第18話「ストーキングをしよう!」
しないでください
『ねえ』
『白山くん』
『何?』
『明日って暇?』
『振替休日だけど』
『暇かな』
『そう』
『よかった』
『じゃあもう一個質問なんだけど』
『白山くんのパパの様子、気になったりしない?』
『……』
『正直に言うわ』
『めっっっっちゃ気になる』
『だよね』
『だから見に行こうよ』
『私、ストーキング得意なんだ』
『最悪だな』
『乗った』
◇◇◇
というわけで父さんが家を出た直後、俺達は仲良く揃ってストーキングへ。
同じバスに乗り、同じ電車に乗り、同じ駅で乗り換える。
スタイル◎の高身長に目立つ白髪ロングとかなり人の目を引く容姿になってしまった元中年男性の父さんは、少し顔を赤くしながらも視線を気にしないようにボックス席の隅っこで新聞を読んでいた。
「っていうか、白山くんのパパって電車通勤なんだ。駐車場、結構いい車あったよね?」
「一応な。まあサンデードライバーってやつ?運転、好きだけど得意ではないらしいし」
「へぇ。サンデードライバーって東京事変以外で初めて聞いたかも」
そして丁度サディスティックな丸の内、大手町駅で降りた父さん。
そのまま数ヶ月前に栄転を果たした本社へ向かい、入口の脇にある警備室に入っていった。
「追いかけよ、白山くん」
「おっけー。……ちなみに、俺らって今どういう状況なの?」
「どういう……ああ、すごく自然な感じだよ。違和感を消してる、って言えばいいのかな」
「古明地こいしみたいな?」
「まああれほど出力は上げてないけど、だいたいそんな感じかな」
どうやら社員証で入っても止められるだろうと判断したらしい父さんは自分が白山カイトであるというのは明かさず、係員の人に苗字だけ伝えて誰かに取り次いでもらうように頼む。
そして数分後、確認が取れたらしく、父さんは入館証を受け取ってエレベーターの方へ向かっていき、俺達も少し遅れてそれを追いかけた。
まるでそれが当然かのように、止められることはなかった。
「えっと……白山くんのパパ、何階行った?」
「12階かな。ほら、会議室ってある」
「じゃ行こう。部屋はついてから探せばいいし」
「あ、気を付けて。こういうとこのエレベーターって階数決まってるらしいから」
「……あ、ホントだ」
そして近くのお姉様にエレベーターの使い方、12階までの行き方を軽く教えてもらい、俺達は父さんのことを追いかける。
12階に着くと迷子になりかねない程度には会議室の扉が並んでいたが、そこは万能全能黑谷ちゃん。
パチっと指を鳴らすだけでどこに父さんが向かったかは一発で判明してしまう。
あとはその誘導に従って俺達は会議室の方へ向かった。
「えっと……あった、ここかな」
「よし、覗こう、白山くん」
ちょっと悪い笑みを浮かべ、黑谷ちゃんとオレはは扉をちょっとだけ開け、部屋の中に潜り込む。
中には父さんと、その部下らしい男性が席に座って誰かを待っているようだった。
「いや〜びっくりしましたよ、まさか部長がTS症にかかっちゃうなんて。息子さんもちょっと前にかかってましたよね?やっぱ感染ったって感じですか?」
「いや、病院で聞いた限りでは遺伝が関係してるらしい。どっちかというと私に罹る余地があったからセイも発症してしまった形かな」
「へ〜、そんな感じなんですね。もしこれで僕も感染ったら美人になって合コンでモテモテ……って、男にモテても意味ないか……」
「ははっ、いい相手、見つかるといいな」
「本当見つからないんですよね……スペックは悪くないと思いますし、今の部長くらいの美人……いや、高望みですね。こういうの言っていいのかわかんないんですけど、今の部長、マジで美人ですよ」
「そう……か?確かに、少し人の目は多かったような気もするが……」
適当な世間話をしながら待ち時間を潰す父さんと部下の人。
そして5分もしない内に、「待ったか?待ったな、すまない白山!」とデカい声と共に非常にガタイの良い中年男性とその部下らしきこれまたガタイの良い男性が姿を現した。
「元気そうだな、土屋。忙しい時期だっていうのに、わざわざ時間をとってもらってすまない」
「お安い御用さ!お前にもお前の嫁さんにも随分世話になってるからな、言われた話は既に通しておいた。あとはドえらい別嬪さんになったって噂の白山をこの目で見ようと思った!以上!」
「ははっ。全く、変わらないなお前は」
どうやら彼は人事の方のおえらいさんらしい。
どこかで見たことあるな、と思ったら父さんの大学時代の同級生だ。
昔家に遊びに来てたような気がする。
そしてぱぱぱっと超速攻で必要十分条件な情報共有と手続きだけ済ませると、会議?面談?はあっという間に解散。
父さんは椅子に掛けていたジャケットを畳むと、そのまま会議室を出て、会社を去っていく。
俺達もトイレだけ借りた後、慌ててその後を追いかけた。
◇◇◇
「……なるほど。2人もこっちの方へ遊びに来てたんだね」
その後普通に父さんに追いついたものの、うっかり黑谷ちゃんが魔法を掛け忘れていたため無事にバレてしまった俺達。
しかし父さんは俺に甘く、またプライベートでは結構天然気味なためこんな適当な言い訳でも通じてしまい、それどころか美味しい海鮮丼まで食べさせてもらえる始末。
持つべきものは全知全能なガールフレンドとめちゃくちゃ美人で金のある父親である。
「父さん、俺大盛りにしてもいいかな?」
「ああ、いいぞ。食べ盛りなんだ、黑谷さんも好きなだけ頼んでくれ」
「そうですか?じゃあお言葉に甘えようかな」
そして俺達がメニューを決め終えると父さんは静かに手を上げて店員さんに声を掛けた。
「すまない、注文してもいいだろうか」
「はーい!お伺いしますねー!」
「この海鮮宝石丼の大盛りを2つと、ウニとイクラとカニの三宝丼を1つ、それとカニ汁を3つもらえるだろうか」
「かしこまりましたー!それと現在兄弟・姉妹サービスでデザートにシャーベットをお付けしているのですが、食後にお持ちしてもよろしいですか?」
「あ、いや、僕は──」
「お願いします!」
「お願いしまーす」
「かしこまりました!それでは失礼しますね!」
そして温かいほうじ茶を啜りながら、父さんは言った。
「……僕、そんなに若く見えるかい?」
俺達は全力で首を縦に振った。
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