に泣きたいのは桜の方だ。だから下唇を噛み締めて、耐える。

「…………許して貰えるとは思ってない。俺は……最低だ。最低で犯罪をしたんだ。だから何でもする」

「何でもって……それで良いと思ってるの!?」

「すまん……言い方が悪かった。何でも受け入れる。話しかけるなと言うなら、もう二度と話しかけない。消えてというなら、学校辞めて引っ越して一人暮らしもする。勿論、警察に通報しても、先生に言っても構わない」

「………………」

嘘偽りは無い。これはケジメだ。多くの信頼を裏切ってしまった、俺自身の行動に対する罰だ。自身と目先の欲望だけを優先してしまった、俺は…………もう何も言える筈がないから――。

「じゃあ…………もう金輪際……友達として付き合わないで」

「っ…………あ、あぁ……」

実質の絶縁宣言だった。いつも、優しく、怒る事の無かった桜が、冷たくそう言い放った言葉を聞いて、グルグルと身体の感覚が狂いだした。頭もハンマーで殴られた様な衝撃が走り、今にでも吐いてしまいたかった。

「…………顔上げて、立って」

「…………………」

言われたとおりに何も言わず、顔を上げて、立った。桜の顔はもう直視どころか、チラリとも見れなかった。

「目、瞑って」

「………………」

目を瞑る。そして次の瞬間には大きな乾いた音と衝撃が頬へと走る。想像していた通り、頬を引っ叩かれた。頬に熱い痛みが走るが、今となってはそんなのは痛みに入らなかった。自分自身の心と、桜への裏切りの痛みの方がよっぽど痛かった。叩かれた頬から手を離して、衝撃で横へ向いた顔を上げた瞬間――

「んっ…………」

「っ…………!?!??」

あまりの出来事に目を見開いた。その目の前には桜の顔がほぼ距離なくあり、唇が柔らかいもので覆われていた。

「なっ……なななな!何してんだ!!」

あまりの事に桜の肩を掴んで突き飛ばすように離す。

「バカ…………」

「っ!?」

桜は泣いていた。ただその顔は恥ずかしそうに笑いながら頬を夕日に負けず真っ赤に染めていた。俺は別の意味で頬が片方が真っ赤になっていた――とかいう現実逃避は止めて…………意味が分からない。何がどうなったらこうなるんだ!?ドッキリなのか?いや、俺が気絶でもしたか、あまりにもショックだから幻覚を見てるのか!?

「バカ……バカだよ」

「え、あ、ぅ……お、おぉ?」

やばい、あまりの展開に頭が付いていってない。言語機能に障害が発生している……誰か状況説明をメディイイイイイイイック!?

「ずっと……色々考えてた私、バカみたい……」

「ま、待て!桜!!お前……何したのか分かってるのかよ!?」

「うん…………キス――だよ?」

改めて桜の口からそう言われると、全身が発熱したかのように汗が吹き出てきた。

「そ、それは!!わ、分かってるけど……もう付き合わないでって言ったし、頬引っ叩いたし、そもそも俺は最低な事したんだぞ!?」

「だから……もう『友達』として付き合わないでって言ったもん」

「お前……も、もんって……って、それって……うぇあい!?」

気付いた瞬間、日本語がおかしくなった。そ、それってつまりさっきの行動と合わせるとそう言う事だよな?え?待って待って、理解できない。ちょっと何言ってるか分からない。

「神斗が……あんな事してたの見たら、もう抑えられないよ。ずっとずっと、我慢して、抑えてたのに」

「ちょっと言ってる意味分かってる!?俺は分からないよ!?」

「だって、私の体操服で、あぁ言う事してたのは……そう言うことでしょ!?」

「いや、どういうことだよ!?」

変態って事くらいしか分からないだろ!?最低な犯罪野郎だろ!?

「だ、だから…………わ、私の事、そう言う眼で…………ゴニョゴニョ」

「っ……そ、それは…………」

そう言う眼というのは性的とか女の子として見てるという意味だろう。正直、見てないと言えば嘘にはなる。でも桜とは幼馴染で……恋人というのは……あ、あれ?わ、分からなくなってきたぞ……?

