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第42話「文化祭準備(その2)」

 あと数週間もしたらたのしいたのしい夏休みは明けて、そうなればあっという間に文化祭。


 「後悔先に立たず」をモットーとするわたし達図書研究部は今日も今日とて部室に集まっておしゃべり……ついでに文化祭の準備に勤しんでいた。


 わたしと黑谷ちゃんはメニュー作成、阿須加先生は本の選定、氷室先輩とNoMAちゃん先輩が内装デザインなんかを担当する中、とある用事で外に出ていた甘神ちゃんは大きな段ボールの箱を抱えて戻ってきた。



「皆さん、ご注文の品をお持ちしました」


「ってことは〜!」


「ふふっ、いいタイミングじゃない」


「待って、これみんな分かってる感じかしら?もしかして、私置いてかれてる?」


「あ〜……そっすね」


「セグウェイ」


「置いてかれてるもの言った」



 そんな困惑兼絶望顔の先生を尻目に段ボールを開ける甘神ちゃん。


 その中に入っていたのはついこの前、やたらめったら高そうなホテルで採寸されたオーダーメイド和メイド衣装5人分だった。


 そう、5人分なのである。



「え、うそうそ!?先生の分は!?」


「だって来なかったし……」


「そもそも顧問の教師はそういうのあんま関わっちゃだめってのが暗黙の了解なんじゃ……」


「ぐぬぬ……」



 なんとか引き下がってくれた阿須加先生を尻目に、わたし達はそれぞれの和メイド衣装をチェックする。


 動きやすさや可愛さを重視した結果、最終的には上は振袖タイプで下はフリルスカートの大正浪漫なスタイルに。


 「自分、これ着て人前出んのか……」と氷室先輩は小さく呟いた。


 日頃からそんな変わんないですよ。



「そういえば、お姉ちゃんが「本来であれば着物は胸を潰すものだけどそれじゃ勿体ないから特別仕様にしておきましたわ」みたいなこと言ってましたよ」


「あら、ほんとね。あたしのもちょっと変わった作りになってる……ってことはセイのは……」


「ふふっ、やっぱり乳袋計算されてるね」


「そうジロジロ見られると、流石のわたしも恥ずかしさが勝つんだけど……」


「取り敢えず着てみて考えますか」



 甘神ちゃんの提案に頷き、わたし達は上機嫌でその場で和メイド衣装に着替えだした。



「……あら、イツキ?何よ急に部屋の隅で体育座りして。しかも壁の方向いて……なんか嫌なことでも思い出したの?」


「いや、そうじゃなくて……なんていうか、その……阿須加さん、近くの男子更衣室ってどこでしたっけ……?」


「体育館じゃない?それとも、もしあれだったら多目的トイレでも使う?」


「多目的トイレは……なんか、その……トイレ以外の目的で使うのは、やらしいっていうか……」


「じゃあ体育館行くしかないわね〜」


「……じゃ、失礼します」



 小脇に和メイド衣装を抱え、目を瞑ったままそそくさと退散する氷室先輩。


 わ〜、ほんとこの人ピュア。


 ピュアピュアのピュア。



「……ああ、そうでした。氷室先輩は一応肉体と精神的な性別は男性でしたね」


「あの格好で思春期メンタルとか鏡見れなそう」


「ぶっちゃけこういうのって手足が長いほど映えるから、多分サマになんのあいつなのよね……」



 そんなことを話しながら、少しうらやましそうな阿須加先生の視線を受けつつ仕様書通りに和メイド衣装に袖を通していくわたし達。


 しかし、ここでわたしは致命的な問題に気がついた。



「……この衣装のエプロン、コルセットみたいになってるじゃないですか?」


「なってるわね」


「コルセットって、紐で結ばないといけないじゃないですか」


「いけないですね」



 ……そう。


 胸に隠れて、コルセット何も見えない。



「だいじょーぶだよ、白山くん♡」


「んっ、急に腰掴まないで……っ」


「チッッ……こいつらマジで隙見せたらイチャコラしやがるわね……」


「ああお口が悪いです駕籠野先輩」



◇◇◇



 一方その頃。



「待て逃がすな!!」


「取材ッ!!ブッ取材しろッッ!!」


「史上初のミスターコンとミスコンの二冠達成について意気込みはいかがですか!?」



 スタイル抜群韋駄天和メイドは新聞部に追いかけ回され、渡り廊下を全力疾走していた。

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