第23話「たのしいお泊まり会(その1)」
「え、父さん、明日から出張?」
「ああ、そうなんだ。急なトラブルみたいでね。二泊三日だから母さんのとこにお世話になるよ」
「なんていうか……お疲れ様。色々と」
「ははっ、まあ疲れるのはこれからだけどな」
◇◇◇
「ということで白山くんが泊まりに来たよ」
「拉致られました」
「いらっしゃい、白山さん。大したもてなしも出来るわけじゃありませんけど、3日間ゆっくりしていってください」
どこから出張の話を聞きつけたのかは知らないけど、俺にお泊まり会の話を持ちかけてきた黑谷ちゃんはあれよあれよという間に彼女の両親にも話を通し、父さんも元々は男とはいえ現在は未成年の少女である俺を一人家に残すというのも心配だったらしく快諾。
俺は制服やら何やらの普通に学校に必要なものとか、遊び道具とかを持って同じマンションの同じ階の黑谷ちゃんの家を訪れていた。
「バスタオルとか、あとおふとんとかは私達の部屋に来客用があるから、あとで持ってくるわね」
「あ、ありがとうございま〜す!」
黑谷ちゃんのお母さんとは数えるくらい、お父さんとは初対面だけど、どっちも黑谷ちゃんからは考えられないくらいのいい人。
いや、黑谷ちゃんが本当は良い子なのかもしれないが。
特に黑谷ちゃんのお父さんなんてその業界の中では知らない人はいないって程の大手建設の社長さんなのに腰が低くていちいち丁寧な人だ。
本当の上流階級って案外こういう人なのかも、なんて考えてしまった。
「改めてお礼を言わせてください、白山さん。うちのアメは不真面目なのになまじ器用というか、自由奔放に育ちすぎてしまいまして。私の至らぬところなんですが、こんな娘と仲良くしてもらってありがとうございます」
「パパ、お硬い」
「いえ、わたしの方も黑谷ちゃんと遊ぶのすっごい楽しいので〜!」
「それなら何よりです。これからもうちのアメをよろしくお願いします。それと、今日は返礼品が届いたので、夏ですがモツ鍋です」
「モツ!わたし大好きです!」
「それはよかった」
そこまで伝えると、黑谷ちゃんのお父さんはリモート会議のようで自分の書斎へと戻っていく。
一体何億動く話なのかわからないので、出来る限り邪魔をしないよう俺達は黑谷ちゃんの部屋に引っ込んだ上で彼女はさらに防音魔法を重ね掛けした。
「よし。これで大丈夫。音割れシリーズ見ても一切合切漏れないよ」
「すごいね、魔法」
「すごいんだよ、魔法」
にしても黑谷ちゃんの部屋、なんていうかすごく綺麗。
ある種のミニマリストじみてるというか、あの黑谷ちゃんが?という感じ。
シンプルなベッドにシンプルな机、カーペットに本棚、クローゼットと至って普通の部屋に俺は首を傾げる。
すると黑谷ちゃんは「気になる?」と俺に問いかけてから、空中に線を引くように指を動かした。
その次の瞬間だった。
「私、もの捨てるの苦手でさ」
「うん」
「だから適当に放り込んでるんだ。アナザーディメンションみたいなとこに」
「アナザーディメンション????」
「あれ、知らない?星のカービィWiiで出てくるんだけど」
「知ってるけど知らないんだよ。現実とゲームの区別がついてないって言われても妥当だよ黑谷ちゃん」
「つけなくすることも出来るけど」
「堂々と現実改変しようとしないで……」
そして俺達は多分あと1時間くらいであろう晩ご飯の時間まで、ミスターXに勤しんでいた。