「だ、だから!!も、もう神斗が好きって気持ち抑えられなく…………なったの」

「だ、だけど最低って…………それに頬引っ叩いただろ……」

「私ばっかり、変に悩ませて……神斗、全然悩んでないなんて、最低」

「は、はぁ!?」

ちょっと何言ってるか分からない!!さっきから何度も繰り返してるけど、こればかりは理解出来ない。あれなのか?女心って奴なのか!?

「最低じゃな……ズルい」

「っ…………!!」

頬を膨らませながら、上目遣いでズルイと言われて、心臓を鷲掴みされた感覚に襲われた。同時に初めて強く想った――桜が可愛いと。

「じゃ、じゃあ……頬叩いたのは……」

「ケジメ――神斗、よく言ってるから……それに、私も……付けたかったから」

「つまりは……そう言うことなのか?桜が避けてた理由って……ずっと、その……気持ち、抑える為だったのか?」

「だ、だって!!あの時の神斗見たら……どんどん大きくなって、このままじゃ、自分が自分じゃなくなりそうで……だ、だから……うぅ!!バカバカ!!」

羞恥心が限界に達したのか、桜は俺の胸に顔を埋めて、両手で肩をポカポカと何度も殴ってきた。その姿があまりにも可愛くて――だから抱きしめた。

「あっ…………」

「俺は……最低な事した男だぞ?勝手に桜の――」

「いいもん……神斗は……私の事、気になってたから、したんだよね?」

「ま、まぁ…………な」

その気になっての意味合いが俺と桜では違う気もするが……でも間違っては居ない。俺だって桜の体操服を見つけて、つい性的に気になったから、あんな事をしてしまったんだ。

(だ、だけどきっかけがあれってどうなんだ…………)

桜が突拍子も無い行動と発言の連続で逆に冷静になって来た今、ふと考えたら最低すぎるきっかけだよな……

「私……私、寿々苗 桜は夕那岐 神斗が好きです……ずっと、ずっと好きです」

それは告白だった。真っ直ぐに俺を見つめながら、腕の中で紡がれた言葉だった。

「……………………桜」

俺は――…………俺は答える資格はあるの――いや、関係ないか。恋愛に資格も糞もあるか。だけどケジメだけは付けないといけない。例え桜が良いと言っても、最低な犯罪をしてしまった自分は変えようも無い。

「…………さっきの事、先生に俺は言う」

「神斗…………!?」

「下手したら退学……、最高でも停学だろうな。復学しても噂で俺の評判は最悪になるだろうな…………そんな俺と付き合うとなったら桜、お前まで巻き添えを食らう。変に同情や誤解も招きかねな――」

「言っちゃダメ……!ケジメなら……私が取らせて上げる」

俺の言葉を言い切る前に桜がそれを遮った。

「神斗がそんな風に言われるくらいなら…………私がケジメ、取らせるもん。だから絶対に……幸せにして……それが神斗のケジメ」

「……………………バカやろ」

気付けば頬に雫が流れ出していた。あぁ、俺は本当に最低でバカだ。ずっとずっと、傍に居てくれた奴に『ありえない』という理由で逃げていた自分が本当に最低だ。そしてこんなに可愛くて良い奴に、最低な事をしてしまった自分が悔しくて、嫌すぎて。

「ね……返事、聞かせ――んっ……!?」

「………………………………」

返事をする前に、気付けば桜の唇を奪っていた。最初のキスはあまりにも衝撃的すぎて、いまいち理解出来なかった。だけど今ならハッキリと分かる。こうしていると、より一層

桜が感じられる。桜に包まれている感じがする。

「ご、強引……だよ、神斗」

「好きだ、桜」

「っ…………!!」

「俺に……こんな事いう資格は無いかもしれないけど…………好きだ、桜。俺、バカだからさ……中々気付かなかったけど――俺も、桜の事ずっとずっと好きだったみたいだ」

「ば、バカ……卑怯だよ、そういうの」

「桜に言われたくねーよ……」

「………………はは」

「………………ふふ」

お互い何だか可笑しくて笑みが零れる。

「桜……幸せに、してやるから覚悟しておけよ?」

「うん……覚悟してるから、今まで無かった分――全部、幸せで埋め尽くして――」

夕日が差し込む中、もう一度桜との距離はゼロとなる。そこから伸びる影は重なり、影は部屋へ陽炎を刻み付ける。陽炎は朧気で儚く消えてしまう――だけど、そこには見えなくとも残るものはある。だから消えない――今、この夏の下の夕日の下で生まれた、好きと言う気持ちは――

----END---


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