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63食目 絶望のゴブリンレバ刺し



「それではみなさん、今年もご支援ご愛顧いただき誠にありがとうございました! 今後ともどうか末永くよろしくお願いいたします! かんぱーい!!」



「「「かんぱ~い!!」」」



「か、かんぱーい……」



 こんばんは、ヘンリエールです。

わたしは今、ハーピィ族の夜のお店『エッグランド・はぴはぴ☆ハーピィ』の人たちに誘われてとあるパーティに参加しています。



 〝玄人酒場・七輪廻〟



「ヘンリエール様、本日は『はぴはぴ☆感謝祭』にご参加いただきありがとうございます」



「いやまあ、ヒバリちゃんからのお誘いだったので」



 エッグランド・はぴはぴ☆ハーピィの店長さんからお礼を言われる。

現在わたしが参加している『はぴはぴ☆感謝祭』というパーティは、はぴはぴ☆ハーピィで働いている女の子がお世話になっている常連さんや太客を誘っての年一の懇親会のようなものらしい。

ちなみに参加費用は全部お店持ち。やっぱかなり稼いでるんだろうなあ。



「ヘンリエールさん、お料理取ってきましたよ」



「あ、ありがとうヒバリちゃん」



「ヘンリエールさんが好きな魚のお刺身と、レンコンのはさみ揚げ、それから大葉と豚肉の甘味噌焼き……」



 わたしを今回のパーティに誘ってくれたヒバリちゃんが、色々とお世話をしてくれる。

実質1回しかお客さんとして来たことないのに、お店の新商品開発のモニターしたり、お家にお呼ばれして双子の妹ちゃんと遊んだり……店長さんからも是非来てほしいと言われて戸惑いつつも参加することに。



「それにしても、やっぱりわたし以外の参加者は見た目も雰囲気もザ・太客って人が多いわね……」



 いかにもお金持ちそうな太っ腹のおじ様がいっぱいだ。

なるほど、こういう人たちがハーピィの産みたてタマゴ料理を……



「あれ、あの人なんか見覚えが……って、取引先の社長さん!? や、やば……!!」



「どうしたんですか? ヘンリエールさん」



「ほ、他のところのお客さんに知り合いっぽい人がいて、見つかるとちょっとマズい気がして……!」



「まあ大変。それじゃあヘンリエールさんはこちらの死角になるところにいてください。ワタシがお料理食べさせてあげますから」



「あ、ありがとう」



 なるほど……あの社長さん、こういう所が好きなのね……とはいえ接待で使うとわたしまでそういう目で見られちゃうし、今回は見なかったことにしておこう。



「はい、ヘンリエールさん。あーん」



「あ、あーん」



 ……もぐもぐ。



「うん、お刺身美味しい~」



「この甘味噌焼きも美味しいですよ。あーん」



「あむ……ん! 美味しいわねこれ」



 まあ、なにはともあれタダ飯タダ酒をいただけるのは素晴らしいこと。

ヒバリちゃんとパーティを楽しもう。



「はーい、次はこれですよー……」



「あ~……ん? ちょ、ちょっと待って、なにその緑色のテカテカしたお肉」



「これはゴブリンのレバ刺しです。ごま油と塩だれにつけて食べると美味しいんですよ」



 そういえばハーピィ族ってお肉を生で食べるのが好きって聞いたな……いやでも、馬刺しとかならわたしも好きだけど、ゴブリンはちょっと……



「はい、あーん」



 いやでもヒバリちゃんがオススメしてくれてるんだし、今まで加熱したゴブリン肉しか食べてなかったから逆にそれが良くなかっただけかもしれないし……ここはもう、いくしかないわね。



「う……あ、あーん」



 はぐ、もぐもぐ……



「…………」



「どうですか? ヘンリエールさん」



「…………独特な、風味ね」



 わたしはヒバリちゃんが気付かないようにこっそりゴブリンのレバ刺しを吐き捨てた。



 ―― ――



「それでは皆様、宴もたけなわではございますがこの辺りで締めさせていただきます!」



「二次会は担当のハーピィガールちゃんととしっぽりいきましょ~!」



「「「は~い!」」」



「ヘンリエールさん、この後どうですか……?」



「えっ? こ、この後……?」



「妹たちにお土産のスイーツを買って帰ろうかと思うんですけど、ヘンリエールさんも良かったら……」



「是非ともお邪魔させてもらうわ」





 …………。





 ……………………。





 ゴブリン肉は揚げても焼いても生でも食えねえ。





 【玄人酒場・七輪廻/ゴブリンのレバ刺し】



 ・お店:偉い人がお忍びで来てそう。ていうか来てた。



 ・値段:多分普通に行ったらめちゃめちゃ高い。



 ・料理:ゴブリン料理以外は美味い。



 ヘンリエール的総合評価:52点。



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