第九夜
こんな夢を見た。
私はいつの間にか花畑にいた。どうやって入ってきたのかは分からない。
出入口は分からない。いや、別にこのままでいいのかもしれない。
花畑を見回してみる。花が咲いている。咲き乱れていると言ったほうが正しいのかもしれない。
色んな花が咲いている。だが、良く見ていると花が有り過ぎている。
何故、桜が咲いているのだろう。向日葵と一緒に。コスモスも咲いている。雪見草と一緒に。
季節がバラバラなのにすべてが共存しているように咲いている。これはおかしい。
嗚呼、そうか。これは夢なんだな。夢であればこの現象には説明がつくというもの。
だがしかし、何故花の夢を見るのだろうか。花の夢について思い返してみる。
確か、才能の開花や女性の魅力のシンボル。恋愛関係を示しているんじゃなかったか。
そして、たくさんの花が咲いている夢は対人関係の改善などの意味があった気がする。
そう言えば、この花たちは食べられるのだろうか。向日葵の種は食用として食べられているから大丈夫だろう。桜の花も塩漬けにして戻したものを、食用の飾りとして乗せられていることがあるから、これも大丈夫。
コスモスや雪見草は知らない。
夢の中とは言え、農薬が撒かれていたら食べられないがね。
彼岸花が咲いている。タンポポやかすみ草も。ガーベラもある。本当に様々な種類の花が多種多様に咲き乱れている。
これらの花々は管理されているのだろうか。それとも、野生でこうなっているのだろうか。気になってきたが、答えは得られないのだろう。
何故なら、私以外の人の気配が全く感じられないから。おそらくは管理人もいないのだろう。
あるいは、いたとしても何処か別の場所に居て会いたくないのかもしれないが。
私は花畑の中を歩いていく。すると、中央には黒い薔薇と白い百合が寄り添うかのように咲いていた。
それを見た私は、美しいと感じていた。この二本の花だけが、他の花々とは違い高貴さを感じさせるのだ。
思わず私は跪いていた。まるで王や王妃に傅く騎士のように。
そこで私は目が覚めた。あの夢は一体どんな意味が有ったのだろうーー。