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蒼天灰蓋

「ピロン!ピロン!」


ベッドの淵にあるスマホが泣き止まない赤ん坊


のように一向に泣き止まない。


「うぅ〜〜ねみぃー」


ベッドから身体を起こし、まだ目が覚醒してな


い霧がかかった様な視界を指で擦する。ある程


度視界が明瞭になり始めたタイミングでベッド


脇に置かせていたアラーム画面のスマホを指を


トン!とタップする。アラーム画面から切り替


わってホーム画面に変わったスマホには7時50


分と表示される。閻堂ナラカは名残惜しいベ


ッドから身を離しリビングに向かい、65インチ


のテレビをリモコンの搭載されている赤外線を


経由してテレビをつける。テレビをつけると冷


蔵庫から500ミニリットルの水を一気飲みす


る。寝ている間に乾きった喉に水流ポンプのよ


うに水を体内に入れたおかげで、喉は潤っが、


腹が「ギュルギュル」と音を立て、少し気味が


悪い。半分以上飲み干したペットボトルを食卓


テーブルに置き、リモコンのボタンを子どもが


好きそうな、単調としたアニメからニュース番


組に切り替える。いつもの女子アナウンサーが 


淡々とした声色で近くの動物園でパンダの赤ん


坊が生まれたという至って普通かつ平和なニュ


ースが鼓膜に入ってきた。


「平和なニュースくらい声色変えろよ」


画面の向こう側でロボットの様に読み上げてい


る女子アナウンサーに語る。この女子アナウン


サーも最初はこんな上手く話せなかったと思


う。たくさんカンペを読み、声が麻痺するぐら


い死に物狂いで練習し、中々成果もでなく上司


に怒声を浴びせられたかもしれない。その一辺


1メートルの正方形の部屋の狭く誰も助けは来


なく、出れる方法はひたすら反復練習するしか


ない。その成果が報われて、一人前のアナウン


サーになって狭い部屋から脱出したのはいいも


のの、毎日毎日同じことの繰り返しで今ではた


だ文字を覚えて読むだけの仕事になり始めてい 


ることは毎日聞く声色で理解できる。慣れとい   


うことはこんなにも人の感情を削ぎ落とすもの


かといつもこの女子アナウンサーを見てると思


う。このアナウンサーの感情の宿った無味乾燥


ではない声色が好きだったのに。俺は500ミニ


リットルのペットボトルを飲み干し、洗面台で


顔を洗う。手の平をクレーターみたいな凹んだ


形にして貯めて、顔を直撃させる。洗面台の横


に掛けてあったタオルで顔についた水滴を吸収


し、正面の鏡に映った俺の半身を見る。身長は


178センチで、唇は豚肉を千切りをした様に薄  


く、鼻は潰れてもなく、尖りすぎてもなくいっ


たってノーマルな形だが、一際目立つのは眼窩


に上手くフィットした紫色の目だ。親の遺伝か


と思ったが調べた結果違ったか完全に突然変異


である。リビングに戻ってスマホを確認すると


荒波イザナから「新学期から遅刻しないでよ。」


とラインがきて、口角を上げる。短く返信を返


して、バックにスマホをしまって、肩にかけ


る。玄関に移動し、外に続く扉を開ける半開き


にしたまま誰もいない家に一瞥し、「行ってきま


す」と言い、扉を閉める。外に出て空を見上げ


早速ため息をこぼす。空は今にも雨が降りそう


な火山灰の様な積乱雲が群がっている。


俺は一回家に戻り一応雨に備えるため傘を持


ち、今度こそ学校へと向かうのであった。








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