新入生
思えばこの辺りから大きな流れに飲まれ
だんだんと抜け出せなくなってたんだろうな。
卒業があれば入学もある。
元気の有り余ったどうしようもない奴らが嵐ヶ丘に入学してきた。
双天鬼に憧れる者もいれば嵐ヶ丘のてっぺんを狙う者もいる。
色々ある中ただ1つ確かな事はーー
昼下がりの屋上に俺らはいた。
「なぁ鷹鬼。今年の新入生のヤンキー率やばない?」
「…別に気にする事ないだろ。」
いやいやいやいや。気にするて。だってヤンキーとか怖いじゃん。
「筋肉お化けはどう思う?」
「元気良さそうな奴らが多くていいんじゃない?」
いやいやいやいや。元気は確かに必要。でもさ今のそれは絶対にめんどうな元気じゃん。
「辻の意見を伺おうか。」
「んーなんつーか入学した時のお前らみたい。」
いやいやいやいや。多少自覚はあるけどそんならやべー奴らじゃんか。
廊下を歩いてる時にさ握手してください!とか憧れてます!とかならいいのよ。
鷹鬼が新入生の女の子達にキャーキャー言われてる感じとかもいいのよ。
数名がめっちゃ睨んで来るから怖いの。ヨッシー登校拒否しちゃいそう。癒してみさぴ。
ほら見てごらんよ校舎裏のあそこ。リーゼントの彼が1人でいっぱいボコボコにしてる。あんなんに絡まれたらマヂ無理だょ。。。。
タバコの煙を空に向かって吐き出しながら皆を呼ぶ。
「ねぇあそこ見てよ。リーゼントのやべぇ奴が1人ですげぇ事してる。」
「…久里鬼も入学早々上級生ボコボコにしてただろ。」
「そこで鷹鬼と久里鬼が出会ったんだよな?」
「そして俺と松浦がそれぞれぶん殴られてこの4人で一緒にいるようになったんだよな。」
そういう事じゃない。なんか感慨深い感じになるな。
あんなんがここ来たらどうすんのって話ですよ。
屋上の扉が勢いよく開かれる。
「よぉ先輩方。1年の抗争は俺が制した。俺の名前は桑原。通称ヘアースタイルと呼ばれている。」
ほら言わんこっちゃない。速攻きたやん。
「おう。来ると思ってた。あんな人数相手に勝つならそりゃトップだろ。怖い帰れ。」
「…新学期はこういうの多いな。」
鷹鬼はやれやれという様子で読んでいたフランス語の詩集をパタっと閉じた。
「なんだてめえ。双天鬼に挑むならまずは俺を倒してからにしろ!」
「まぁ待てよきんに君。ヘアスタはわざわざ1人で来てるやん。ここは俺が直接やってやんよ。」
「ちっ仕方ねえな。」
いやいやいやいや。仕方ねえな。じゃねえな。普通に考えたら「うるせえ!俺にやらせろ!」からのきんに君がバトル開始みたいな流れじゃん。なに簡単に引き下がってんの?理由が分からない喧嘩やだよぅ。
「豪鬼…あんたの強さは知っている。でも今日用事があるのは迅鬼!おめえの方だ!」
良かった。俺は許された。
「おーい。鷹鬼。お前に用事だってよ。」
「…やれやれ。」
鷹鬼は怠そうに立ち上がった。
「理由はくだらねえかもしれない。でも俺は迅鬼!お前を倒す。」
「…やり合う前に理由を聞かせろ。」
ヘアスタから語られる迅鬼を狙う理由とはーーー
元気がありすぎる新入生も
困ったもんですな。




