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飛ばされ魔王のデタラメな毎日  作者: 遊希
魔王、始めました
6/15

006◇在らざる魔法と悪意


や、やばい。


テストがああああああ!


WRYYYYYYYY!



というわけで←、今回から本格的に魔法とか使ったりとかしちゃったりしましたり(意味不)





ラザス城の東に位置する、練兵場。

その隅に腰を下ろして、燎牙は練兵の様子を見ていたのだが、何と言えばいいのか。


「………ありゃあ、素人だらけじゃねぇか」


弱い、などというものではない。あれでは肉屋が戦ったほうが強いのではないだろうか、それほど戦い方がなっていない。


剣の握り方、根本的な立ち方、重心など、見直すどころか一からやり直して欲しいポイント満載感謝祭だった。


クソ爺ィに殺されかけてただけあって、燎牙は一通りの武器は扱える。刀や槍から、銃やボウガンまで様々だ。

流石に両刃剣の扱い方は習っていないが、基本的なことぐらいは理解しているつもりだ。


「仕方がありませんよ。あの兵士達は、もとは農夫や学生ですから」


兵士の中でも、歩兵だけは一般人で構成されている。

だが、別に徴兵などがあるわけではなく、全て志願制になっており、その為学生でも一般兵として働けるのだ。


最も、歩兵最大の武器は「人海戦術」なので、数が大事なのではあるが。


「ふーん………」



もう少しどうにかならないものか、とは思うが、やはり仕方がないのだろうか。


『そうだな。指南役を増やせばよいのではないか?』


「ッ……『………あっぶねぇ、普通に反応するとこだった』


エセ神様の声が聞こえてきて、思わず焦りかけた。

彼は続ける。


『一人が何百人を指揮するのは、なかなか厳しいものがある。それこそ、小さなフライパンで10人分の炒飯を同時に作ろうとすると、熱が伝わりにくく溢れやすいのとおなじでな』


