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風花  作者: 草薙 承
~涼~
9/20

【番外編】~真幌~ 飯

またもや番外編です。

読まなくても本編には差し支えありません(ぺこり)


喫茶「風花」

駅から少し離れた所にあっても、地域密着型。

おまけに学校と駅の間にあったり、学割もあったりとで学生も多い。

そんな常連さんの中でも一風変わっているのがいる。


柊 真幌(ひいらぎ まほろ)


神崎高校2年。

今どき珍しい勤労学生である。

細身の体にポニーテール、いつも木刀らしきものを片手に歩いている。

傍から見れば危ない人?


授業中は起きている方が珍しいのに成績は悪くない。

帰宅部でバイト三昧。

一昨日は道路の工事現場にいたとか。

昨日は駅前でたこ焼きを焼いてたとか。

今日はリアカーを引いて氷屋さんらしいとか。

いろんな目撃情報が入る。

そんな彼が決まって訪れるのが夕食時の風花なのだが……。


今日も一仕事終え、次のバイトに向かうまでの僅かな時間。

カカリラン♪……とカウベルが鳴る。

真幌特有の音がする。

何故だか解らない。

本人は至って普通に扉を押し開いてるだけだと言い張る。

何度か皆で検証してみたが、再現するのは本人にしかできなかった。

そんな変わったベル音も今では誰も気にしない。


「……腹減った」


今にもぶっ倒れ寸前の声あげながら、片手をあげてご挨拶。

ふらふらといつもの定位置の2人がけのテーブルへと着く。


「よっ」


蓬も短く応えただけ。

素早くカウンターの中で調理が始まった。

すでに刻んであった野菜の数々。

フライパンには細切れの豚肉がすでに投入され、ジューと小気味良い音をだしている。


待つこと数分―――。


「お待ちどう様」


ドンと目の前に置かれた肉野菜炒め。

優に2人前はある。それにてんこ盛りのどんぶり飯と味噌汁。

おまけに生卵。(本人希望)

デザートには本日のフルーツ付。(当店サービス)


「……いただきます」


徐に箸を持ち、礼儀正しく。

その後は冷めぬ内にと口へ運ぶ。


運ぶ……運ぶ運ぶ運ぶ運ぶ運―――。


ようやくお冷をコップに注ぎながら、いつもの食いっぷりに感心する。

目の当たりにしなければ信じられない量。

あれよあれよという間に細身の体へと入れていく。

野菜炒めとご飯を丁度に食べきり、味噌汁を流し込む。

最後に恒例の生卵をごっくん。

作法通りに箸を綺麗に置く。

その仕種だけで育ちはよさそうなのだが……。


「今日も旨かった。ご馳走様でした」


お冷も残らず飲み干し、人心地ついた所で手早く皿を集める。

おもむろに立ち上がり、物も言わずにカウンターに入り、魔法のように食器が洗われていく。


「それじゃ、バイト行って来る」

「ほい、ご苦労さん」


カラン♪

真幌がカウンターを出るタイミングで颯一が現れた。

両手には箱に入ったマフィンが5つ。


「真幌、これからバイトかい?」

「朝まで宅配の仕分作業のバイト」

「相変わらずだね。体に気をつけて」

「さんきゅ」


短い会話を交わし、またカカリラン♪と鳴らし去っていく。

滞在時間、僅か20分弱。

お代は毎末にまとめて、一ヶ月1万円、友人価格のなせる業。


「あ、これ持って行ってもらえば良かった」

「何それ」

「常連の松田さんから食べてって貰ったマフィンなんだけど……」

「それなら心配ないと思う」


カウンターに肘を付ながら、颯一の持っているマフィンの箱を指差した。

ポコンと不自然に空間が空いている箱。

そこには先刻までマフィンがあった事を物語っている……。


「……相変わらず素早い」

「油断大敵。歩く胃袋だよ?」


くすくすと笑い合う。


きっと明日も同じ。

腹ペコ青年がカカリラン♪とカウベルを鳴らすだろう。

歩く胃袋……。

まだまだ続く!?

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