第37話「文化祭準備(その1)」
「流石に今日はちょっと真面目な話をするわよ」
この図書研究部においては中々珍しい阿須加先生の切り出しに思わず部室に走る緊張感。
絵しりとりをしていたわたしと黑谷ちゃんも、甘神ちゃんにメイクを教えていたNoMAちゃん先輩も、お茶を入れていた氷室先輩も手を止めて先生の方を見る。
「……え、そんな顔するほど?」
「だいぶ珍しいわよね?」
「はい。だいぶ珍しいです」
「オドロキマシタ」
「矢島美容室みたいになってるよ黑谷ちゃん」
「……で、何の話すか?」
氷室先輩が首を傾げると、阿須加先生は引っ張り出してきたホワイトボードにバンと勢い良くチラシのようなものを叩きつける。
そこには「私立冬ヶ丘学園神楽祭」と大きく書かれていた。
「あ、夏休み終わったらすぐ文化祭なのね」
「ですね〜、っていうかこんなにまつりまつりしてる名前だったんだ……」
「例年だとちゃんとした出し物ができるような人数もいなかったから普通に図書館開けるだけだったけど、今年はなぜかいっぱいいる!これはもうちゃんとした出し物やるしかないじゃない!」
「あー、まあ6人もいたらそれなりのこと出来るっすかね」
「ということで、今日は文化祭で図書研が何をやるかを決めようと思うの。誰か案がある人は?」
「私メイドカフェを提案致します」
「あ、わたしも興味あります〜!」
「白山くんが賛成なら」
「あたしも別にいいわよ。イツキ、あんたはどうなの?」
「……あ、俺も別に嫌じゃないかな。賛成っす」
「んじゃメイドカフェでいいかしら……」
こういうのって全会一致でメイドカフェになることあるんだ……
「ちなみに白山くんさ、どういうメイドを想定してる?」
「ミニスカ」
「いや上の方」
「首元まで詰まってるタイプかな」
「まあ着衣巨乳もアリか」
「欲に正直だよね黑谷ちゃん」
さあ、というわけで続いて行う話し合いはズバリ「それ図書研がやる必要あるのか問題」。
これについては至って文字の通りで、メイドカフェを図書研がやる理由を正当化しないと色々と問題が出てくる、具体的に言うと他の飲食ガチ勢の部活動にねちねち言われかねないというリスクを抱えているのだ。
まあわたし含めて顔面のアベレージは全部活動でもトップクラス、というかトップだろうし、ちゃんとメイドカフェとして成立すれば顔票で文化祭の人気投票に勝てる可能性も充分に出てくるということで、わたし達は割とちゃんと考え始めた。
「えっと……まず文学的なの推したいっすよね。流石に図書研なんで」
「でしたら和メイド路線はいかがでしょう?私実家が呉服屋ですので、皆様の分の和メイド衣装は用意できると思われますが」
「いいじゃない。和メイドは差別化図れるわよ。……でもせっかくならもっとガッツリ図書要素も推していきたいわね。最近の本屋ってカフェスペースあるとこも見かけるじゃない?あんな感じで本読みつつ休めるカフェ、みたいな感じがいいんじゃないかしら?」
「でもそれって本の損傷リスクもそこそこありますよね?そうなったら本末転倒な気がしなくもないんですけど」
「……あ、わたしいいの思いつきました!ほら、バザーに回したり処分しちゃう本とかあるじゃないですか?あれとコーヒーとかをセットで売るんです!」
「あ、それなら在庫も捌けるしカフェの理由にもなる……いっすね、それ」
「でしたら和風の雰囲気に合わせて現代語訳の古典なんかも相性良好かもしれません。それと私、一応落語の心得がございますが」
「あら、奇遇ね。あたしも出来るわよ、落語。パパの仕事の関係で」
「なんで落語有識者が2人も……?」
「世界ってほんと狭いわね……」
ということで我ら図書研の出し物は「和風図書カフェwith小咄」ということに決定。
あと重要なのは好立地を押さえられるかだけど……
「大丈夫だよ、白山くん。……そこからは私の仕事だから」
こういう時の黑谷ちゃん、ほんとに強すぎる。




