第14話「世界の中心で性アイを叫んだけだもの」
「ヤバい助けて白山くん!!」
「うわ黑谷ちゃんが叫んでるの初めて見た」
昼休み、柄にもなく廊下を爆走していた黑谷ちゃん。
彼女はスライディングのような姿勢で教室に飛び込むと、魔法で周囲の人間を確認したうえで小動物のように俺の後ろへ隠れた。
「……どうしたの?黑谷ちゃん」
「いや、ちょっと遊び半分で占星術部行ってたんだけどさ」
「え占星術部あるの?占い部とかじゃなくて?女子サッカー部ないのに?」
「そこでちょっとだけ調子に乗っちゃってさ。ちょっとだけ」
「なんかもう自業自得だろ、この流れ」
「……使っちゃったんだ。チカラ」
「あ〜……」
俺が思わずため息を吐いた、その次の瞬間だった。
「おい!探せ!あんな有望な新人逃がしてたまるか!」
「あの子がタロットめくった瞬間星が揺れたの!間違いなく理を越えた何かが起こったに違いないわ!!」
「逃がすな!占って占わせて占い尽くせ!!」
「これもう寡占の方の占だがこの際気にするな!!」
それはもう10倍速にした大名行列の如き勢いで爆走していく十数人の集団。
「いつにも増して騒がしいなぁ」とは感じつつも普通に流す生徒達と、巧妙に目を逸らす黑谷ちゃん。
俺はもう一度ため息を吐き、黑谷ちゃんの手を取った。
「……占星術部の皆さん!!こいつがやりました!!」
「白山くん!!?」
「おい!!今言ったのどこの誰だ!?」
「ここです!!こっちこっち!!」
「白山くん!!!?」
「いたぞ!!捕まえろ!!」
「白山くん!!!!?」
そしてかわいそうなことに占星術部に連行されていく黑谷ちゃん。
俺はひらひらと手を振りながら彼女を見送った。
◇◇◇
「……ねえ、一旦セクハラ止めない?黑谷ちゃん」
「コノウラミハラサデオクベキカ」
「魔太郎が今の時代に流行るかは微妙なラインだよ」
放課後、いつものように図書館へ向かう俺達。
その道中、黑谷ちゃんは昼休みの借りを返すとでも言わんばかりに乳を触り尻を触り腹を触り脚を触り顔を触りのやりたい放題。
思ったよりも性欲だなと思いつつ図書館の扉を開けようとしたところで、背後に感じる慣れない気配。
振り返ると、そこには白髪ツーサイドアップというフィクションでしか見ないタイプの美少女が立っていた。
「えっと……どちら様?」
「失礼致します。私占星術部所属1年、甘神アマミと申します。部長の命によって黑谷様を監視するべく図書研究部の兼部届を出しに参りました」
「うわまた属性過多っぽいやつだ」
「まあフィクションだしね」
「黑谷ちゃんうるさい」
要は黑谷ちゃんを占星術部に引き抜くためにスパイとして送り込まれたらしい。
これ馬鹿正直に教えてくれるあたり多分そんなに悪い奴らではないんだろう。
まあ悪いやつだったら黑谷ちゃんレーダーに引っかかってるだろうしそこは安心か。
「あれもアクティブスキルだけど」
「せめてそれくらいパッシブにしなよ」
……まあ、何はともあれスパイだろうがなんだろうが一応図書研究部の至上命題らしい部員確保には繋がるということで俺達は彼女を部室の方に案内した。
「……こちらが活動領域ですか?」
「うん。流石にSwitchとかはないけど最近WiiがWiiUになったよ」
「それが活動だと?やはり黑谷様の時間をそのように使い潰すのは非常に非効率的では──」
お、これは貴重な常識ツッコミ枠かと思ったところで、部室のドアががちゃっと開く。
「新入部員が来た」という情報を受け取ったらしい阿須加先生だった。
「いや〜、おまたせしちゃった?でも一応急いだのよ?だってまたまた新入部員なんて!」
「あ、甘神ちゃん。これ、顧問の阿須加先生」
「……なるほど。理解しました」
そして彼女を見るなり、甘神ちゃんはスマートフォンを取り出した。
「……はい。もしもし部長ですか?……はい。はい。理由ですか?図書研の顧問がドストライクだったので。……はい。……はい。そうですね。ではたった今から部長じゃなくてお姉ちゃんということで。はい。はい。それでは失礼します、お姉ちゃん」
「……ねえ、白山くん」
「……うん、今の電話って……」
「はい。たった今占星術部を退部してきました。これで私甘神アマミは純然たる図書研究部部員です。なんなりと使い潰してくださいませ、阿須加先生」
「うんうん。これからよろしくね〜、甘神ちゃん」
「……白山くん、この世界性欲で回り過ぎじゃない?」
「それ俺のセリフなんだわ」
こうして何故か、新たな仲間が図書研究部に加わった。




