第41話「作戦会議・その1」
「は!?信じらんない……!!白山くん、こいつ、今、煽った……!!」
「もしかして283プロとか在籍してる?」
今日は午後から部活動なので、お昼ついでにお隣の黑谷ちゃん家に。
わたしがファンデを塗る横で、メイクいらずの黑谷ちゃんはスプラトゥーンに勤しんでいた。
「っていうかさ、黑谷ちゃんっていいよね〜。魔法でメイクとか全部スキップとか、ほんと羨ましい」
「それ言ったら白山くんこそでしょ。その顔でメイクって要るの?」
「要るに決まってんじゃん。最強美少女が最強装備持ったら超絶最強なんだし」
「うわ、律儀だね」
かなりイラついてるっぽい指捌きでコントローラーを動かしながら、こっちを見る黑谷ちゃん。
「画面見なくていいの?」なんて人間目線の疑問が一瞬浮かんで、すぐに棄却された。
「っ……ギリ勝ったぁ……今ラグ持ってたの全員名前と住所覚えたから……」
「黑谷ちゃんさ、そんなの覚えてどうするの?」
「こっから先の人生のあらゆる要素がそこはかとなく下ブレるようにする」
「ああ憎しみのレベルが高い」
「紙ストロー」
「憎まれてるもの言った」
そしてどうにか辛勝かつ連勝を決めた黑谷ちゃんは2人で食べてた超特大カップ焼きそばの残りをちゅるるっと啜り、その頃にはわたしもばっちりメイク完了。
いつもの制服でいつものカバンを持って、私達は炎天下への偉大な一歩を踏み出した。
◇◇◇
「おはよ〜ございま〜す」
「ぉはようございまぁ……あっつ……」
あいも変わらず日本列島は連日猛暑日。
わたしと黑谷ちゃんは徒歩10分の道のりの間に5分間のコンビニ休憩を挟んだにも関わらず健全な汗をかいてしまっている。
軽く汗を拭いてから部室に入ると、いつものように氷室先輩とNoMAちゃん先輩がお茶をしているところだった。
「おはよ。あんた達も食べていいわよ、このカステラ。この前長崎のロケで買ってきたの。結構いいお値段したんだから」
「めっちゃ美味いっすよ、これ」
モキュモキュモキュとおそらくわたし達の分とは別で買ってきたのであろうどデカいカステラ丸々一本をチュロスのように頬張る氷室先輩。
どうやらカスタード入りらしく、口元は濃厚なクリームでべたっと汚れている。
「……ちょっとえっちじゃない?」
「黑谷ちゃん」
「そういえば、阿須加先生はお休みだそうよ。昨日はしゃぎすぎて夏風邪だって」
「年に見合わない無邪気さ」
「あ、そういえば人生初コンプだってインスタで言ってたっけ……このカステラやっば」
「ふふっ、いい表情するじゃない」
「おはようございます」
わたしと黑谷ちゃんも先輩のお言葉に甘えてカステラを一切れ頬張ったところで、再び部室の扉が開き、甘神ちゃんの声が響く。
振り向くとそこには白髪ツーサイドアップという何度見ても3次元のものじゃない髪型の甘神ちゃん、ともう一人。
長い黒髪をふわっふわのウェーブヘアに仕立てた背の高い美人さん。
「あ、黑谷ちゃんと白山ちゃんは多分会うのは初めてですよね。紹介します、お姉ちゃんです」
「ごきげんよう。占星術部部長、甘神アマカと申しますわ」
そう挨拶すると、彼女……甘神先輩はふわりとお辞儀する。
どうやら氷室先輩達とはクラスメイトの関係らしい。
そのままごく自然にお茶会に混ざった彼女は、こんな話を切り出した。
「文化祭、あなた達のカフェに甘神家の力をお貸しいたしますわ。ですので、代わりに占星術部にも1枚噛ませていただきたいんですの」
「……あれ、NoMAちゃん先輩。もしかして、甘神ちゃん家って……」
「少なくとも学年で一番のお嬢よ」
「ってことは、これって……」
「ええ。今日はわたくし、商談に参りましたの」
また、変なやつが増えた。