何がどう同じなのか、見事にわからん説明をありがとう。

まあつまり、複数で教えたほうがいいってことだろう。


誰か教えられる奴で、暇な奴がいればよいのだが、そんな都合よくはいかないだろう。


「………また、考えとくよ」


「はい?」


燎牙の呟きに、後ろのクゥが反応した。「なんでもない、なんでもない」と苦笑すると、立ち上がる。


次は騎士団でも見ておこうか、と思い、クゥに尋ねた。


「クゥ、騎士団の連中とかはどこで訓練してるんだ?」


「騎士団ですか? 城の西側に本部があるのでそちらかと」


「案内してくれるか?」


「はい、わかりました」

西側の騎士団の様子を見に行こうと振り返り、威勢だけはいい歩兵たちの声を背中に受けながらその場を後にした。









騎士団本部は、小さな砦のようになっている。

城の西の門を潜り、目の前に現れる建物が騎士団本部だ。


中央の建物を中心に、訓練用のグラウンドや宿舎などがあり、広いイメージを抱く。

グラウンドでは甲冑を着た騎士たちがそれぞれ剣や槍や斧など、各々の武器を振るったり、的に火炎や水流の魔法を当てたりしている。

ところで他の隊はどうしたのかというと、歩兵含め騎士団より下の兵は統括して「アークレイド帝国軍」となるらしく、東の門の先に本部があるらしい。

一カ所にしなかった理由は、大規模魔法などで一度に全滅しないように、とのことだがあまり意味がない気がする。


「しかしまたこれは大きいな」


「ええ、一応騎士団には貴族の御子息なども多いので、支援などが集まりやすいんです」



とりあえず入口から入り、グラウンドまで近づくと、誰かが気づいたのか、またしても責任者っぽいのが近づいてきて、跪づいた。


「これは陛下、いかがなさいましたか?」


今度は騎士団だからなのか、燎牙がどういう存在か、把握しているようだった。


「リョーガ様、こちらは騎士団上級二等騎士のゾーアル・マクシミリアンです」


「ゾーアルか」


「はっ」


燎牙の呟きに、ゾーアルは跪づきを強めた。


「今日は訓練を見に来ただけだ、楽にしてくれて構わない」



「左様ですか。ならば、席を設けさせましょう」


それと模擬戦なども御覧になられますか? などと提案され、燎牙は首肯した。


ゾーアルが何かを叫びながら、騎士団員たちの元へ向かうのを見ながら、ふと疑問を抱いた燎牙は、クゥを呼んだ。


「クゥ、ちょっといいか?」


「はい、どういたしました?」


「そういえば、マジョラルとかゾーアルの種族ってなんだ? お前は確かハイエルフ………だったよな?」


「はい、そうですね。………確か彼らはデーモンではなかったでしょうか。その辺はご説明していませんでしたね」


では、と、クゥは燎牙に向き直る。


「………オズライア大陸における、魔族達の区分けとしては、上級と下級という区分けが出来ます」


下級は普通の魔物として、魔族文明を持つ上級の者達に狩られる。

種族が同じでも、下級か上級かで見た目も変わり、下級は言葉を理解する知能を持たない。

上級は人間を模した見た目の者が多く、さらにそのほとんどは人間と見た目があまり変わらない、という。

「まぁ、例外としては、ドラグネスなどの竜人種や、ラットマンなどの小獣種などが当て嵌まります」


「ラットマン、なんていたか城に?」


「いえ、ラットマン達は大体鉱山関係の仕事に就くのが一般的です。コボルドやドワーフなんかも同じですね」


「ふぅん」


そんなプチ講義の合間にも、燎牙の席は急ピッチで作られていった。


「席なんか要らんのに………」

先程の練兵場でのことを思い出し、苦笑しながら歩きだした。










結果から言えば、騎士団と歩兵ではやはりレベルが違った。

歩兵が剣を一振りする間に、彼らは二振りも三振りもしそうなほど剣術に長けていて、一部には魔法も併用しながら戦うものもいた。

その、魔法を集中的に見ていたのたのだが。


『なぁエセ神様』


『なんだ?』


『アレ発動遅くね? 何の魔法か見切られる気がするんだが』


いくら騎士団とはいえ、空中に魔力を用いて魔法陣を描いて、呪文の詠唱をして発動させて、というプロセスに、しっかり5秒もかかってしまっている。


あれでは魔法を予測されてしまい、結果当たらない気がする。


『仕方がないことではあるが、な。あれでもかなり早いほう、燎牙の構築スピードが気違いなだけでな』


『………そうか、そんなモンか』






そんなやり取りがあって、今燎牙は練兵場にいた。


真夜中の0時だ。


『………とはいえ、どうするかな』


自分の魔法と言われると、やはり既存の魔法にはないものを考えるのだが、実現させると城壁ごと壊しかねないものばかり思い付いてしまう。

かといって威力を弱めたものを考えると、どうしても既存の魔法に近いものになってしまう。


一応、既存の魔法にはルールがあって、系統や上中下級が分けられていたりする。

炎、水、土、雷の四大元素を基本とした属性魔法と、それらのどれにも属さない、一部の攻撃や回復、補助などの無属性魔法がある。


これらを踏まえて、考えなければならないため、どうしてもパワーバランスが取りづらくなっていた。


『………なら防御から考えてはどうだ? 的が要らない分、楽にできるだろう』


神様が提案をくれた。


『防御ねぇ………。まぁ、防御はすでに考えてはあるんだけどな』


『ほう、では被攻撃用の案山子を用意してやろう』



神様がそういうと、前方5メートルほどに黒い案山子が出現した。

顔はやはり「へのへのもへじ」である。


『そいつは起動させると、下級の火炎魔法、「ファイアボール」を打ち出す。準備はいいか?』


『ちょっと待てよ。 今から詠唱するか………ら………!?』

燎牙は防御の準備をしようと、両手を前にだして、そしてその変化に気づいた。


『………ふむ、そうか。暗黒ダークマターの力はそれだったのだな』


神様が、長年解けなかった謎が解けたときのように納得をした。



燎牙の両手の甲に、黒く光る紋章が浮き出ていた。

両刃の剣を取り巻く、二つの炎の柱の紋章―――アークレイド帝国の紋章である。


『燎牙よ、聞くがよい。それが恐らく暗黒ダークマターの真の力だ』


『これが、あのよくわからない力の正体………?』


『そうだ。それがあれば、名前をイメージするだけで、無詠唱で魔法陣を構築できるし、右左で別々の魔法を発動できる。あと、自分の付近でなくとも魔法陣が構築できるようになる』


