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神様ありがとう

平和な夏休みの一コマ。

だが忘れられぬ1日となる。

アンジュでの話し合いの後。

どこにも目立った動きはなく本当に平和な日々が続いていた。平和はいいけど刺激がなくてちょっと不満。

話し合いがないのはいい事だけどめっちゃ不満。

俺と鷹鬼は夏休みを迎え相変わらず二人でいた。

何をするでもなく公園の木陰にあるベンチに腰をおろしていた。

「なぁ鷹鬼最近平和すぎてなんか物足りない」

鷹鬼は英文で書かれた小説のページをめくりながら静かに答える。

「…平和はいい事じゃないか。暇ならお前も本を読んでみたらどうだ?知識は一生の宝になるぞ。」

英文だし小説だしめっちゃ頭いいじゃん。そしてめっちゃ強い。イケメン。神様って不公平だなぁ。

「小説は…いいかな。そもそも英文とか読めないし」

「…別に読むのは英文じゃなくてもいいだろ」

ちくしょう。クールガイめ。タバコに火をつけ煙を吐き出す。

「…木陰でも流石に暑いな」

「そうだね。どっか行くか」

「…気になってる本があるんだ。本屋に行こう」

2人で本屋へ向かう。

中へ入ると鷹鬼は哲学書のコーナーへ迷うことなく歩を進める。

ダメだ。俺が哲学とかのコーナーへ行ったら文字の暴力に耐えかねて文字に殺されてしまう。

鷹鬼と離れ雑誌コーナーへと向かう。

正直本屋はあまり興味ないが涼しいこの状況にずっといたい。文明の利器エアコンに幸せを感じつつなんとなく雑誌を眺めていると

「あっ久里鬼くん!」

この声はマイエンジェルみささん!

声のする方を向くとみささんがいた。

「あっみささん!こんにちは!今日はバイト休み?」

「うん今日はお休みで欲しい雑誌があって買いにきてたの。久里鬼くんもお買い物?」

「はい!実は哲学に興味があって哲学書を買いにきてて!」

「哲学とかなんだか難しそうな本読むのね。すごい」

「いえいえ知識は一生の宝ですから!あっまたみささんがお店にいる時遊びに行きますね!」

「"さん"付けしてたら他人行儀みたいだしさん付けやめてよ」笑いながらみささんが言う。

「いやーでもなんだか俺だけ呼び捨てするのは」

「じゃあ私はあだ名で呼ぶから!ヨシトくんだよね?じゃあ今日からヨッシー!」

「あっそれじゃあみ…みさ」めっちゃ照れる。

「そろそろ行かなきゃ!あっ連絡先交換しとこ!」

あぁ神様ありがとう。お父さんお母さん俺をこの世に誕生させてくれてありがとう。本屋に連れてきてくれてありがとう鷹鬼。今日から僕はヨッシーです。

「それじゃあまたね」手を振り別れる。

手の振り方まで可愛い。マイエンジェル。

ボソッと「マイエンジェル」と呟くと買い物を終えた鷹鬼が隣にいた。

流石の鷹鬼も今日は呆れを通り越し不気味なものを見るような目で俺を見ていた。

幸せ。

今日ならいきなり誰かに殴られても

ニコニコしながら許す自信がある。

神様って不公平じゃなかった。

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