ブルマーの追憶(1)
沙織が教室に戻ると、担任による国語の授業がはじまっていた。ブルマー姿の沙織は、クラス中から一斉に注目を浴びた。なぜ制服を着ていないのか、なぜこんなに時間がかかったのか、クラスのあちこちでひそひそ話し合う声が聞こえた。
席に着いて教科書、ノートを広げると、沙織はますます「恥ずかしい違和感」が強くなった。手元の教科書越しに目を落とすと、深いVのラインが切れ上がったエンジのブルマーがあった。
《なんだろう・・・? でもブルマーで授業を受けることは、体育祭の前後など今までにもあったはずなのに・・・》
沙織が感じる「恥ずかしい違和感」は、しかし、単にブルマー姿なのが原因ではなく、白と紺色のシャツやブラウス、ズボンやスカートに囲まれながら、自分だけがブルマーの格好をしていることが原因なのだと悟った。その思いを振り払おうと懸命にノートを取る沙織だったが、視線の先にいつも半袖の薄い体育シャツとブルマーが目に入り、その思いは片時も消えることがなかった。
《涼のところに行きたい・・・》
沙織は、保健室の涼のことを思った。きっとまだ吐いたことに傷ついている涼を気遣いながら、頼りない格好をして心細い自分を涼に守ってもらいたい、そんなもの憂い気持ちが沙織を支配し始めた。
午前中の体育のあとたくさん摂った水、そして給食で食べたものが次第にもたらしてくる尿意が、そうしたもの憂い気持ちによってさらに増幅されていった。