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第25話「襲来、本物のラブコメ」

 ウチは部活が盛んな学校だし、大学付属ということもあって放課後図書館に通って勉強、という生徒はあんまり多くない。


 おかげで図書研もたまにやることはあるけどだいたい暇、くらいの忙しさに落ち着いているというのもある。


 とはいえ週に何回も来てくれる、いわば常連さんみたいな生徒も何人かいたりして、決して閑古鳥が鳴いている、というわけでもない。


 今から資格かなんかの勉強をしてるいかにも堅物そうなメガネの高三男子、みんなでドラえもんに一喜一憂するテンション高めなギャル集団、毎回限界まで洋書を借りてっては次の日ケロッとした顔で返しに来る謎のおさげ中2女子など、意外と見てて飽きなかったりするものだ。


 しかしそんな中、足繁く図書館に通っては伊達メガネ越しに俺に鋭い視線を向けてくる生徒がいる。


 何を隠そう、あの駕籠野マキである。



「やば……黑谷ちゃん、またNoMAちゃん来てるしまた俺のこと見てるんだけど……!?」


「あれ、白山くんあの人が駕籠野先輩って知ってたんだ」


「いや知ってるも何もめっちゃ見てるって!氷室先輩が前話してたからって調べたらめちゃくちゃセンスいいし可愛いしでインスタもTikTokもフォローしてるから」


「インスタ?TikTok?白山くんが?……これNTRじゃない?」


「いいでしょ別に。……で、なんで俺はあのNoMAちゃんに睨まれてんの……?」


「ああ、それ?駕籠野先輩、白山くんのこと恋敵だって思ってるんだよ」



 ああ、恋がた……


 ……?


 ……え?


 恋敵?


 恋敵!?



「あれ、えっと、NoMAちゃん先輩って……」


「氷室先輩にベタ惚れしてるよ」


「……つまり俺は……?」


「人の恋路を脅かす泥棒猫」


「いやいやいやいやいや!?おかしくない!?俺そんな氷室先輩に媚びてるシーンあった!?……、……いや、あったかも……」


「白山くんみんなに媚びてるからね」



 なるほど、しかしこのような形での推しからの認知はかなり避けたいというのが正直なところ。


 俺は少し考えた後、意を決して彼女の方へ向かった。



「うわでかっ」


「あの〜、えっと〜……まず、いつもインスタ見てます。この前の特集も買いました。めっちゃ良かったです」


「あ、そ、そうなの?ありがと……」


「その上で言うんですけど、私別に氷室先輩狙ってないです。好きじゃないです。いや、好きな先輩ではあるんですけど、ちょっと美少女過ぎて異性として見れないっていうか」


「……つまり?」


「わたし、NoMAちゃん先輩の敵じゃないです」


「……本当に?」


「あ、私この子とデキてるんで」



 この機に乗じて黑谷ちゃんもあることないこと言い出したが、この際目を瞑って差し上げよう。


 ともかくこれでNoMAちゃん先輩がどんな反応するか……



「……そ、そうよね!あの朴念仁がこんな可愛い子に手出せるはずないものね!」



 セーフ!



「ふぅ……あたしったらどうかしてた……ちょっとおっぱいがおっきいからって可愛い後輩、それもファンの子を疑って……」


「ちょっと?」


「そこに疑問を持たないで黑谷ちゃん」


「でも良かった、あいつが後輩に手を出すような見境ないやつじゃなくて。どう?ちゃんと先輩やれてる?イツキ。ほら、あいつちょっと鈍感なとことかあるでしょ?」


「あ〜、どうだろ。わたしからしたらすっごくいい先輩ですよ!図書研の中じゃ紅一点ならぬ《《黒一点》》、ほぼ《《ハーレム》》って感じですし、色々──」



 この時の俺は気付いていなかった。


 俺が図書研での氷室先輩の語れば語るほど、NoMAちゃん先輩の顔が赤くなっていくことに。



「って感じで、ほぼきらら系なんですよね、氷室せんぱ、い……?」


「顔真っ赤で草生える」


「……入る」


「……え?」


「あたしもっ!!図書研究部入るーーーっっ!!!」



 トップモデルの情けない叫びが、閉館間際の図書館にこだました。

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