『………よくわかんないけど便利になったな、俺』


チートも極めたら無茶苦茶になるなやっぱり、などと自分にしか通用しない軽口を叩く。

実際、無茶苦茶な能力なのは間違いないだろう。


無詠唱で、左右別々に魔法が発動できて、さらに設置も可能。

もはや、どこぞの幻想殺しも逃げ出す強さである。


「………ふぅ」


『それで、準備は出来たか?』


「今からやる、よっ!」


突き出していた右手で、自分の下に魔法陣を構築した。

一瞬であった。


「ホントに早いな、こりゃ」


『では発動するぞ。………ファイアボール!』


神様から詠唱すると同時に、前方の案山子からバスケットボール程の火球が、こちらに向かって発射されて―――




燎牙の前30センチで、まるで見えない障壁にぶつかったように掻き消された。


『ほう、なるほど。自動防御か』


『ああ、名付けて「自動障壁オートプロテクション」だな』



自動障壁―――魔法陣の範囲外からの攻撃を通さない絶対的な防御。

特別にオーラとかが出るわけではないので、こっそり構築しておけばばれないだろう。


「これで防御は万全だな」


『では、後は攻撃魔法や補助魔法だな』




こうして、燎牙の異世界生活二日目の夜は更けていく。







γγγγγγ





次の日、朝食(要求通りの食事になっていた)を終えると、執務室に戻り、早速仕事を始めた。


ハンコを捺すだけとはいえ、内容にはなかなか難しいものが多く、なかには一時間近く悩ませるような、頭の痛くなる書類もあったので、昼食の時間になっても燎牙が片付けられた書類は20枚もなかった。


溜め息をつきながら立ち上がる燎牙に、「初めてにしては随分と早いですよ、大丈夫です!」などとクゥがフォローした。





昼食の席で、燎牙は目の前の肉を切り分けながら、あらかじめ呼んでおいたディアブロの地理の講義を聞いていた。


「―――で、ラザス城の背後、北側に位置する山脈が「ベーヴァル山脈」じゃ。標高2500メートルを越す大山脈で、アークレイド帝国を護る最強の盾でもある、重要な山じゃな」


ディアブロは何やら分厚い本、もとい地理書を片手にしゃべっている。

彼の話通りだと、ベーヴァル山脈は自然の要塞みたいなものだろう。

2500メートルだとかなりの標高だし、越えるだけで一苦労だ。


「じゃが、最強の盾とはいえ越える手段はある。それも、最悪の手段がな」


このラザス城において、今現在で燎牙にタメ口を利けるのは、ディアブロしかいない。

他の人(ニンゲンではないが、魔人だから人扱いなのだ)がそんなことをしようものなら、たちまちに処刑されそうになるらしいのだが、どうもこのディアブロという老練の神官には誰も口だしはしないようだ。


「最悪の、手段?」


ご飯を口に運びながら問う。

城で出される米は、なにかが日本米と違うようで新鮮だったのだが、こちらの米にはどうも甘味が足りないようだ。

某ホームレスの「味の向こう側」に辿り着けないのは少し残念だが、米が食えるからよしにしてある。

自分の中だけで、だが。


「それは、機竜団じゃ」


「機竜団?」


機竜なんて、某東京を荒らして帰る怪獣映画の、偽怪獣的ロボ位しか思い付かない。

が、まぁそういうことではないだろう。


「カンタンに言えば、「竜騎士だけで構成される騎士団」のことで、一度攻めてくれば、千の竜騎士が舞い降りるとされている。じゃが、我が国は未だに機竜団を結成したことはないのじゃ」


