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裏14話「黒歴史」

「てかさぁ、聞いてよセイちゃん!こないだ高橋の野郎がさ……」


「え嘘〜!それだいぶヤバくない?」



 白山くんもすっかり女の子になった。


 今や立派なクラスの一軍女子である彼女は当然のように、自分の席なのに椅子ではなく机に座り、私とのプリクラやらが入ったスマホケースを握る指は目を引くが下品ではない、そんな鮮やかなネイルで彩られている。


 私がいなくても白山くんの周りには常に誰かしらがいて、誰に聞いてもクラスの中心人物の一人に名前が上がるだろう。


 まあ、嫉妬の念すら覚えないほどの圧倒的な顔面偏差値にそれに負けず劣らず、アズレン2のラッシュくらい破壊力抜群の凶悪ボディ、おまけに誰にでも笑いかけてくれる人類に優しいギャルのような精神ともあればそれも必然か。


 一方私はというと、騒がしい彼女の隣の席で、今日も大人しくデイリー消化。


 白山くん達の会話をラジオ感覚で聞き流しながらマネーウォーズを回す。


 仕方ない。


 私は白山くんの次くらいに顔が良くてちょっと魔法が使えるだけで根は陰キャオタクくんとそう大差ないのだ。


 ……ああ、でもこういうのでお決まりな嫉妬的な感情はない。


 だってそうでしょ?


 白山くんはもうお嫁さん宣言済みなんだから。



◇◇◇



 そして帰り道。


 月一エヴァの最終弾、シンエヴァを見に行こうということで私達はショッピングモールの方へ歩いていた。



「そういえばさ、黑谷ちゃん。七夕ちゃんから聞いたんだけど」


「何?」


「黑谷ちゃんって、バンドやってたの?」



 唐突に、白山くんが私の黒歴史を口にした。



「……え、嘘、なんで知って……?」


「七夕ちゃんさ、お姉ちゃんが東京の方でバンドやってるらしくて。なんか黑谷ちゃんのこと知ってたらしいよ。「エグいテクしてた中学生がそんな苗字だった」って」


「エグいテクってなんかやらしい……じゃなくて、それ、バリバリ消したい過去だから……というか、あれバンドじゃないし……」


「あれ、黑谷ちゃんにしては珍しい焦り方。っていうか、ギター弾けるの?弾けないの?どっち?」


「いや、そりゃ普通の人よりは弾けるけど、私より弾ける人全然いるし、私事変とかちょっと手癖で遊んでただけだから別に……」



 そう。


 私は中学の時、ちょっとだけギターを触ってた時期があった。


 というか、私以外の誰にも、白山くんにも教えてないけど、今でもたまにアナザーディメンションとか籠もって弾いてることもある。


 でもこういうのは真面目にやればやるほどどれだけトップ層が化物揃いかということ、そして近道なんて全く無いのを実感してしまうもので、魔法でどうにかするべきものでもないなと、私はちびちびと触り続けていた。



「あははっ、珍しいね。黑谷ちゃんが真面目になるのなんて、わたし相手くらいだと思ってた」


「真面目?」


「あれ、違った?黑谷ちゃん、ギターは真面目に弾いてるのかなって。そういう黑谷ちゃんもわたしは好きだけどな〜」



 白山くんはもうすっかり雄の気配なんて消え去って、誘い受けの上手な雌の顔しかしなくなった。


 すごいね、タイトルで俺なんて言ってた頃の白山くんはどこに行ったんだろ。



「でさ、黑谷ちゃんがギター弾いてる映像、もらっちゃったんだけど。短髪ウルフかっこい〜♡」


「は、え、嘘……!?ってかそれ、よりにもよってサブボーカルも……!!」


「黑谷ちゃん……この……なんて読むんだろ、このバンド入ってたの?」


「違う。私結構コミュ障だから全部サポート参加……って再生ボタン押さないでよ!?」


「いやで〜す♡ほらほら、イヤホン半分こしよ♡」


「ッ……究極の二択……」



 私は悩みに悩んだ後、白山くんからワイヤレスイヤホンを受け取った。


 白山くん、女の子より女の子が上手い……

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