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裏10話「ちゃんとしたTSモノ」

 そろそろ期末試験だな〜、どうしよっかな〜、とか考えてたある日の休日。


 適当に散財でもしよう、最悪パチンコ打とう、と珍しく1人で近所のショッピングモールを歩いていると、どこか不自然な挙動をしつつ、ベンチでペットボトルのお茶を飲んでいる美人を見つけた。


 間違いない、白山くんのパパだ。


 私は彼女に駆け寄り、声を掛けた。



「もしもーし、おはようございます」


「……ああ、誰かと思えば黑谷さんか。おはよう」


「はい、おはようございます。……ところで、さっきからキョロキョロしてますが何か探してるんですか?」


「あ、いや、これは……その……」



 僅かに顔を赤くし、言い淀む白山くんのパパ。


 なんかあったのかと思って見ると、その視線の先には最近人気のブティックが。


 あ、これはもしかして。



「……服、買いに来た感じですか?」


「ああ、そうなんだ。この身体になってからというもの、どうしても今までの服じゃ違和感があってね。通販で買おうに中々サイズもないし、こうして実際の店舗にやってきたはいいものの……」


「恥ずかしくなって出てきてしまった、と」


「……そういうことだね。今は大人しくセイに選んでもらってるよ」


「あ、だから今日白山くん「先約ある」って言ってたんだ」



 そして待つこと数分、店から大量の紙袋を抱えた白山くんが姿を現した。



「父さんおまたせ……って、黑谷ちゃん?」


「おはよ、白山くん。よくも私の誘いを断ってくれたなって思ってたけど、パパのお買い物だったんだね」


「そうそう、てか聞いてよ黑谷ちゃん。父さんったら「落ち着かないから」なんて理由でちょっと前まで男物の下着のままだったんだよ?ナイトブラどころかこの前なんてタンクトップのままだったし……」


「うわ……」


「それは……仕方ないだろう?いくらなんでも、アラフィフのおじさんが女物の下着っていうのは……」


「それさぁ、何度も言うけど今の父さんじゃ通用しないからね?てかむしろ真逆。今の父さん、どう見ても20代前半くらいの美少女だよ?それがノーブラとか、ただの痴女」


「ち、痴女……!?」


「確かにこれがノーブラは同人誌すぎるかなぁ……」


「てわけで試着室借りる許可もらってきたから、さっさと着替えてきて、父さん」


「わ、わかった……」


「ほら早く。母さんに連絡してまたスモック着せちゃうよ」


「あれは……流石に勘弁してほしい……」


「白山くんのママもうわきつ趣味あるんだ」



 そして白山くんに引きずられていく白山くんのパパ。


 これまた待つこと数分、顔を真赤にしながらも大人カジュアルスタイルに身を包んだ彼女がブティックから帰還した。



「おつかれ、白山くん」


「ほんっとに。父さんめっちゃ恥じらうし、合うサイズはぜんっぜんなかったし……人のファッションって楽しいけど疲れるんだよね……」


「その……セイ、ほんとにこれであってるんだよな?妙にスースーするというか、心許ないというか……」



 10代後半の白山くんがあれだけの適応を見せていて、40代後半の白山くんのパパがテンプレTSモノみたいな反応をしているのを見るとなんだか笑顔になってくる。


 私はキッチンカーで買ったいちごアイスを頬張りながら変わり果てた親子の姿を見守っていた。



「……てかさ、1つ気になったんだけど」


「何?黑谷ちゃん」


「その調子だと、身体ちゃんと洗ってるの?白山くんのパパ」


「あ、それは大丈夫。……わたしが毎日一緒に入ってるから」


「ああ〜……」


「し、しかたないだろう?この身体は、少々刺激が強くて……」



 なんか、ちゃんとしたTSモノしてるな……


 ……待って。


 ちゃんとしたラブコメみたいなのは駕籠野先輩がやってて、ちゃんとしたTSモノは白山くんのパパがやってて……



「……まずい、アイデンティティが消えちゃう」


「何の話?」


「……需要と供給の話、かな」


「経済学?」

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