第20話「バカと全能は紙一重」
「ふと思ったんだけどさ、黑谷ちゃんってずっと遊んでるよね」
「そうだね。ずっと遊んでるよ、私」
「勉強、大丈夫なの?」
「……べん、きょう……?」
朝8時25分の通学路。
「何語話してるんだこいつ?」と言わんばかりに首を傾げる黑谷ちゃん。
案の定の事態に俺は思わずため息を吐いた。
「黑谷ちゃん、今日から定期試験なんだけど」
「へえ、それで?」
「???」
「まさか白山くん、私が勉強できないなんて思ってるの?この全知全能系美少女黑谷アメが高校の勉強すら出来ないなんて?」
「……そう言われると、だけど……」
◇◇◇
「まあ出来ないんだけどね」
「黑谷ちゃん?」
数日後、待ちに待った答案返却日のことだった。
数学1A、平均78点、俺87点、黒谷ちゃん61点。
数学2B、平均67点、俺85点、黑谷ちゃん70点。
英コミュ、平均72点、俺78点、黑谷ちゃん34点。
英文法、平均80点、俺83点、黑谷ちゃん41点。
現代文、平均66点、俺87点、黑谷ちゃん91点。
古文、平均51点、俺78点、黑谷ちゃん84点。
地理、平均74点、俺93点、黑谷ちゃん69点。
世界史、平均78点、俺95点、黑谷ちゃん70点。
化学、平均51点、俺72点、黑谷ちゃん29点。
物理、平均60点、俺70点、黑谷ちゃん63点。
「待って黑谷ちゃん。こういうのって頭いいのが相場じゃないの?勉強しなくても高得点取れてすごいみたいな感じじゃないの?」
「え?勉強しないのに高得点とか取れるわけなくない?白山くんって天然入ってたりする?」
「なんでこれ俺が煽られてるのかな?」
「言っておくけど、私勉強キライだよ。あんなことに時間使うくらいならウイポやりたいし」
よくこんなので冬ヶ丘受かったな黑谷ちゃん。
一応名門私立だぞここ。
「え、それは魔法でどうにかしたけど」
「ああもう好き放題してる」
そうか、魔法とかで何でも出来ると勉強が出来ることに価値が生まれなくなるのか。
そりゃこんな脳内ドーパミン依存系美少女も生まれるわけだ……
「ちなみに直接ドーパミン出す魔法もあるけど」
「簡略化って怖い」
「……あ、でもこのままだとだいぶ補講引っかかっちゃう」
「それは嫌かな」と指をぱちんと鳴らす黑谷ちゃん。
次の瞬間、ピコンとメールの着信音が響いた。
もしや、と思って開いてみると案の定「補講中止のお知らせ」とのタイトル。
「さて、と。白山くん、時間出来たしROUND1でも行かない?カラオケとかさ」
「……おごりね、黑谷ちゃんの」
「え、いいの?やったー」
どうやら教育という概念でさえも黑谷ちゃんには敵わないらしい。
全能って怖いな、なんて考えながら俺達はROUND1へ向かった。




