第43話「全額黑谷ちゃんの奢り(その1)」
「沖縄に行くから準備してね白山くん」
「は?」
「ちなみに認識改変してるからママ達の許可は取ってあるよ」
「は???」
「ちなみに今日ね」
「は?????????」
「はてなマークって3^(n-1)なんだ」
「……でもいいの?黑谷ちゃん」
「いいって、何が?」
「このままだと、貴重な貴重な権利が使えなくなっちゃうけど」
「……?」
「この世で黑谷ちゃんしか使えない……わたしの水着を選ぶ権利♡」
「!!!!!」
「初項5なんだ」
ということで予定は今日から明日の朝へ延期。
わたしはやらし〜目つきの黑谷ちゃんに手を引かれ、諸々を買いに近所のショッピングモールへ向かった。
◇◇◇
そして翌日。
黑谷ちゃんが選んだクロスホルダーの黒ビキニを始めとした2泊3日分の荷物を詰め込んだスーツケースを携え、わたしと黑谷ちゃんは羽田空港へ。
今回はちゃんとした旅行っぽくしたいという彼女のリクエストで、今回使ったのはタクシー。
いつもの黑谷ちゃん'sブラックカードでお支払いを済ませている中、わたしは運転手さんにお礼を言い、国内線ターミナルへ降り立った。
「白山くん白山くん、朝ご飯何食べる?」
「普通に空弁でいいんじゃない?わたしカツサンドにしよ〜っと」
「んじゃ私朝から海鮮丼行っちゃうから」
「うわ迷わず5000円を取った」
「白山くんも食べたい?」
「ん〜、だったらわたし、スイーツが……」
「ふふっ、いいね。もうすっかり奢られるのに慣れちゃった。……いや、そっか、もう家計一緒なの確定だもんね」
「話が早い……まあ、否定はしないけど」
飛行機の出発までは後2時間弱。
30分前には手荷物検査場を抜けるとしても、まだ1時間くらいは余裕がある。
朝早いとはいえオンシーズン、結構混んでる羽田空港。
わたし達ははぐれないように手を繋ぎ、朝ご飯を済ませるべく空いたソファを探し始めた。
◇◇◇
「うわ、ビジネスクラスってこんな感じなんだ……」
「国内線だとプレミアムシートって言うらしいよ」
「あ、そうなんだ……ていうか、席数少な……」
「大丈夫、安心して。ちゃんと真ん中のペアシート取ってるから。……あ、ラウンジとか行きたかった?」
「いや、わたしよくよく考えたら飛行機旅行久々だし、そこまで味わっちゃったら戻れなくなっちゃいそう……」
「そう?この先白山くんが乗るのって全部ビジネス以上なのに」
「……それ、予言?」
「宣言」
やたら大きなモニター、色々揃ったコンセント、広くてふかふかなシート……これも黑谷ちゃんと恋仲になってしまった宿命か、TS症に罹る前には想像できなかったレベルの上がり方。
謎の背徳感というか、わたしが美少女すぎるが故の事態と考えると何故かゾクゾクしてきて、どうしても口角が上がってしまう。
やっぱ人生って美少女の方が得するんだよな……
「っていうか、黑谷ちゃん朝ご飯足りた?結構ペロッといっちゃった感じだったけど」
「大丈夫だよ。確か機内食出るし」
「出るの!?」
「うん。サンドイッチと、スープと、あとデザート?」
「ちゃんと朝ご飯だ……」
そんなことを話していると、ポーン、ポーン、と特徴的なサウンドが聞こえてくる。
『皆様、おはようございます。ANA沖縄行き468便でございます。今日は早朝より──』
「あ、始まった」
「そう言えば知ってる?安全ビデオ、ちょっと前までポケモンだったんだよ」
「へ〜、見たかったなぁ〜」
わたしがシートベルトを締め、シートに押し付けるように身体をぐぐ〜っと伸ばしていると、黑谷ちゃんはわたしの方へ寄りかかるように身体を倒す
気まぐれで頭を撫でてあげると、黑谷ちゃんはもう満足そうに笑った。
『皆様、大変お待たせいたしました。まもなく離陸いたします──』




