日常茶飯
火山灰が天空を支配している様な空の下、俺は
は通学している高校の明星学園へと向かって
いた。明星学園はここら一帯では最大の敷地面
積を誇り、他の学校とは一風変わった高校であ
る。明星学園は以前は星や宇宙などの天文学を
研究、探求するために作られた政府公認の特別
機関であった。1961年4月12日にユーリガガー
リンが人類初めてこの宇宙船地球号という宇宙
規模で考えたら塵芥みたいな船から飛び出し月
の地面に足跡を踏みしめた日人々はどれだけ歓
喜の雄叫びをあげたことだろう。ガガーリンの
この偉業で世界の人々はこの宇宙という夢幻の
世界に輪郭を与え、地球の形を明瞭にした。こ
の明星学園の初代校長もこの偉業に魅了され当
時働いていた国会議員という立場をふんだんに
利用してこの明星学園を設立したと聞いてい
る。そんなどうでもいいことを考えていると通
学で1番過酷といっても過言ではない角度45度
の坂道が見えてくる。明星学園を建設にあたっ
て星が見えるところ=標高が高いところ=山の
頂点という三すくみの関係によって山中を朝か
ら苦労する羽目になっている。後一年でこの苦
労も卒業証書のように美化されるだろうか。坂
道を歩き出していると目の前に目的地が見え、
校門をくぐる。玄関の横に年組出席番号が記載
された紙が貼られているホワイトボードを生徒
達がまるで留置場から出てきた犯罪者をメディ
アどもが囲んでいるようにごちゃごちゃしてい
る。そんななんも非はないホワイトボードに同
情して、ナラカはこの雑多の中に入る気力は無
くなり、ホワイトボードを無視し、校内にる。
スマホでラインを確認すると案の定イザナから
メールで
「私3年2組だった!ちなみにナラカも2組だったから3年連続だね。」
俺は短く返信を送る。
「じゃあ9連続だな。」
イザナとは小学校から今に至るまで同じクラス
だ。少し奇妙なことだけどもそれによってデメ
リットを被ったことは一度もない。俺との適度
な距離感で仲良くしてくれていつも感謝してい
る。スマホを制服のポケットに入れ、3階にあ
る3年2組へ向かう。1階の階段から3階へ足を
運び、3階に着いたら生徒の声で溢れている。
その声に一つ一つ耳を傾ける。要約すると卒業
旅行どこへ行くかだったり、来年の受験への苦
悩などを話している。会話の端々に最後の1年
という言葉が浮かんで少し名残り惜しくなる。
3年4組と書かれた教室を見つけて、無造作に
入り、席順を確認して座る。席は窓側の3列目
だった。先生が来るまで音楽を聞いて時間を潰
そうとしてポケットからワイヤレスイヤホンを
付け、音楽のメロディーに身体を預ける。この
騒々しくしている男子どもとの対照的な物静か
な俺に、おのずと女子は俺に目が止まる。それ
を俺は見逃さない。その女子をロックオンし、
交友を築ければ確実に彼女になる。確実に!。
カップルになれば後はこっちのものだ。カップ
ルしか許されない禁断の行為ができる。俺が禁
断の行為に想像を膨らませていると肩に衝撃が
走る。
「なに挨拶なしにカッコつけて音楽とか聞いてん
の!」
「カッコつけてはなにが悪いんだよ!このガヤガ
ヤしてる教室に一人音楽に身に任せる唯一の男
子高校カッコいいだろう。」
イザナはナラカの言ってる事がまるで理解でき
てないのか、理解する価値もないのか呆れてた
め息をこぼす。
「そんなモテて何になるの?」
心底不思議そうに質問してくる。イザナは苦虫
を噛み締めたような表情を示す。
「強いて言うなら性欲の発散かな」
今度は呆れ顔に怒りという感情をブレンドした
表情に変化する。少し危機感を抱く。
「最低!クズ!ばか!!」
イザナは般若のような怒りの顔になりながら俺
を見下しながら睥睨し席へと戻っていく。あん
なことを女子に言えば怒れたり軽蔑されるのは
当たり前なのだが、イザナはこの範疇ではな
い。ナラカは席に座っているイザナを見る。服
の上からでもわかる体のラインは無駄な贅肉が
ないことを示しその上、無駄な贅肉を全て胸に
凝縮したような立派なものが2房ついている。
そして顔もこの明星学園の5本の指に入るもの
だから当然モテる。その圧倒的なモテ度を誇る
イザナは、思春期男子から欲情の眼差しに四六
時中されされた過去(正確には現在進行形)から
男子に猛烈な嫌悪感を抱いている。
当人曰く男性は虫と同じぐらい生理的に無理ら
しい。「なんとも難儀な性格だな」とナラカは思
い、イザナへのご機嫌を良くするための策を思
索するのであった。