ダーツとの出会い
喧騒から離れ珍しく鷹鬼からの誘い。
珍しさから俺は着いてくことにした。
「…鷹鬼とはまぁそんな感じな出会い方だった」
みさに話し終えた俺はテレビに視線を移す。
相変わらず鷹鬼は的確にパンチを打ち込んでいる。
「鷹鬼くん本当にチャンピオン倒しちゃうんじゃない?」
「確実にチャンピオンになるよあいつは」
そんな会話をしつつ見ていると画面の中の鷹鬼はフっと笑みを浮かべる。
ーー決まるぞ。あいつがあんな顔した後は確実に相手は倒れている。ずっとそうだった。
小柄な体つきからは想像も出来ないパワー。
どこから飛んできたか分からないパンチ。
あれは誰にも避けれないし立ってられない。
倒れた世界チャンプは起き上がれないだろう。
「すげぇなあいつ世界を奪りやがった!」
「鷹鬼くんが世界一?なんだか信じられない」
みさが微笑みながら言う。
「あいつが世界一位なら俺は世界二位だな」
「ダーツしながらはしゃいでたあの頃には想像もつかなかった事よね」
そうダーツとみさと引き合わせてくれたのは
鷹鬼だった。
「…なあ今日行きたいとこあるんだけど学校終わったら一緒行かね?」
「鷹鬼からデートの誘いなんて珍しいないいぜ」
「遊びに行くのをデートって言うなよ気持ちわりぃ」
放課後。どこへ行くんだろう?と疑問に思いつつも鷹鬼に着いて行く。
そして一件の店の前で歩みを止める。
ーDarts & Cafe アンジュー
なんだここは。学生が来るには洒落すぎだろ。イケメンは遊ぶ店までイケメンか。なんか悔しい。
店のドアを開けると元気な声で「いらっしゃいませ!」と女性店員から声をかけられる。
それを尻目に奥へ進む。
「…早速だけど投げようぜ」
鷹鬼はマイダーツをスっと取り出す。なんだよこいつ今日ずっとかっこいいじゃん。ずっと悔しいじゃん。
鷹鬼から放たれたダーツは吸い込まれるように真ん中へ集まる。
「ちょっと貸してくれ俺も投げてみる」
鷹鬼からダーツを賃りて勢いよく投げる。えっムズい。ボードにすら刺さらない。
「……チクショウ、力入れすぎるとダメなんだな」
「そうだ。お前は力加減ってのを覚えろ」
「力加減? そんなもん、ケンカに必要ねぇ!」
「いや、お前の拳で相手死んだら困るだろ」
「……たしかに」
ダーツに興じている2人は普段あまり見せることのない普通の学生の顔をしていた。
ダーツを楽しむ俺にとんでもない事が
起きるなどこの時は考えもしていなかった。