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裏3話「黑谷ちゃんは貢ぎたい」

 白山くんは魔性だ。


 男の子だろうと女の子だろうと魅了してやまない怪物だ。


 アーモンドアイにたっぷり乗せられたまつ毛、同じく大盛りのおっぱい、艶のあるボブカット、控えめ主張なメイク、特盛りおっぱい……


 多分一度でもその姿を見て、言葉を交わしてしまえば彼女への好感度をマイナスにすることなど到底不可能な話だろう。


 そう、だからこれは仕方のない。


 仕方のないことなのだ。



「いや仕方なくないよね!?「女友達はバニースーツで遊びに行くなんて普通」とか信じるわけなくない!?わざわざ用意されても着ないよ俺!?」


「チッ」


「ガッツリ舌打ちした!!黑谷ちゃんガッツリ舌打ちしたじゃん!!」



 これだから人というのは駄目な存在だ。


 不必要に賢すぎる。


 私は肺の中に残ったありったけの空気をため息として吐き出した。



「はあ……仕方ない。ラーメンでも食べ行く?私、お詫びに奢るよ」


「なんか都合よく貢がれてる気もするけど……奢りならいっか」


「チョロ」


「なんか言った?」


「ううん。白山くん、めっちゃチョロいなって」


「言ってんだろそれ」



◇◇◇



「大将、味玉ラーメンチャーシュー大盛りにんにく追加、二人前ね」


「あいよ!」



 夕飯には少し早い17時過ぎ、ママに「白山くんとご飯食べてくる」とだけ連絡を入れて私達はカウンター席に並ぶ。


 流石にこの時間だと店内はガラガラでお店は私達と大将だけ。


 もう何度か白山くんも連れてきてるからか、顔なじみの大将も彼女の顔を覚えた様子。


 それから適当な世間話をしつつ5分もしない内に出てくる豚骨ラーメン。


 私は白山くんに割り箸とレンゲを回し、黒胡椒とニンニクチップを添加ちゃんしてから「いただきます」と手を合わせた。



「……あれ、大将、スープ変えた?私こっちの方が好きかも」


「お、やっぱり嬢ちゃんは気づくか。そうなんだよ、やぁっと納得のいく配合が出来たんだ。美味いだろ?」


「うん、いいね」


「へへっ、ありがとよ!んだけどまだ試作品みたいなもんだからな、今日はタダってことで!」


「え、いいんですか?」


「おうよ!嬢ちゃんのお友達も何度も来てもらってるもんな、これからもよろしく!」



 そして相変わらずボリュームたっぷりの豚骨ラーメンを胃に収め、私と白山くんは揃って「ごちそうさまでした」と手を合わせる。


 おまけに黒糖きなこアイスまでサービスしてもらって、これが江戸っ子気質かぁ、ここ横浜だけどなぁ、なんてことを考えながら大将にそれはもうめちゃくちゃお礼を言って、それから私達はお店を後にした。



「白山くん、今日は大変よくできました」


「よく出来た……って、何が?」


「ふふっ、私の歯見るの、必死に我慢してたもんね」


「……な、なっ──」


「顔真っ赤。……そうだ、カラオケでも寄る?今度はちゃんと奢るよ」


「いいよ、そうしよ。明日はどうせ土曜だし……なんなら、オールでもいいけど」


「白山くんがそう言うなら……うん、お言葉に甘えよっかな」

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