第30話「駕籠野マキは告らせたい」
「んで、見事蜜の味を知ったあんた達に聞きたいんだけど」
とある日の部活帰り、少し遠回りな寄り道のちょっとだけ意識の高いラーメン屋でNoMAちゃん先輩は話を切り出した。
「……どうやったら、あたしはイツキとヤれると思う?」
「ド直球に来たね白山くん」
「ド直球ですねNoMAちゃん先輩」
少し小声、他の誰も気付いていないとはいえテレビに雑誌にと引っ張りだこのトップモデルの口から出る話題じゃないそれに当惑するわたし達。
とりあえず何があったのか聞いてみると、彼女は涙目になりながら語り出した。
「……従妹とか、小学校の同級生とか……みんなもう処◯卒業してて……あたしマウント取られて……」
何か既視感あるなこれ。
「……なんで私のこと見るの?」
「先駆者だなぁ、と」
ともあれここしばらくNoMAちゃん先輩と遊んだり仕事したりして、一つ気付いたことがある。
それはこの人、すっごいめんどくさいってことだ。
そのめんどくささは恋愛方面にしか向けられてない分、恋愛方面がかなりめんどくさい。
まず1つ目が自分からは絶対に告ろうとしないこと、2つ目に妙にロマンチストなところ、3つ目に氷室先輩以外の選択肢がないこと……
あれ、これどっかで見たことあるような……
……あ、かぐ
「駄目だよ白山くん。集英社は厳しいんだから」
「……今更じゃない?」
「今更ではあるけどさ」
「あんた達いっつも変な話してるわよね……って、それよりどうにかしてあのバカイツキを籠絡して〇〇〇〇〇〇〇キメさせて幸せな家庭作る方法考えるの手伝ってくれない?」
「どうしよ黑谷ちゃん、これ某副会長よりもおぞましい願望抱いてるけど。なんか目ぐるぐるしてるし」
「あの時の私どうやって止まったんだっけ」
「おっぱい」
「効かなそうだね。……ん〜、じゃあこれとか」
「なにそれ」
「スタンガン」
「物騒なドラえもん?」
ぐるぐる目で行儀悪く、初期の生成AIばりに手づかみでラーメンを頬張るNoMAちゃん先輩。
アイドルでも目指すつもりなんだろうか。
そして見る見る内に丼ぶりを平らげると、彼女は最後の力を振り絞るように丼ぶりを押し出し、その場にばたんきゅーと突っ伏した。
「なにこれ」
「……寝不足だ。この調子だと……うわ、8時間くらい寝っぱなしだこれ……」
「……待って今未来視使った?」
「えー、どうしよこれ……っていうか私駕籠野先輩の家知らないんだけど……」
「わたしもわたしも」
「ん〜、どうしよ、マジで」
わたしと黑谷ちゃんは顔を見合わせ、目の前で死体みたいになったトップモデルの処理について相談する。
そして一つ妙案が思いつき、わたしはスマートフォンを開いた。
「……ん、あ、出た!もしも〜し!……」
◇◇◇
「……っと、すいません、ノマちゃんが迷惑かけたみたいで」
「いえいえ〜」
「お代は駕籠野先輩請求しとくんで、それでチャラにしときます」
そして合流した氷室先輩は、一足先にNoMAちゃん先輩を背負って店を出ていった。
本日の勝敗。
NoMAちゃん先輩の勝ち……っぽい。




