57食目 そのまま食べる冷凍唐揚げ
「え? これ解凍しないで食べるんですか? 唐揚げなのに?」
「そうなんですよ。先月発売のウチの新商品で、非常に好評いただいてまして」
「は、はあ……」
こんにちは、ヘンリエールです。
本日は仕事の関係で冷凍食品を開発、販売するギルド『ドードーチキン』さんとの定期ミーティング。
そこで『是非ウチの新商品を食べていってくれ』ということで、ひとつ面白そうなのを貰ってしまいました。
〝凍ったままでジュワっと美味い! パーシャル唐揚げ〟
「まさに今の時期にピッタリな商品ですよ。ヘンリエールさんも最近の熱帯夜続きで『晩酌するときにひんやりした唐揚げがあればな~』って考えたことは一度や二度ではないでしょう?」
「いやまあ、あはは……」
一回も考えたことないけどそんなの。
てかなに? 冷凍唐揚げって……普通に揚げたて食べてキンキンに冷えたエール飲んだ方が美味しいと思うんだけど。
でも好評ってことは好きで食べてる人が結構いるっていうことよね。
それならまあ、食べてみたら意外と美味しいのかも。
「味はスタンダードとスパイシーの二種類が現在発売中です。あ、ここだけの話なんですけどね、今レモンペッパー味を新たに開発中なんですよ」
「へえ、レモンペッパーですか……」
まあ、レモンの酸味と爽やかな風味で暑い季節には良いかもしれない。
「これはスタンダードですか?」
「そうです。シンプルにソイソースとニンニク、それから少しだけハチミツが入っていてとても美味しいですよ」
袋を開けると、中からキンキンに冷えたカチコチの唐揚げが。
なんか見た目と大きさ的に茶色いロックアイスって感じがするわね……
「さあヘンリエールさん。温まらないうちにキンキン冷え冷えのところをどうぞ。飲み物がお酒じゃなくて申し訳ないのですが」
「いえいえ、仕事中ですから……」
まあ、物は試しだ。
ひとつ頂いてみようじゃないの。
「森羅万象の恵みに感謝を。いただきます……はぐっ」
…………。
「はぐ……」
いや固いなこれ。
固すぎて少し溶けた表面の肉を歯で削り取って食べる感じになってしまった。
「もぐ、もぐ……」
「どうです? 普通の唐揚げよりも固いので一気に食べずちびちびとお酒を飲みながら楽しむことができるんですよ」
「そ、そうですねえ」
いや唐揚げはアツアツなのを一口でガッと食べてエールをゴクゴク流し込むための料理として真価を発揮するのでは……?
「まあ、噛めば噛むほど味わい深いと言いますか、どちらかというと乾物系のおつまみに近いと言いますか……」
「そうなんです! パーシャル唐揚げのポテンシャルはまさに無限大!」
わたしは冷凍唐揚げを褒めちぎるギルド員の話を聞き流しながらカチコチの唐揚げを食べ進めた。
―― ――
「本日はありがとうございました。パーシャル唐揚げ、店頭でお見掛けしたら是非お買い求めください」
「ちなみにこちらお値段は……」
「希望小売価格480エルですね」
「機会がありましたら購入を検討させていただきます」
…………。
……………………。
なにが美味いん?
【ドードーチキン/パーシャル唐揚げ】
・お店:新しいギルドなので生産工場は衛生的。
・値段:普通の唐揚げよりちょい高め。
・料理:味付けは良かった気がする。普通に解凍したほうが美味い。
ヘンリエール的総合評価:34点。




