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62食目 二十日大根と二十日鼠



「ふう、少し涼しくなってきたかな?」



 こんにちは、ヘンリエールです。

夏の終わりに暑気払いをしてからしばらく経って、まだまだ暑い日が続いているけど少しずつ秋の気配が近づいてきました。



「というわけで、今日は美味しい生イザヨイ酒が飲めるお店にやってきました」



 〝二十日家〟



 生イザヨイ酒とは、火入れをしてないフレッシュな味わいのイザヨイ酒……らしい。

わたしも飲んだことないから分かんないけど、なんか美味しそう。



 ガラガラ、ガラ。



「へい! らっしゃい!」



「あ、一人なんですけど」



「はいよ! カウンターどうぞ!」



 威勢の良い人狼族の大将が快く迎えてくれる。

うんうん、この間の暑気払いに使ったチェーンの居酒屋も良いけど、こういうこじんまりしたところも雰囲気良くて落ち着くわね。



「お冷とおしぼりどうぞ! ご注文どうします?」



「えっと、とりあえず漬物の盛り合わせと……生イザヨイ酒ありますか?」



「ありますよ! 二十日錦と八湖山、どちらにします?」



 どうやら生イザヨイ酒は2種類扱っているらしい。

二十日錦は甘口、八湖山は辛口……



「じゃあ二十日錦でお願いします」



「はいよ!」



 …………。



「はいお待ち!」



「はやっ」



「はっはっは! 酒出して漬物盛り付けるだけだからな」



 カウンター越しに大将からお酒と漬物を受け取って、わたしの宴が始まった。



「森羅万象の恵みに感謝を。いただきます……はむ」



 ……ぽりぽり。



「あ、この漬物美味しい」



 二十日大根の千枚漬けね。

地元のタプナードでもよく食べていたわ。

直ぐに成長して収穫できるから便利なのよね。お肌にも良いし。



「こく……うん! 美味しい~!」



 生イザヨイ酒を一口飲むと、まるで果物を齧ったかのようなフルーティーな酸味と甘みがジュワっと口に広がった。

漬物、お酒、漬物、お酒……やばい、これは止まらないわ。



「大将! 同じのもういっぽん!」



「はいよ!」



 漬物だけだとあれだし、他にもなにか料理を頼もう。



「えーと……二十日焼き? なんだろこれ」



「お、それウチのオススメ。美味いぜ」



「じゃあ二十日焼きもひとつください!」



「はいよ!」



 …………。



「はいお待ち、二十日焼きね。焼きたてだから気を付けて!」



「は~い!」



 ジュウジュウと音を立てる鉄板皿の上にはたっぷりとチーズのかかったハンバーグステーキが。

ハンバーグをナイフで切ると、ひき肉と一緒に大きめにカットされた二十日大根が入っているのがわかる。

創作料理ってやつかしら? とっても美味しそう。



「ふー、ふー……はむ。はぐ、はぐ、はぐ……ん~! 美味しい!」



 シャキッとした二十日大根の食感が濃厚なチーズをさっぱりさせて……このお肉は何だろう?

牛肉や豚肉とはちょっと違う風味と食感だ。



「どうだい? 二十日焼きは二十日大根に二十日熟成の濃厚チーズ、そしてハツカネズミの肉を使って作ったウチ自慢の看板料理だぜ!」



「へ~! 二十日大根と、チーズと、ネズミ……」



 ……ネズミ?



 ―― ――



「それじゃあ5000エルのお預かりで、1200エルのお釣りね。まいど! また来てくれや!」



「ごちそうさまでした~」



 ふう、生イザヨイ酒が美味しくていっぱい飲んじゃったな。

二十日大根も美味しかったし、簡単に育てられるから家で栽培してみようかしら。





 …………。





 ……………………。





 ネズミの肉使ってるなら最初に言ってくれよ。





 【二十日家/生イザヨイ酒・二十日錦、漬物盛り合わせ、二十日焼き】



 ・お店:まあまあ綺麗だった。ネズミは徘徊してなかったと思う。



 ・値段:普通。



 ・料理:美味かったけど、ネズミは勘弁。



 ヘンリエール的総合評価:77点。



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