58食目 なま重とかいうウナギのパチモン
「イズミさんこんにちは!」
「久しぶりやなあヘンリエールはん」
こんにちは、ヘンリエールです。
今日は仲良くさせてもらっているイズミさんとお出かけ。
イズミさんは『こっくり稲荷』という美味しいいなり寿司のお店をやってる妖狐族の綺麗な女の人です。
「ヘンリエールはんが最近夏バテ気味や言うとったんで、今日は精のつく料理を食べに行きましょか」
「わあ、楽しみです」
なんと今回もイズミさんがごはんを奢ってくれるらしい。
場所はイズミさんのお店があるイザヨイの獣人街。
この辺りは獣人系の人がやっている肉料理や魚料理がメインのお料理屋さんが多いイメージ。
前にイズミさんに連れて行ってもらったお寿司屋さんは美味しかったなあ……
「さあ着いた、ここのお店どすえ」
〝鯰料理・氷浦〟
「な、なまず料理……?」
なまずってあの、ひげがあってヌルっとしてるお魚よね……
「ここはナマズ料理の老舗でイザヨイでも有名さかい、初めて食べるヘンリエールはんにも満足してもらえると思いますえ」
「そ、そうですか……」
まあ、イズミさんがお勧めする獣人街の魚料理のお店はどこも美味しいから、今回もきっと大丈夫……でもなまず料理かあ。
わたしはどっちかっていうと、なまずより……
「ヘンリエールはん、ウナギやなくてナマズかあって思ってますやろ」
「そそそ、そんなことないですよ!?」
「ふふ。ナマズ料理はあまり一般的やないですから。でもこの時期のナマズはウナギよりも美味いんですよ」
「そ、そうなんですね」
うなぎの旬とかあまり考えたことなかったなあ。
イザヨイでは夏にうなぎを食べる習慣があるから、なんとなく今の時期が一番美味しいのだと思ってた。
「いらっしゃいませ~……あらイズミちゃん! ご無沙汰じゃないの~」
「女将さん、お久しぶり。今日はウチの友人を連れてきたさかい、美味いもん食わしてやってな」
「ど、どうも」
「あらあら若いエルフのお嬢さんじゃないの~。なまず料理なんて珍しいでしょ?」
「そうですね。今日初めて食べます」
お店に入ると物腰が柔らかそうなネコマタ族のおばあちゃんが出てきて冷たいおしぼりと氷の入った麦茶を出してくれる。
「特上なま重をふたつお願いします」
「はいはい。それじゃあ少しお待ちくださいね~」
「……なま重?」
…………。
「お待ちどうさま~。特上ふたつと、これはサービスのなま天」
「あ、ありがとうございます……なま天?」
「気前が良いどすなあ」
運ばれてきたのは重箱に入ったなまずのかば焼きとご飯、それから漬物とお吸い物。
そして店主さんから頂いたサービスのなまずの天ぷら。
「なるほど、うな重ならぬ、なま重……」
見た目はうなぎのかば焼きと変わらない感じ。
味はどうかしら。
「ヘンリエールはん、温かいうちに頂きましょ」
「そうですね……それでは森羅万象の恵みに感謝を。いただきます……ぱく」
…………もぐもぐ。
「うん! 美味しいですこれ!」
「あらあら、若い人のお口に合って良かったわ~」
うなぎよりも少し淡泊な味わいで、身がふわっとしている気がする。
その分味付けのタレは少し濃い目にしているのかな?
これのタレも甘じょっぱくてご飯が進む。
「天ぷら……はぐ」
……ん! こっちも美味しい!
ふわっとした身の食感が天ぷらにめちゃめちゃ合うかも。
「ヘンリエールはん、ナマズ美味いやろ?」
「めっちゃ美味しいです!」
―― ――
「はあい、特上なま重二つで7600エルね~」
「天ぷらご馳走さん」
「ごちそうさまでした!」
「また来てくださいね~」
…………。
……………………。
夏はやっぱなまずだよなあ!
【鯰料理・氷浦/特上なま重】
・お店:老舗って感じ。
・値段:お高い。でも奢りなので神。
・料理:多分想像してるよりめっちゃ美味い。天ぷらのほうが好きかも。
ヘンリエール的総合評価:85点。




