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神を---するものが必要

世界は神に支配されている。


そう思い始めたのはいつだったか。まだ知性を


有していなかったガキだった時か、または神に


よって魔界から夢と自由、世界への羨望が硝子


細工のように壊れさり、絶望感と虚無感がブレ


ンドしたフィルターが僕たちの網膜にピッタリ


張り付いた時か。たぶん後者が正解と僕は魔界


の底辺から遥か上空に浮かぶ天界を見上げそう


解釈する。神による侵攻がなかった、あの楽し


くもなく、苦しくもない日常茶飯な魔界の営み


が今も続いていたのだろうか。そんな遠い過去


を見つめる目で上空で神軍と戦う同胞を見つめ


る。


「もう無理だよ。」


こんな戦争中に決して口にはしては行けない言


葉は諦観の念と共に漏れる。もし今の言葉が先


輩の耳に入っていたならば、胸ぐらを掴ま


れて、


「戦争中に諦める奴がいるか!。諦めたら試合


(戦争)終了だろうが!。」


と人間界に昔流行っていたフレーズを駆使して


先輩にツッコまれるだろうな。あの神に本気


で勝てると馬鹿みたいに信じていた先輩を思い


出す。当時は先輩のことが神の脅威を知らない


無知蒙昧なところが心底嫌いだった。その上無


知のくせに悪魔は神に絶対勝てるとほざくのが


耳に入るたびに苛立って、何度も先輩とは喧嘩


になり、実戦訓練の時にもめっためったにボコ


られ、頭に出来たたんこぶの数はとうに100は


超えるだろう。そんな生活を繰り返していくう


ちに稀に考え方や感じ方がパズルのピースのよ


うにカチッとハマる時があるとは、酒を片


手に時間を忘れるほど話尽くした。気付けば先


輩に向けていた嫌悪が少し希釈されその薄れた


嫌悪が少しずつ良い思い出に変わっていく実感


を感じていた。


「もう少し戦争が遅かったら友と呼べるようにな


ったのかな先輩。」


瓦礫に背を向けている先輩に語りかける。


上半身から下がまるっきし欠落した先発に。


欠落した下半身は神軍の術によって灰すら残さ


ずにこの世界から消えた。悪魔は体が焼かれた


り、切断されたとしても灰になるだけで、その


欠落した体の一部の灰を一粒でも回収できれば


、その灰を培養して増殖させそれを元に失った


体を完治させることができる。それは死後にも


適用される。死後に灰になった悪魔は、足、


手、胴体、頭の灰を回収できれば、死んだあと


でも生前の記憶を忘れて新しい個体として


転生できる。しかし、残念なことに先輩の下


半身の灰はもう世界には存在しないから、無事


生まれ変わったとしても、両足が欠如した先輩


だった個体が生まれる。そう思うと胸が締め付


けられて、苦しくて心臓が裂けそうだ。


もう僕が友となりたかった先輩はもういない。


そんなことを考えている傍に先輩の上半身が


徐々に粒子化していく。先輩の灰を集めようと


して、重力に従って崩れていく灰を掌を水を掬


うような形にするが、掌に溜まってきた灰


を両手の掌を離して、灰を地面に垂れ流す。


どうせ先輩の灰を集めても、先輩の心は戻って


こないし、先輩の灰を回収して帰路に着くこと


は現実性が皆無だ。


先輩の灰から視線を天空に上げる。今も神軍と


悪魔が戦っているが確実に負けるだろう。


我なの大将は数刻前に灰になったのだから。


神軍は大将を失って天空に残っている悪魔軍を


蹂躙、殺戮していくだろう。いや、最初から神


軍の一方的な戦いだったかと、もはや感嘆と感


じられる口調で振り返る。天界の支配者オリュ


ンポス12神がそもそもチートだ。オリュンポス


1柱だけでも悪魔兵1万でも傷一つつけられない


だろう。なんでそのことを理解して、負け戦だ


とわかっていながら戦ったのか。自由や平和が


織り込まれた操り糸にみんな思うがままに操れ


気付けば操り糸は解ける。灰になって操るもの


がいなくなるまで。次々と天空から死した悪魔


の灰が雨のように地面にザラザラと汚い音を出


して飛来してくる。


「...が必要だ」


天界に向かって両の掌をお互いの指を力強く交


差して祈るような形にする。はたから見れば教


会で神に祈っている人間のように目にうるかも


しれない。だが、決して神に祈っているのでは


なく、その逆だ。


「神どもを地獄に落とす者が必要だ」


人間は神に祈りを捧げる。じゃあ、悪魔は誰に


祈ればいいのか?。しかも敵は神。本当は祈る


対象すら悪魔にはいないが、今思った事をただ


単調に、そして魂を込めて祈る。


「どうか地獄の番人よ。この魔界を灰と化した砂


漠に変えたクソどもに最後の審判を!」


「   ドシャ、、」


地面を覆う灰に自分の頭が落ちた音がした。


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