「つまり、見たことがない、ってことか」


鷹揚に頷くディアブロ。

どうやら正しかったようだ。




その後、講義は燎牙の昼食が終わるまで続き、ディアブロは「地理を教えるのは楽しいのう!」などと笑いながら部屋を出ていった。


その扉が閉まる寸前、燎牙は偶然耳にした。


「そういえば最近、ウェレイザ地方の領主と連絡が取れんのじゃが、どうしたんじゃろうか………」









そんな生活を三日ほど続けた、ある日の午後。


いい加減城にも慣れてきて、どうにか迷わなくなった燎牙は、やることがない暇人みたいに城の外をふらふらしていた。

というかその日の仕事が片付いたので、散歩をしていただけだが。


西側でマジョラルにヘコヘコされつつ、城門がある南側へ歩いていく。


「城には慣れましたか、リョーガ様?」


「んー、そうだな。初めよりか随分マシだなぁ」


初めも何も、まだ一週間も経ってないが、と笑う。

最初の頃は、トイレの位置がわからず危うく漏らしかけたりもしたが(ちびりはしなかった)、それも今ではいい思い出だ。


………六日目にして思い出とはいささか早過ぎる気もするが。


「はは、危うく漏らしかけたりもしましたよね」


うわ言いやがったぞこの女。


クゥはこの三日間で、俺に「一歩間違えば侮辱罪で死刑になってもおかしくない」程度の冗談を言うようになっていた。

だが、日本にいたころは割とよくあったからか、俺も「ははは、バカヤロウ」と返したりしていい感じにコミュニケイト出来ていた。


まぁ、酷いことには変わりないが。




「………お前ホント言うようになったな」


「お褒めにあずかり光栄至極」


「褒めてねぇっての、全く………」


そんな会話してる内に門まで来ていた。

門にいる兵士からは、「ま、魔王様がいらっしゃったぞ!!」「どうなさったんだろうか?」「また抜け出そうとしたのをリーベル様に捕まったのでは?」などと聞こえてきた。


実は、昨日こっそり城下でも見に行こうかと抜け出そうとしたのだが、門を抜けるところで仁王立ちのクゥに見つかり、「さぁ仕事ですよリョーガ様!」と、執務室まで連れ戻されたりしたことがあった。


おのれ兵士共………、と思ったりはしなかったが、流石にムッとした燎牙は、とりあえず「仕事せんか馬鹿者ッ!」と叱っておくことにした。




そんな時。




城から伝令の兵士が小走りに、燎牙たちに近づいてきた。



「陛下! ウェレイザ地方からの緊急要請が届いております!」


「ウェレイザ地方?」




この報せが、後に語り継がれる伝説の幕開けになることを、まだ誰も知らなかった。










はい、駄作過ぎますね(笑)



ー解説ー


自動障壁オートプロテクション

◆燎牙がマトモに作った、最初の魔法。 魔力に比例した強度の障壁を、魔法陣にそって発生させる。 魔力がほぼ無限な燎牙が使うと、さながら「絶対防御」になる。


「ファイアボール」

◆下級の火炎魔法で、比較的カンタンな魔法。 魔術師が「マジックミサイル」の次に覚える、所謂「初心者向け魔法」。火の玉を飛ばす。



γγγγγγ


燎「はい、次回予告でぇーす」


神「………どうやら作者は、リア友に「あとがき楽しんどるだろ?」と聞かれたらしいぞ?」


燎「俺のせいではないな(笑)」


作「tk燎牙の一言目マジだるそうww」


神「おい作者。仮にも作家を目指すお前がww←とか使っていいのか!?」


作「だってはが○いの人よく使うし」


神「あれは例外だろうが………!」


クゥ「あれ、みなさんお揃いですか?」


作「あ、クゥだ」


燎「新キャラはお前か、よかったマトモなヤツが来て」


作「自分を棚にあげたな今………」


ク「はい、よろしくっ!」


神「………原作では我輩は燎牙以外には見えない設定だよな?」


ク「いーじゃないですかそんなこと! あなただんだんモブってきてますし!」


燎「………あれ、こんなキャラだっけ?」



作「え、えー、そんなわけで次回もお楽しみにっ!」


ク「燎牙様この前寝言で―――」


燎「だあぁッ、それを言うんじゃないッ!」





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