第四勢力
ナラカは中庭から外廊下を経て校舎内に入る。
ナラカは廊下を駆け、全体の様子を観察する。中庭のような腹が異形に膨れ上がっている死体がちょくちょく見かけられる。廊下に集まった赤い水だまりが走っているナラカの足元ににかかるが、そんなことを気にするほど余裕はない。一分一秒が惜しい。廊下を走っていても人っ子一人見当たらない。どこかの教室または外敵から守れる場所に集まって避難しているのか。そもそも外敵っといってもこちらには何も情報がない。しかし確実に言えることが一つある。
「この状況を手引きした奴らは、相当頭がイカ
れてやがる。」
ナラカの顔は顔も知らない敵への怒りで燃え上がっていいた。正方形の校舎を一階から四階までローラー式にしらみ潰しに回ることを決める。それで生徒がいなければ明星学園の中でいちばんの敷地面積を誇る体育館にいると推測、いや確実に体育館にいるだろう。こんな異常事態で生徒をバラバラに離散させることは先生方はしないだろう。しかもここは山の中の学校だ。町までもが学校のようなパンデミック状態ならば山の中にあるこの学校で生徒を隔離した方が効率的に良い。今やることは逃げ遅れた生徒を探し出し、体育館に無事に送ることだ。
「やめろ!こっちくるな化け物‼︎ 」
1階の中階段のところまで走ってきたところで上から悲鳴と怒声が混ざった声が聞こえる。ナラカはすぐさま階段を駆け上がり2階に上がると細い廊下の先に男子生徒が誰かに襲われている。ナラカからではそいつが男子生徒を首を絞めようとし、男子生徒がそれに抗い掴みかかろうとしている手を抑制している様に見えるだけで相手の顔が見えないことから今の時点では相手が人間なのかそれ以外なのかが判別できない。ナラカはそいつの真後ろまで走り、その促進力を跳躍力にエネルギー変換をし、左足をまるで槌を振り落とし、犯罪者を裁く裁判官のように上げ、そいつの頭目掛けて踵落としを繰り出す。そいつの頭は衝撃に耐えれなかったのか、地面に体ごと倒れる。顔が今の衝撃で廊下に陥没したから当分は動けないだろう。その隙にナラカは男子生徒を腕に抱え、距離を稼ぐ。
「大丈夫かい君」
腕に抱えながら男子生徒に問いかける。男子生徒は状況が理解できないのか口をへの形にしている。
「あっはい。怪我はしてません」
「それなら助けた甲斐もあったもんだ」
そう言いながらナラカは男子生徒を抱えている腕をテーブルクロスのようにすぐさま引っ込める。男子生徒は重力に従って廊下に尻餅をつき落ちていった。
「いって〜!さっきまで「大丈夫かい?」とか言っていたのに何で怪我させるんですか‼︎」
「ごめんごめん男を好き好んでお姫様抱っこする趣味ないから」
男子生徒が上目遣いしながら何言いたげな顔をしている。
「グァぅ〜アゥゥ!」
前方のそいつを見ると予想を遥かに凌駕するスピードで起き上がり、先程まで見えなかった全体像が見える。ナラカは紫色の瞳孔が大きく開け。見た目は完全に人間のもので、服も着ていて至って変わったことはないが、1番不可解なのは顔面だ。顔は赤黒く染まりあがり、眼窩は人間の倍以上あり、そこから眼球が視神経と共に今にも落ちそうに嵌っている。
「まだ動くのかよ。本物の化け物だろ‼︎」
男子生徒がヒステリックな声を上げる。
「君の言うとおりアレは君たちから見たら化け物
だろうね。」
「アレが何なのか知ってるんですか!」
ナラカはアレの正体にを知ってる。アレは悪魔軍の死して形成された灰を、人間に飲ませ、
灰の膨大な力を支配できなかった成れの果ての姿。神にも悪魔にも人間にも属さないモノ。そのことから「第四勢力」と呼ばれている。
「一つだけ言えることはアレは力が強いだけの木
偶の坊だ」
男子生徒が尻餅ついた尻を痛そうにさすりながら立ち上がり、目の前にいる第四戦力に向け拳を構えてファイティングポーズをする。
「それなら多勢に無勢。二人がかりで倒して進みましょう!」
さっきまで断末魔を上げていた様子とはガラリと変わり、ナラカも勝手に戦う流れにして、強気になっている。図々しいやつだ。どのみちアイツ倒さない限り階段まで辿りつかない。
「そういえば今更ながら君はどこの誰なのかな?」
「俺は1年3組部曲翔摩
です。」
「オッケー翔太郎。君の案に乗ろうか。」
ナラカは一歩踏み出し第四戦力に近づく。
「グァぁーー‼︎」
第四勢力も戦闘の気配を察したのか咆哮を上げる。ナラカと翔摩が同時に走り出し、第四勢力も走り出す。両者が走り出す雑踏が細い廊下
に響き渡った。