おもらし(2)
「先生・・・」
ブルマーの中に広がる温かい水が、太腿の間をあふれながら、シャワーのように椅子から床に落ちるのを感じながら、沙織は他の誰かが気づくよりも早く、そのことを先生に申告した。
「おもらししてしまいました・・・」
それまで沙織の心を覆っていた、心細く物憂い闇のような思いが、おしっこをあふれさせる心地よい脱力感とともに、すうっと抜けていくのを感じた。
いつもは厳しそうな担任の女性教師は、このときの凛とした沙織の申告を、叱ることなく受け止めた。
「あ、沙織さん、おしっこしちゃった?」
そして先生はざわつくみんなに向かって言った。
「沙織さんは、じつはさっき涼くんのお世話をしたとき、涼くんが倒れちゃって、ちょっとショックだったと思うの。だから分かってあげて」
沙織は少し目を伏せながら、椅子から立ち上がった。沙織のおしりはぐっしょりと濡れて光っていて、太ももにしずくを伝わせていた。
「沙織さん、えっと・・・保健室・・・」
先生が口ごもりながら言いかけると、沙織は
「大丈夫です、ひとりで行けます」
と言って教室を出た。
さっきと同じ道を逆に向かって沙織は歩いた。渡り廊下を吹き抜ける風が沙織のおしりと、しずくが伝う太ももを冷たくした。燃え立つ緑がまぶしすぎて、沙織の目がにじんだ。