舞踏会
「良いわよ! 婚約なんかこっちからお断りだわ!」
私は舞踏会の会場で叫んだ。
叫ぶと同時に、お行儀悪くテーブルに飛び乗る。
品の良いお貴族様たちが、驚いて私を見る。
「あんたも、あんたも! 私がイジメられてるのを笑って見てて!」
もう、みーんな埋まっちゃえ!!
私は魔法を発動した。
会場内にザーッと小石が降る。
阿鼻叫喚。
小石を踏んで転ぶ令息。
足が埋まって動けなくなる令嬢。
「こ、こんな庶民向けの道路工事魔法しか使えないくせに、よくも侯爵家の私にこんな仕打ちを……!」
「何言ってんのよ! 女連れで婚約破棄とか言い出したのはそっちでしょ! 失礼にもほどがあるわ!」
破砕魔法!
溜まった小石がさらりと砂になり、貴族たちは腿まで砂に埋まって身動きが取れなくなる。
「知ってる? 石灰。これに水を混ぜるとカッチカチに固まるのよ! どう? 試してみる?」
私は水魔法を発動し、指先にくるりと少量の水を巻き付かせた。
「ば、バカ! やめろ!」
「ふん」
私は水を消し、砂の上をベランダまで歩く。
「じゃあね! バイバイ!」
私はピョンとバルコニーから飛び降りて、足元に瞬間的に道を作り、2階の会場から地上まで駆け下りた。
庭にも何人もの貴族が居り、驚いた顔で空中の道を見上げている。
「皆様方、わたくし只今ここのご令息に婚約破棄されました! これはそのお祝いです、どうぞ!」
パチン、と指を鳴らすと、今駆け下りてきた道が、キラキラと砕ける。
「金です! どうぞお好きにお持ちください!」
「ええええっ!?」
庭はパニックに陥り、その隙にとっととお屋敷の門を抜ける。
その私の背を追うように、爆音の怒鳴り声が響いてくる。
「馬鹿息子ー!! 何が道路工事魔法だ! あの娘の能力を知らんのか!! 今すぐ謝って来ーい!」
残念、もう遅い。私は逃げる。
「あれ、終わったの?」
「うん! ……って、わあ! 殿下!」
この国の末っ子王子がそこにいた。
「な、何しにここへ……」
「君を口説きに」
王子は微笑む。
「災害視察の時、山で生き埋めになった僕を助けてくれた時から、僕は君だけを見ていたよ」
……ああ! あの時!
「あ、あんな泥だらけの姿……」
「僕も泥だらけだったから、お揃いだね」
「ええっ?」
私は吹き出し、ふたりで笑い合う。
「ところで、あんなに金を撒いたら経済が混乱しない?」
「あれは『愚か者の金』、黄鉄鉱だから大丈夫ですよ」
「なるほど! まさに愚か者の狂宴だね」
私たちは騒動に背を向け、肩を並べて歩き出した。
ちなみに生成したのはちゃんと消石灰。あとほとんど砂と砂利。
なろうラジオ大賞(1000文字制限)の投稿期間が終わったら続きを書こうかと思います。応援よろしくお願いいたします!




