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第12話「実力も運のうち」

「1つ聞きたいんだけどさ」


「何?」


「黑谷ちゃんって「運」って概念ある?」



 ある普通の日の昼休み。


 俺が尋ねると、黑谷ちゃんは少し考えてから言った。



「なくはないかな。なくは」


「あ、そんなレベルなんだ……」


「なんて言えば良いんだろ。あるっちゃあるんだけど、普通に弄れる概念なんだよね」



 それから黑谷ちゃんはもう少し考えて、俺に1つ提案する。



「白山くん、今日も暇でしょ?帰り、ゲーセン行かない?具体的に見せてあげるから」


「具体的にって……運を?」


「そう。多分面白いよ。Youtubeでも一生見れないくらい」



◇◇◇



 というわけで連れてこられたROUND1のメダルゲームコーナー。


 「どれでもいいけど」なんて言いながら黑谷ちゃんは俺に台を選ぶよう促してくる。


 俺は少し悩んでから、フロアの片隅にあるパチンコ台を指差した。



「エヴァ15?いいよ、私あの台好きだし」


「……へぇ」


「初めて打った日ね、36万もらったんだ」


「アウトアウトアウトアウト」


「別にいいでしょ。ほら、始めるよ」



 黑谷ちゃんが百円玉を入れると、残玉数のカウントが100になる。


 それから彼女は慣れた手つきで「レバブル」「インパクトフラッシュ」「オートボタン」のカスタムをONにすると、ハンドルを捻って一玉だけ打ち出した。


 打ち出された玉はまるでそのように決められたかのような完璧な軌道を描いて入賞口に飛び込み、それを見計らったかのように機械が響かすけたたましい、脳を溶かすような快音。


 そして一分ほど画面を見守っていると、これまた大音量と共に大きく「777」と揃ったリザルトが映し出されていた。



「はい。これでおしまい。メダルだと……どうだろ、6500枚くらい出るかな」


「え、100円で?」


「うん。……あ、この台1/319で継続率81%だから普通にやったらそんな出ないけどね」


「え、ってことは今、一回で1/319引いたってこと……?」


「ううん。7揃いは当たりの中の3%だから3/31900。大体0.01%ってところかな」


「じゃあ、黑谷ちゃんは魔法で1/10000引いたの?」


「ふふっ、ホント、白山くんはいい反応してくれるね」



 ハンドルを奥に捻ったまま、黑谷ちゃんはそう笑う。


 その奥ではひたすら7揃いとボーナスが繰り返されていた。



「実はね、運じゃないんだ、これ」


「え、そうなの?」


「そうだよ。このパチンコ台だって、結局のところただの機械でしかない。機械でしかないってことは、結局結果を決めてるのもただの電気信号でしかない。確かに私もチカラを使ったけど、それは「運」なんて曖昧なものじゃなくて、ただそういう結果を出す電気信号を送ってあげただけ」


「……ってことは、それってつまり──」


「ふふっ、大正解。私がやってたのは「イカサマ」だよ」



 そう言って最高に楽しそうに笑う黑谷ちゃん。


 俺はドル箱にメダルを入れながら彼女の笑い声を聞いていた。



「みんな「運」って言うけど、実際にはそんなもの滅多にない。こういう機械には大体擬似乱数っていうそれっぽいシステムがあるだけで完全ランダムなんてものはないし、現実なんてもっと因果関係に満ち溢れてる。私がホントに「運」って思ってることなんて、筋肉ルーレットくらいだよ」


「あ、あれはほんとに乱数なんだ……」



 「あれはすごいよ。ホントにすごい」と珍しく手放しに他人を褒める黑谷ちゃん。


 どうやら一番好きな芸人らしい。


 あとバカリズムとかも好きって言ってたし、多分ピン芸人大好きガールなんだろう。



「ところで白山くん、今って何時?」


「今?……あ、16時前、かな」


「一応確認しておくんだけどさ、白山くん」


「……?何?」


「これ、全部出し切るまで3時間くらいかかるけど、どうする?」


「……帰るか、流石に」



 そして俺達は1時間くらいパチンコを眺めて、1時間でメダルを使い切って、黑谷ちゃんの奢りで油そばを食べて、それから家に帰った。

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